【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第75回:「忙しくて練習時間がない」というあなた、歩きましょう! 歌がうまくなるので。

歩きながら腹式呼吸を身につける簡単な方法

「毎日忙しくてなかなか練習時間を確保できない」

 ……多くの方が同じ悩みを持たれていると思います。
 前回はそんな方にオススメの練習「聴く」をご紹介しました。今回も忙しい方にぴったりの、超簡単な練習方法をご紹介したいと思います。

どんなに忙しい人でも、歩く時間はあるはずです。
せっかくだから、この時間を有効に使いましょう。

 方法は至って簡単です。

①鼻から息を吸って3歩
②息を止めた状態で3歩
③鼻から息を吐いて6歩

 これを繰り返すだけです。

 このとき、吸った息が肺の下部のほうに入っていくように意識してください。そうすれば、肺全体に息が入り腹式呼吸ができるようになります。
 この練習は「腹式呼吸で発声をしながら歩いている」ことになるのです。

 最初は難しく思われるかもしれませんが、そのうちに無意識でできるようになってきます。
 そうすれば、あなたがいざ「本番」を迎えても、普段通りの「腹式呼吸」ができる人になれている可能性が高まります。

「めいっぱい吐く」ことが重要!

 私が指導している方には、プロの歌手の方もいらっしゃいますが、ライブ前、レコー ディング前には、特にこの練習時間を増やす方が多いです。
 この練習をすると「勝手に声が出てくる」感覚が身につくからです。

 うまくできるようになるコツは、吸うのも吐くのも「めいっぱい」ということです。

 ただ、鼻から吸うと、一気に吸えてしまうので、最初の内は3歩の間、息を吸い続けることは難しいかもしれません。
 また6歩の間、息を吐き続けるのも難しいかもしれません。

 そんな人は……

①鼻から息を吸って2歩
②息を止めた状態で2歩
③鼻から息を吐いて4歩

 を繰り返してください。

 大事なことは「めいっぱい吸って」、「めいっぱい吐く」ことです。特に「めいっぱい吐く」が重要です。なので、息を吐くときは吸うときの「倍」の時間をかけるのです。

 やってみると実感できると思いますが、「めいっぱい吐く」ことができれば「めいっぱい吸う」ことがラクになってきます。
 なぜなら「めいっぱい吐く」と息がなくなるので、「めいっぱい吸いたくなる」からです。

 「呼吸」というと、多くの人は「吸う」ことばかりを考えがちですが、実は大切なのは「吐く」ことなのです。
 「吐く」ことを本能的に行なっている「ため息」にそのヒントがあります。下記を参考にしてみてください。

できるようになったら、より長い歩数にチャレンジ!

①鼻から息を吸って3歩
②息を止めた状態で3歩
③鼻から息を吐いて6歩

 の練習がラクにできるようになったら、

①鼻から息を吸って5歩
②息を止めた状態で5歩
③鼻から息を吐いて10歩

 に挑戦してみてください。

 これもやってみるとわかると思いますが、10歩の間、息を吐き続けるのは難しいです。
 でもこれがラクにできるようになると「めいっぱい吸う」こともできるようになっているということ。吐いた息の分と同量の息が体内に入ってくるので、その大量の息を動力源にして「声も出やすく」なります。
 すなわち「腹式呼吸で歌えている」ことになるのです。

 ただ、昨今熱中症の危険性があるほど猛暑なので、地下道を歩く、日陰を選んで歩く、もしくは歩く代わりに部屋の中でステップを踏みながら行なうようにしてください。
 また、この練習は睡眠不足や体調不良のときではなく、体調が整っているときに行なうようにしてください。あと、水分補給も必ず行なうことを忘れずに。

 継続は力なりです。
 「勝手に声が出てくる」感覚が身につくと、本当に歌うことが楽しくなります。必ず成果が出るので頑張ってください。


撮影:ヨシダホヅミ

小泉誠司のレッスンを受けてみよう!

 リットーミュージックが運営するオンライン・ヴォーカル・レッスン『歌スク』に小泉誠司が参加中。無料体験レッスン(1回のみ25分)も行なっていますので、まずは『歌スク』のサイトにアクセスしてください。

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https://uta-school.jp/teacher/detail/8

8月23日、24日、31日にレッスン枠がありますので、ぜひ受講してみてください!

本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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