【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

【ボイトレ】「歌っていて息苦しく感じる」、気のせいではないのでどうにかしましょう!/連載「ボイトレの???(ハテナ)にこたえる声と歌の小泉クリニック:第100回」

記念すべき100回目の「効く処方箋」

 2022年3月14日に連載を開始してから約2年、おかげさまで「ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック」が、めでたく100回を迎えることができました。いつもご愛読ありがとうございます。
 これからも、「効く処方箋」をお出していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

クイズ1

 ところで、突然ですがクイズです。
 リコーダーとハーモニカの奏法の違いってわかりますか?

リコーダー
ハーモニカ

 ハーモニカを演奏したことがある人なら思い出せると思いますが、答えは下記となります。

リコーダー : 息を吐いて演奏
ハーモニカ : 息を吐いて&吸って演奏

 ハーモニカは息を吐く以外に、息を吸っても演奏できる楽器なのです。

クイズ2

 それでは、クイズ2問目です。
 人は歌うとき、リコーダーかハーモニカ、どちらの楽器に似ているでしょうか?

 息を吐いて歌っているはずなので「リコーダー」と答える方が多いと思います。でも答えは残念ながら「ハーモニカ」になってしまう人が多いのです。

 「えっ! 息を吸って歌っている? ありえない!」と思われる方が多いと思いますが、実は息を吸って歌っている人の方が多いと言えます。

 このことは、ある呼吸器の専門医の方から教えていただいたことなのですが、本来は息を吐いて歌うべきところを息を吸って発声してしまっている人のことを指して、その方は「ほとんどの人は人生を損している」と話されていました。呼吸困難な状況を自らが作り上げてしまっているからです(下記参照)。

 ここで、「えっ! 息を吸って歌っている? ありえない!」と思われる方に対して質問です。

 口笛に関してです。

 口笛は「口笛を吹く」という表現のように「吹く」ことで音を鳴らしますが、息を吸っても「口笛」の音を鳴らせることを体験されたことはないでしょうか?

 子供の頃、一回くらいは、「息を吸って」口笛の音を鳴らそうとしたことはないでしょうか。

 結論から言うと、口笛は息を吸っても鳴らせるのです。

 下記、実際に私の生徒さんに口笛を鳴らしてもらっています(6:18くらいから)。

「歌っていて息苦しく感じるのは気のせいではない。息を吸いながら歌ってしまっていることが原因」

息を吐いて、息を吸って、の違いを知ろう

#1 息を吐いて口笛を鳴らす
#2 息を吸って口笛を鳴らす

 上記の画像は、実際の口笛を鳴らしてもらったときの音声データの波形です。

#1 息を吐いて口笛を鳴らす→音量が大きい
#2 息を吸って口笛を鳴らす→音量が小さい

 ことがわかると思います。
 口笛は息を吸っても鳴らせるのですが、極端に音量も小さく不安定、そして苦しそうになります。

 ハーモニカの場合は、同じ穴でも息を吐くときと吸うときで音程が変わるなど、「息を吸う」ことによるメリットは生まれていますが、口笛の場合は上記のようにデメリットしか生みません。

 実は歌でも同じことが言えます。

 上記動画で私が実際に、「息を吐いて」、「息を吸って」の違いの「実験」を行なっています。

9:40〜「あー」を息を吐いて、息を吸ってで発声
10:35〜 「大きな古時計」の冒頭のメロディを、息を吐いて、息を吸ってで発声

 そしてより客観的に理解していただくために、
10:54〜「大きな古時計」の冒頭のメロディを、生徒さんに「息を吐いて」、「息を吸って」で歌っていただいています。

 下記画像を見ていただくとわかると思いますが、全体的な波形の大きさも「息を吸って」歌っているときは小さくなっていますが、最も顕著な違いは「語尾」の波形です。

#1 息を吐いて歌う
#2 息を吸って歌う

息を吐いて→語尾の波形が大きい=広がっていく
息を吸って→語尾の波形が小さい=しぼんでいく

 この実験の結果、「まさか声がこんなに変化してしまうなんて」と驚かれる方も多いと思いますが、「息そのもの」をイメージすると当然と言えば当然の結果と言えます。

 口の前の1cmほど前にティッシュを置いて、
息を吐く→ティッシュは前方に動く
息を吸う→ティッシュは後方に動く

 ……という結果になります。

 ぜひ、実際にやってみて確認してみてください。

ティッシュ = 声帯

 上記の実験におけるティッシュが、息を吸ったときに後方へ下がってしまうように、発声するときに息を吸うと、声帯は正しく震えてはくれないのです。
 肺からの息で声を震わせて発声するのが正しい発声システムなのに、息を吐いて歌うということは、気持ち良い声が出せないばかりか、声帯をも痛める危険性が生じます。

自覚のための努力を惜しまずに!

 このように、息を吸いながら発声しているとき、「努力性呼吸」という自然呼吸ではない呼吸になっています。
 努力性呼吸に関して、上記の呼吸器の専門医の方が言われるには「自覚がないので改善が難しい」と。

 なので、まずは「自覚」が必要。
 例えば「大きな古時計」、そして今練習している曲を、
・息を吐いて
・息を吸って

 録音しながら歌ってみて、録音後「波形」を確認するなど「自覚」のための努力を惜しまずにやっていただきたいと思います。

 慣れてくると「あっ、今息が引っ込んでる」と努力性呼吸のクセを自覚できるようになります。「努力性呼吸」を克服するための一番の近道になるので頑張ってみてください。


小泉誠司
撮影:ヨシダホヅミ

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小泉誠司のプロフィールページ、レッスン詳細などはこちら!
https://uta-school.jp/teacher/detail/8

2024年2月16日(金)、27日(火)にレッスン空き枠あります!

本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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