【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第37回:ビブラートは「ミゾオチをさすれば」解決できる!

ビブラート習得の処方箋「さすりメソッド」

 今回の「症状」は「ビブラート」。
 一般に歌のフレーズの語尾にビブラートがかかっていると、「うまい」、「丁寧」、「心がこもっている」など、良い印象を述べる人が多いことからも、ビブラートのやり方を教えてほしいという声をよく聞きます。

 私はビブラートはテクニックとして行なうものではなく、自然に発生するダイナミクスの変化のひとつだと思っていますし、正しいビブラートを会得すると力まずにスムーズに声が出るようになります。

 なので、今回使用する【処方箋】「さすりメソッド」です。

 そして、その目的は……「語尾の処理としてビブラートをマスターしてもらうため」ではなく、「力まずにスムーズに声が出せるようにする」ことにあります。

 フレーズの語尾にだけかけるのではなく歌全体にかけるというか、自然にかかってしまうビブラートの習得を目指したいと思います。
 もちろんこれをマスターできれば、当然フレーズの語尾にだけビブラートをかけることもできるようになります。

 では「さすりメソッド」を説明していきましょう。

さすりメソッド:息編

 まずは「さすりメソッド:息編」です。
 バースデーケーキのローソクの火を消すように、力強く「フーーーーーーーー」と息を吐きます。そのとき、口をすぼめて「上の前歯に当てるように」息を吐いているはずです。

 次に「フーーーーーーーー」と声を出しているときに、お腹と胸の間、左右のアバラ骨の真ん中……いわゆる「ミゾオチ」を手のひらで震わせてください。「震わせる」というより「さする」というくらい、軽い感じでOKです。

 そうするとどうですか? 息が「フゥゥゥゥゥ」と、脈打つように変化するのがわかるはずです。

 息を送り出しているのは「肺」、その大元の肺に「振動」を加えると、送り出された息も「振動」します(ミゾオチに振動を加えると横隔膜も振動し肺にも振動が伝わります)。

 この「振動」こそが「ビブラート」なのです。「普通に息を吐く」のと「ミゾオチをさすりながら息を吐く」ときの、息の違いを感じてください。

 どうですか? 「ミゾオチをさすりながら息を吐く」ときの息が、ミゾオチをさする手と同じ変化をするのが「面白い」、「楽しい」と、私が指導している生徒さんが言われます。

●ミゾオチを大きくさすると → 息も大きい振動、すなわち「大きなビブラート」になる
●ミゾオチを小刻みにさすると → 息も小刻みな振動、すなわち「小刻みなビブラート」になる

 まずは、この息での練習というか「遊び」を楽しんでください。

さすりメソッド:声編

 次に「さすりメソッド:声編」です。
 普通に「アーーーーーー」と声を出してください。ここで注意していただきたいのは、できるだけ先ほど出していた「フー」の息と「アー」という声を同じモードで行なうということです。大きな声を出そうとはしないでください。

 次に「アーーーーーー」と声を出しているときに、先ほどの「息編」と同じ要領で「ミゾオチ」を手のひらで震わせてください。「震わせる」というより「さする」というくらい、軽い感じでOKです。

 そうするとどうですか? 「アァァァァァァァ」という声も脈打つように変化するのがわかるはずです。

 「息編」と同じ要領で、「普通に声を出す」のと「ミゾオチをさすりながら声を出す」ときの、声の違いを感じてください。

 どうですか? 「ミゾオチをさすりながら声を出す」ときの声、ミゾオチをさする手と同じ変化をするのが、「息編」と同じく「面白い」、「楽しい」と感じてもらえることが大切です。
 なぜなら「好きこそものの上手なれ」なので、「面白い」、「楽しい」という気持ちを持ちながら取り組んだほうが成果が出せるからです。

「息と声の源である肺が震えれば、息も声も震える」

 ……当たり前と言えば当たり前と思われるかもしれませんが、皮肉なことにビブラートを意識してやろうとすると、逆に身体が緊張してしまい、自然なビブラートとはかけ離れた、いかにも苦しい声になってしまう可能性が高くなってしまいます。

 それは「ビブラートとは、具体的にどこが振動すればよいのか?」……実際に振動すべき箇所を特定できていない「あいまいな状態」の中で行なっているからです。

「ビブラートとは、具体的にどこが振動すればよいのか?」の「答え」は、
「ビブラートとは、横隔膜と肺が振動すればよい」ということ。

 ミゾオチ → 横隔膜 → 肺 → 息 → 声のように、“振動が伝わる=ビブラートが伝わる”のです。

 無理やり「ビブラートをかけよう」という意識はしなくて良いので、「力みにくくなる」などメンタル面でもプラスを生み出すこのメソッドですが……

 「ミゾオチ」は「震わせる」というより「さする」というくらい、軽い感じでやってください。震わせている手が疲れる場合は、力が入り過ぎているということ、効果が下がってしまうのでご注意を。

さすりメソッド:実践編

 次は「さすりメソッド:実践編」を説明します。

 「アーーーーーー」と声を出しているとき、実際に「ミゾオチ」を手のひらで震わせるのではなく、「ミゾオチ」には触れずに、3cmほど身体から手のひらを浮かせた状態で手を震わせてください。
 このとき、実際には「ミゾオチ」を震わせていないのですが「ミゾオチ」を震わせているイメージを持って行なってください。

 どうですか? 先ほど、実際に「ミゾオチ」を震わせていたときと同じように声は震えましたか?

 同じように震えるまで繰り返してください。うまくできるようになったら、今度は「ミゾオチ」付近には手を置かず、顔の前で手のひらを震わせながら、「アーーーーーー」と声を出してください。

 このときも「ミゾオチ」を震わせているイメージを持って行なってください。

 うまくできましたか? うまくできなかったら、上記のステップを遡って練習してください。
 うまくできるようになったら、実際の曲を歌いながら下記の要領でトライしてみましょう。

1:「ミゾオチ」を手のひらで震わせて

2:「ミゾオチ」には触れずに3cmほど身体から手のひらを浮かせた状態で震わせて

3:顔の前で手のひらを震わせて

4:手を震わせずに

 ビブラートができずに苦しんでいた多くの人を救ってきた今回の「さすりメソッド」。ぜひトライして、ビブラートをモノにしてください。

撮影:ヨシダホヅミ

小泉誠司のレッスンを受けてみよう!

 リットーミュージックが運営するオンライン・ヴォーカル・レッスン『歌スク』に小泉誠司が参加中。無料体験レッスン(1回のみ25分)も行なっていますので、まずは『歌スク』のサイトにアクセスしてください。

小泉誠司のプロフィールページ、レッスン詳細などはこちら!
https://uta-school.jp/teacher/detail/8

本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

本コラムの記事一覧

その他のコラム

最新情報

ヴォーカルや機材、ライブに関する最新情報をほぼ毎日更新!