【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

【ボイトレ】プロとアマチュアの違いは「発声スピード」/連載「ボイトレの???(ハテナ)にこたえる声と歌の小泉クリニック:第99回」

発声スピードを上げるための考え方を学ぼう

 長年、プロの人とアマチュアの人とのボイストレーニングを行なってきていますが、プロとアマではさまざまな違いがあると感じています。
 そのひとつに「発声のスピード」があります。

プロ:発声が速い
アマ:発声が遅い

 プロはいわゆる「音(声)の立ち上がり」が速いのです。
 
 アマの発声が遅れる原因のひとつは「息が遅い」、要は「息を吸う」、「息を吐く」……「呼吸が遅い」ということです。歌う以前に、「呼吸が遅い」ということは自然な状態ではない、すなわち不健康な状態と言えます。

「呼吸が速く」なれば「発声も速く」なります。

 なぜなら、声は肺からの息が声帯を震わせて作られるので、原動力である「息」を速くすれば、「発声も速く」なるからです。そして「発声も速く」なると、自然な呼吸を行なえていること、すなわち健康な状態になれていると言えます。

 「呼吸を速く」するには、肺の中に入る息の量を増やすことが重要です。
 風船を例にとってみるとわかりやすいです。風船の口を緩めたとき、風船の中の空気が排出されるスピードにおいて下記の違いが出てきます。

大きな風船 → 排出スピードが速い
小さな風船 → 排出スピードが遅い

 すなわち下記が成り立つのです。

「肺活量増える→呼吸スピードが速い→発声スピードが速い」

推奨される鼻呼吸の一点だけあるデメリットとは?

 ところで呼吸に関して、通常は鼻呼吸が推奨されます。

・病原菌やウィルスの侵入を防ぐ
・喉の渇きや冷えを防止する

 など、多くのメリットのある「鼻呼吸」ですが、一点だけ、デメリットがあります。
 それは「肺活量を大きくすることが苦手」ということです。

 肺には、左にふたつ、右に3つ「部屋」がありますが、一番下の「部屋」にまで息を送り込むには「時間がかかります」。風船を膨らませるにも、時間をかけて息を吹き込まないといけないのと同じです。

 「鼻呼吸」は、素早く息を吸うのは得意なのですが、ゆっくり息を吸うのは不得意なのです。

鼻呼吸:素早く息を吸える→肺の上の「部屋」にしか息が入らない
口呼吸:ゆっくり息を吸える→肺の下の「部屋」にまで息が入る

 先ほどの「肺活量増える→呼吸スピードが速い→発声スピードが速い」の目的を遂げるには……肺の下の「部屋」まで息を送り込んで、肺を最大限に大きくすることが必要です。
 そうすれば、大きく膨らんだ風船は口を緩めると一気に空気が抜けていくように肺の中の息も一気に抜けていき、「自然に肺から空気が漏れていく」ことになるからです。

口呼吸で、ゆっくり時間をかけて息を吸う練習をしよう

 そのためには「口呼吸」が有効なのです。
 ストローを使って息を吸うと、その効果が高まります。さらに「ゆっくり」と息が吸えるからです。普通の口で息を吸うのと、ストローを使って息を吸うのと比べてみてください。ストローを使ったときのほうが、「ゆっくり」長時間かけて息が吸えるはずです。

 「肺活量アップ」のために用いた「ストロー呼吸法」は下記を参考にしてください。

 ストロー呼吸法を行なう前と後で、「話す声」、「歌い声」の声の違いを比べてみてください。
 声量・声質・発声のスピード……すべて、ストロー呼吸法(息スピードアップ編)後が優っているはずです。

 ただ、この練習では36度の温風を喉に当てていることになるので、喉を乾燥させ痛めやすくもなります。くれぐれも長時間の練習は避け、水分補給はこまめに行なってください。

 ストロー呼吸法(肺活量アップ編)、(肺活量アップ編)を行なうと、声量は必然的にアップしますが、あくまでも目的は呼吸の質が上がることによる発声のスピードアップです。

 声量が増していても、声が割れたり掠れたりしていると、呼吸の質が高まっていることになりませんし、喉を痛める原因にもなりかねないので注意して練習してください。


小泉誠司
撮影:ヨシダホヅミ

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本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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