【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第84回:「通る声」になりたければ声帯の負担を減らそう

2023.10.23

マスクをしていても「通る声」ですか?

 自分の声がいい声なのか? 
 「通る声」なのか? それともこもる声」なのか……。

 自分自身ではなかなかわかりにくいものです。

 ひとつの価値観として……マスクをしていてもはっきりと声が聞こえる人は、おそらく「通る声」の持ち主です。

 「大きい声」と「通る声」、その違いがわかりにくいかもしれませんが、単なる大声ではマスク越しではより声がつぶれてしまい、何を言っているのかますますわからなくなります。
 それに対して「通る声」は音量は小さくてもはっきり聞こえます。

 それでは、あなたが「通る声」なのか、それとも「こもる声」なのかチェックしてみましょう。

「通る声」か「こもる声」かチェックする方法

 マスクをして、例えば「おはようございます」と言ってみてください。

 自分では判断できない人はスマホででも録音して、マスクなしとマスクありで比べてみてください。マスクありでもマスクなしと同じように聞こえる人は「通る声」の持ち主と言えます。
 では、残念ながら「こもる声」だった場合、どうすれば「通る声」になるのでしょうか?

 結論から言うと……、

声帯の負担が少ないと、「通る声」
声帯の負担が大きいと、「こもる声」

 なのです。

 発声における支点は、

始点→声帯
終点→口

 です。

 始点である声帯にポイントを持って行って「通る声」を作ることは可能ですが、まずは終点である口にポイントを持っていくやり方をマスターしていただきたいと思います。
 簡単に言えば「声は最終的には口から出て行く」ので、口先、それも上の前歯から声が出て行くことを強く意識するのです。

 多くの人は「声の始点」である「声帯」は意識することはあると思いますが、声が最終的に出て行く場所である「口」に関して意識する人は意外にも少ないのです。
 実は、この「声の出口」である「口」を意識することにより「声の始点」である声帯の負担は減るので声は出やすくなり、その結果、声は「抜ける声」、「通る声」になります。

 具体的な方法を説明させていただきます。

①唇をブルブル震わせてみましょう。
②次に「ブー」と音を付けてルブル震わせてみましょう。

 どうですか? うまくできましたか?

 ①の無音のときはうまくできたのに、②の「ブー」はうまくできなかったという人は多いのではないでしょうか?

 ②がうまくできなかった理由としては、「ブー」という音を声帯で出そうとする意識が強過ぎて、声帯に必要以上に負担をかけて発声してしまっている可能性があります。
 この状態において、声帯への負担は大きく、声がスムーズには出にくいです。

声帯だけに作業を押し付けてはいけない

 人間の仕事においても、仕事をひとりの人にだけ押し付けるとその人の負担が大きくなり、良い仕事ができなくなる危険性があるように、声を出す作業を声帯にだけ押し付けると、声帯に負担が掛かり過ぎて良い仕事ができなくなります。

 上記の練習の場合、

 ①も②も、唇にも仕事を分担すべきなのが、①の場合は息を出しているだけなので声帯は息を通すことだけに専念していましたが、

 ②の場合は「ブー」という音を出すので、つい声帯のみが働き出そうとして声帯の負担が大きくなり、声は出にくくなってしまいます。

 うまくできなかった人は、唇を無音でブルブル震わせながら、そのまま途切れずに「ブー」と音を付けてみましょう。

 要は、音を意識し過ぎずに無音のときと同じように、「ブー」をまるで唇で言うようにやれば良いのです。
 ちょうど英語の「BOO」を発音する要領です。
 
 どうですか? うまくできるようになりましたか? うまくできるようになったら下記をトライしてみましょう。

【A】無音&有音「ブー」を交互にやってみる(最低3回)

Ex.「プーブープーブープーブー」

【B】ブーで「おはようございます」と言ってみましょう。

Ex.「ブはようございます」

【C】ブーで「おはようございます」のあと、地声で「おはようございます」と言ってみましょう。

Ex.「ブはようございます」→「おはようございます」

【注意点】
• 1音節で言う(英語のように)
• ブーのあと、すぐに地声で「おはようございます」を言う
• 地声で「おはようございます」を言う場合、頬をタイミングを合わせて上げる

 ゲーム感覚で楽しんで取り組んでいただければと思います。必ず成果が出ます。


撮影:ヨシダホヅミ

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本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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