【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第79回:歌うときにブレスはしてはいけない!

普段と同じ呼吸をしてこそ日常の表現ができるはず

 「歌うときにブレス(息継ぎ)はしてはいけない」と言うと、「えっ、それじゃ歌えない」と思われる方も多いでしょう。
 でも、日常会話でブレスをしながら話している人はいないはず、話すときはしていないブレスを歌うときは行なう……何か変だとは思いませんか?

 「歌」は日常起こりうる喜怒哀楽の感情から溢れ出てくる声を再現するものだと私は思っています。
なので、普段と同じ呼吸をしてこそ日常の再現ができるはず、しかしながら歌を歌うときには頻繁にブレスを行なうなど「別の呼吸」をしているとしたら、それは日常起こりうる喜怒哀楽の感情を再現していることにはならず、それでは聴いている人の心には響かないのではないか……と危惧しています。

 でも実際には、ボイストレーナーから、歌詞カードに「V」のブレスマークを書き込み、その「V」マークで「大きく息を吸いなさい」とアドバイスを受けることも多いと思いますが、実はこの「変わったこと」をやればやるほど「変わった歌」になってしまうのです。普段とは違う呼吸システムで発声しているからです。

 しかしながら、歌っていると頻繁にブレスをしたくなる気持ちもわかります。
 息がなくなってしまう恐怖感がどこかにあるのだと思います。
 なので、いきなり「ブレスをしない」ではなく、徐々に日常生活での呼吸に近づけていける方法を紹介していきたいと思います。

日常生活での呼吸に近づけていける練習法

①ブレスの回数を減らす

 例えば「赤とんぼ」の1番の歌詞で説明しましょう。
 通常は下記(v)マークでブレスを行なうことが多いはず。

夕焼け小焼けの(v) 赤とんぼ(v)
負われて見たのは(v) いつの日か(v)

 それを下記のようにブレスの回数を減らすのです。

夕焼け小焼けの 赤とんぼ(v) 
負われて見たのは いつの日か(v)

 歌詞カードの歌詞と歌詞の間の「空白の部分」で必ずブレスをしようとする人が多く見られます。
 必ずしも息が続くかどうかというより、「クセ」になってしまっているように思います。
 実際には肺には十分な息の量があるにも関わらずです。

 まずはゲーム感覚で、今普通にブレスしている箇所ではブレスせず、次のフレーズまで息を保つクセをつけてください。

②鼻でブレスをする

 ブレスを頻繁にする人の特徴として「ブレスの音が大きい」……すなわち「口でブレスをしている」ことが挙げられます。

 つまり、歌唱時にブレスを行なう人の歌を録音した場合、声とともに「ハー」、「ハッ」というブレスがとても大きく、そして頻繁に録音されているのです。

 世の中には、あえて「ブレスも歌の一部」として有効に使うプロの方もいます。
 でも多くの方のブレスは、そういうアーティスティックなブレスとは違い「単に息苦しい」としか感じさせないものです。

 そしてそのようなブレスを行なっていると、「喉が渇く」そして「喉を痛める」危険性も出てきます。
なぜなら、36度くらいの温風で喉を乾燥させてしまっているからです。

・ブレスの回数を減らす
・口呼吸ではなく鼻呼吸をする


 ……ことで、「喉が渇く」そして「喉を痛める」危険性も減り、日常会話のモードに戻れるのです。

最終的にはブレスを意識せずに歌えるようにしよう

 ちなみに友達と普通に話していて、喉が極端に渇いたり、喉が痛くなったりはしないはず、「ブレスを行なっていない」証拠です。
 皮肉なことにカラオケで楽しく歌っているときなどは、ブレスのことは気にならないはず。
 レッスンや練習で「真面目に」歌おうとすると、ついブレスを意識してしまいます。

 まずは、今回ご紹介した、
①ブレスの回数を減らす
②鼻でブレスをする
 ……ことで、日常の呼吸に戻す訓練をしつつ、最終的にはブレスを意識せずに歌えるように頑張ってみてください。


撮影:ヨシダホヅミ

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本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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