【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第44回:コレができると腹話術マスターできます

 多くの人を悩ます謎のアドバイス「頭のテッペンから声を出す」解決のための処方箋として、前回は「腹話術」をご紹介しました。

童心に戻り「できるかも」と連呼して練習に入りましょう

 とりあえずムチャブリでやってみよう!ということでしたが、どうですか? 意外にできるかも!……と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
 そう、同じ人間でできている人がいるなら「できる」はずなのです。

「できるかも」or「できないかも」

 最初にトライするときの、この心境の違いが「成果の分かれ道」。長年にわたり数多くの生徒さんを指導してきて思うことです。

 私が見本を示してから「さあやってみて」と言ったときの生徒さん……。

「できるかも」と思っている人→早く自分もやりたくてうずうずしている様子
「できないかも」と思っている人→できなかったらどうしようとビビっている様子

 その違いは如実です。

「できるかも」と思っている人は「できるように」なります。
「できないかも」と思っている人は「できないままに」なります。

 そのような結果が出てしまうなら、最初から「できるかも」と思っていたほうが良いと思いませんか?
 思えば子供の頃は、「できるかも」、「できるかも」、「できるかも」だったはず。それが成長するに従い、できないことも増えていき、「できないかも」、「できないかも」、「できないかも」……。
 最終的に大人になった頃には、子供の頃は「できるかも」と思っていた人でさえ「できないかも」と思うようになってしまう。そんな風に感じています。

 歌はエンターティメント、楽しいものです。いわばゲームです。

 ゲームだから失敗しても良いのです。失敗しても罪にはなりませんし、人から怒鳴られたりはしないのです。ゲームだったら、そこから知恵を絞り、同じ失敗をしないように工夫していくはず。
 童心に戻り「できるかも」、「できるかも」、「できるかも」を連呼してから練習に入っていただきたいと思います。

 本題に戻りましょう。

 「腹話術」も、まずは「できるかも」で挑戦してください。次に「どうやったらできるのか?」を考えながらやってみてください。

「口を閉じているのに声は出る」ということは「鼻から声は出る」ということか。
             ↓
「鼻から声が出るということは、声が出やすいように鼻の中の空間を広げたほうが良い」
             ↓
「鼻の中の空間を広げるためにはどうしたら良いのか?」
             ↓
「口角を上げると、鼻から息が吸いやすいかも」
             ↓
「腹話術のとき、口角を上げていたほうが声が出やすくなるということ」
             ↓
「でも腹話術でいきなりやろうとすると、ますます口が動いてしまう」
             ↓
「何か効果的な練習法はなだろうか?」
             ↓
「あっそうだ、口が動かないように、いっそ前歯で舌を噛んでしまったら良いのでは」
             ↓
「そうなると、必然的に口角を上げないと発音できないかも」
             ↓
「おお、これは口角を上げながら、しかも口を動かさなく発声できる良い練習になるぞ」
             ↓
「すごい、腹話術もうまくできるようになった!」

 私の頭の中はこのようになっています。そしてそのときの私は「楽しい」のです。なぜなら、「根性でできる」ようになるのでもなく、「たまたまできる」ようになるのではなく、「狙い通り」できるようになっていくからです。

 このような考えの元、できあがった「舌噛み発声法」、ぜひ楽しんでチャレンジしてみてください。

舌噛み発声法

①:上の前歯と下の前歯で舌を噛んで「こんにちは」と言ってみてください。

 どうですか? 最初は「うぉんにちは」のように、何を言っているのかわからない言葉になってしまうと思います。

②:次に「チーズ」と発声するときのように口角を上げた状態で、上の前歯と下の前歯で舌を噛んで「こんにちは」と言ってみてください。

 どうですか? ①のときより、言葉は明確になっていませんか?

③:②の状態より、さらに口角を上げて上の前歯と下の前歯で舌を噛んで、人差指を頬の横の子鼻の横あたりに置いて小鼻を響かせるようにして「こんにちは」と言ってみてください。

 さらに言葉は明確になって、言いやすくなっていませんか?

④:舌は噛まずに、でも口角は上げたまま、③と同じく人差指を頬の横の子鼻の横あたりに置いて小鼻を響かせるようにして「こんにちは」と言ってみてください。

 どうでしょうか? 声が鼻の奥で、うまくいけば顔全体で響くようになっていませんか? 他にも「おはようございます」、「おつかれさまです」などの言葉でもトライしてみてください。

 もしうまく響かなかったら、

「こんにちは」では「こん」
「おはようございます」では「おは」
「おつかれさまです」では「おつ」

 など、最初の言葉のときに、素早く頰を上げるようにして発音してみてください。普段より響く感覚を持つことができるはずです。

 最後に、私が行なっている「舌噛み発声法」サンプル動画を観てください。2つ目の動画では名曲「涙そうそう」を「舌噛み発声法」で歌っていますので、参考にしてください。

腹話術マスターには「舌噛み発声」がオススメ
舌を噛んだまま「涙そうそう」歌えますか?

撮影:ヨシダホヅミ

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本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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