【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第12回:腹式呼吸はストローで簡単にマスターできる!

今回も、第11回:「魔法の度数45°で呼吸はラクになる!」に引き続き、第7回:「お腹を膨らませて声を出して」は合っているの?というボイトレの???(ハテナ)に対しての、

<処方箋>
「自然に肺に空気が入りやすくなる練習」
「自然に肺から空気が漏れていく練習」

を処方したいと思いますが、今回の処方箋も「The 脱力」、お薬は「ストロー呼吸法」です。

呼吸機能の改善に効果がある、ストローを使用しての呼吸訓練は病院などの医療施設でも行なわれていて、私も老健リハビリセンターなどで実際に行なっているメソッドです。

早速「ストロー呼吸法」やってみましょう。

【ストロー呼吸法】
①脇腹に片手を置き、ストローを口にくわえます。
②ゆっくりと息を吸います(横隔膜が広がっていくのを感じながら)。
③5秒間そのままキープ。
④口から一気に息を吐きます(ストローは外す)。

【ヒント】
●できるだけ限界まで吸いましょう。
●息を吐くときに均等に吐くのでなく、漏れるように一気に吐きましょう。

「ストロー呼吸法」サンプル動画

通常、「息を吸うのは鼻から」が推奨されます。

・病原菌やウィルスの侵入を防ぐ
・喉の渇きや冷えを防止する

など、多くのメリットのある「鼻呼吸」ですが、一点だけ、デメリットがあります。
それは「肺活量を大きくすることが苦手」ということです。つまり「肺を大きくすることが苦手」なのです。

肺には、左に2つ、右に3つ「部屋」がありますが、一番下の「部屋」にまで息を送り込むには「時間がかかります」。風船を膨らませるにも、時間をかけて息を吹き込まないといけないのと同じです。

「鼻呼吸」は、素早く息を吸うのは得意なのですが、ゆっくり息を吸うのは不得意なのです。

鼻呼吸と口呼吸の違い

鼻呼吸:素早く息を吸える→肺の上の「部屋」にしか息が入らない
口呼吸:ゆっくり息を吸える→肺の下の「部屋」にまで息が入る

<処方箋>
「自然に肺に空気が入りやすくなる練習」
「自然に肺から空気が漏れていく練習」

の目的を遂げるには……肺の下の「部屋」まで息を送り込んで、肺を最大限に大きくすることが必要です。そうすれば、大きく膨らんだ風船は口を緩めると一気に空気が抜けていくように肺の中の息も一気に抜けていき、「自然に肺から空気が漏れていく」ことになるからです。

そのためには「口呼吸」が有効なのです。
ストローを使って息を吸うと、その効果が高まります。さらに「ゆっくり」と息が吸えるからです。普通の口で息を吸うのと、ストローを使って息を吸うのと比べてみてください。ストローを使ったときのほうが、「ゆっくり」長時間かけて息が吸えるはずです。

ちなみに、喫煙者は肺の中の肺胞が固まるので、肺が正常な働きができなくなり、呼吸機能が下がってしまうと言われています。病院や医療機関では、喫煙者や元喫煙者に対して、ストローを使った訓練を「治療」として行なっているところが多いです。

喫煙者でなくても、肺の一番下の「部屋」にまで息を送り込めている人は、一部のアスリートやスポーツ選手を除いてほとんどいません。

「歌のため」だけでなく、健康のため、敷いては命の維持のために、「呼吸」が大切です。ぜひ、この「ストロー呼吸法」取り入れてみてください。この「ストロー呼吸法」をやったあと歌ってみると、その効果に驚くはずです。

本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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