【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第65回:練習したいのにできない……時間や場所に悩む方への処方箋です

2023.06.12

「息で歌う・息で話す」=ヒントは「ヒソヒソ声」

●帰宅すると夜になるので練習できない
●本番直前、練習したいが楽屋で声が出せない

 ……という悩みを持つ方は少なくないと思います。

 そこで今回は、声を出せない時間や場所でも効果的な処方箋「息で歌う・息で話す」をご紹介いたします。

 「息で歌う・息で話す」……あまり聞き慣れない言葉なので、イメージできない方が多いと思いますが、ヒントは「ヒソヒソ声」。
 大きな声を出してはいけない場所で、相手に伝えるために声を潜めて話をしますよね。あの「ヒソヒソ声」です。

 では、早速「ヒソヒソ声」やってみましょう。
 まず「おはようございます」と「ヒソヒソ声」で話してみてください。

 どうですか、うまくできましたか?
 でも「うまくできた」かどうかわからないですよね。

「うまくできた」とは「ホンモノのヒソヒソ声」で話せた場合
「うまくできなかった」とは「ホンモノのヒソヒソ声」で話せなかった場合

 ということになります。
 でも「ホンモノのヒソヒソ声」って何かわかりませんよね。

 「ホンモノのヒソヒソ声」とは、まわりの人には聞こえさせたくないけど、隣にいる人には聞こえさせたい……。このような実際のシチュエーションで出している声です。
 「ホンモノのヒソヒソ声」を出せていないと相手に伝わらないからです。

 しかしながら、本当に必要なときにはできる「ホンモノのヒソヒソ声」、意識的にやるのは難しいですよね。

 では意識してもできる「ホンモノのヒソヒソ声」の練習法をふたつお教えしたいと思います。

「ホンモノのヒソヒソ声」の練習法

<練習1>
・テレビをつけながら……
・スマホなどで音楽を流しながら……

 ヒソヒソ声で「おはようございます」と話してみてください。どうですか? 自分の声はよく聞こえましたか?

よく聞こえた = 「ホンモノのヒソヒソ声」
よく聞こえなかった = 「ウソのヒソヒソ声」

 
 ……ということになります。「おはようございます」では短すぎてわかりにくい場合は、本や雑誌などの文章、歌詞を読み上げてみてください。要するに「実際のシチュエーションを作る」わけです。

<練習2>
 口の前 10cmくらいのところに手のひらを広げて置いて、ヒソヒソ声で「おはようございます」と話してみてください。

手のひらに当たる息が強い= 「ホンモノのヒソヒソ声」
手のひらに当たる息が弱い= 「ウソのヒソヒソ声」


 ……ということになります。実際のシチュエーションでは、本能的に自然で効率的な発声を行なっています。効率的な発声とは「息を無駄にしない発声」ということです。

 <練習2>において説明すると、手のひらに息が強く当たる場合は、息を無駄にせず効率的な発音ができていることになります。

 ホースで水撒きをする際、ほぼ無意識で指でホースの口先を押し細くし水圧を上げることにより、水を遠くにまで届けていることと同じ。
 発声においても息の圧力を上げないと効率的な発声とは言えず、手のひらに息が強く当たっているときは、息の圧力が高まっている証拠、効率的な発声と言えるのです。

ホースの口が細い = 効率的な水撒き
口が細めている = 効率的な発声

 
 ……と言えます。

 そう、 「ホンモノのヒソヒソ声」を成立させるためには、効率的な発声である必要があり、そのためには、「口の形」が重要なのです。

口を細めて発声するヒソヒソ声 =「ホンモノのヒソヒソ声」
口を細めず発声するヒソヒソ声 =「ウソのヒソヒソ声」

 
 ……なのです。「口を細めて発声するヒソヒソ声」と口を細めず発声するヒソヒソ声で、上記ふたつの練習を行なってみてください。

 どちらの練習も「口を細めて発声するヒソヒソ声」なら良い結果になるはず、すなわち「ホンモノのヒソヒソ声」になるのです。

「ホンモノのヒソヒソ声」のために「息の質」を重視しましょう

 「ホンモノのヒソヒソ声」をするために、もうひとつ重要なこと、それは「息の質」……「フーの息」「ハーの息」なのか、ということです。

 下記で説明していますので参考にしてみてください。

第59回:歌っていて喉が痛くなりませんか? 解決法を教えます

 <練習1>と<練習2>で、「ホンモノのヒソヒソ声」が出せるようになったら、歌を「ホンモノのヒソヒソ声」で歌ってみてください。
 その後、実際に声を出して歌うと、画期的に歌いやすくなっているはず、ぜひ試してみてください。

 最後に注意点です。これらの練習をする際には、必ず水分補給をこまめに行ない、喉の乾燥を防いでください。


撮影:ヨシダホヅミ

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本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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