【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第11回:魔法の度数45°で呼吸はラクになる!

今回も、第7回:「お腹を膨らませて声を出して」は合っているの?という、ボイトレの???(ハテナ)に対しての、

<処方箋>
「自然に肺に空気が入りやすくなる練習」
「自然に肺から空気が漏れていく練習」

を処方したいと思いますが、今回の処方箋も「The 脱力」、お薬は「45°メソッド」です。

いきなり度数が出てきたら、「45°って何?」ってことになると思いますが、呼吸するときの上半身の傾斜角度を「45°」にしましょう、ということです。

上半身の傾斜角度を「45°」にすれば「呼吸がラクになる!」からです。

まず、息が吸いやすくなる
次に、息が出やすくなるのです。

本当でしょうか? 実験してみましょう。

【実験】
椅子に腰掛け、
①普通の体勢で息を吸う
②上半身を45°に傾けた態勢で息を吸う

どうですか? ②の上半身を45°に傾けて息を吸ったほうが吸いやすいと思います。

次は「息が出やすいか」ですが……、こちらも普通の態勢と45°に傾けた態勢で比べてもらったらわかると思いますが、上半身を45°に傾けた体勢のほうが「息が出やすい」はずです。「出やすい」というより「漏れる」ような感覚になると思います。

第8回第9回の「風呂トレ」シリーズでも説明しましたが、この「漏れる」感覚が、腹式呼吸マスターへの近道になります。

ところで、なぜ上半身を45°に傾けた体勢だと呼吸がラクになるのでしょう?

我々はもともとは4本足で歩いていた動物、その時の状態、すなわち気管が地面に対して水平の状態のほうが息が吸いやすく、出やすいのではないかと推測できます。

また重力的に考えても普通の体勢、すなわち地面に対して気管が垂直の状態より、上半身を45°に傾けた体勢、すなわち地面に対して気管が水平の状態に近いほうが有利になるかと思います。ちなみに「お通じ」にもこの「45°」は有効だと言われています。

こんな「得する45°」を放っておくのはもったいないです。最大限に利用しましょう。

まずは1日1分でも良いので、上半身を45°に傾けた体勢で息を吸い、息を吐く練習をしてみてください。これだけでも呼吸の質は上がるので、歌うときにも以前よりラクに歌えるはずですが、どうせなら「もっと得しましょう!」。

声量アップやニュアンスアップにもつながる「肺活量アップ」を目指すのです。
「息が吸いやすい」ということは、「肺の奥のほうにまで息を送り込みやすい」ということ。すなわち「肺を大きく」、そして「肺活量を大きく」することができるのです。

先ほどと同じように、上半身を45°に傾けた体勢で息を吸ってください。ただし、今回は「限界」まで息を吸ってください。

この練習、最初は「口から吸って」ください。なぜなら「肺の奥のほうにまで息を送り込む」には、「ゆっくり」息を吸う必要があります。「鼻から息を吸う」ことは、感染予防の観点からも、また最終的な歌唱においても有利ですが、「肺活量を大きく」することに関しては、必ずしも有利にはなりません。

なぜなら「鼻から」、「口から」それぞれの特徴は、

鼻から息を吸う→素早く吸える
口から息を吸う→ゆっくり吸える

なので、「肺の奥のほうにまで息を送り込む」ことが目的のこの練習には、最初は「口から吸う」ことが、最短距離で成果を出せるコツです。

したがって下記①〜④の手順に沿って、肺の奥のほうにまで息を送り込むようにしてください。

①ゆっくり「口から吸う」
②素早く「口から吸う」
③ゆっくり「鼻から吸う」
④素早く「鼻から吸う」

最初は鼻から吸うと口より吸えないのがわかると思いますが、最終的には口からと同じ量の息を、鼻から素早く吸えることを目指してください。

そうすれば、実際の歌唱においても素早く無理なくブレスができるようになり、呼吸もラク、そして歌うことがもっと楽しくなるはずです。まずは「1日1分」取り組んでみてください。

本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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