【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第16回:「頭のてっぺんから声を出して」ってどういうこと?

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2022年3月から連載開始のこのコラム、今回で16回目になりますが……改めて自己紹介を。

「歌は教えるものでもなく、教わるものでもない」
と言い続けているヴォイストレーナー、それが私、 小泉誠司です。

その人が「歌は楽しい」と思えばそれでいいと思います。
カラオケで楽しく歌って発散したり、その場を盛り上げたり、人を勇気づけたり……歌は人として、また動物として必要不可欠な本能的なものだからです。

しかしながら、

①プロの実力を身につける
②喉を痛めない

この2点において自力では解決できないと思ったら、「プロ」の力が必要かもしれません。
そしてプロとアマでは、「常識」が違うことが多々あり、せっかく一生懸命頑張っているのに、「プロの常識」とは違う練習方法を行なっていると逆効果になってしまいます。

どの世界でもそうですが、アマの常識は、必ずしもプロの常識ではないこともあるのです。
まして、ヴォイストレーニングには「???(ハテナ)」がいっぱいありますよね。

いろんな考え方や指導法がありますが、たとえ正論であっても、説明が不十分であったり、その根拠が不明確だったりすると、正しい成果を生むことが難しくなったりもします。

わからないからヴォイストレーニングを受けている生徒さんからしたら、「何が正しくて、何が間違っているかのか」がわからないと、ますます不安になると思います。

このコラムでは、生徒さんの立場になって、また指導する先生の「頭の中」を理解していくことで「???(ハテナ)」を解決していきます。


今回取り上げる「???(ハテナ)」は、
「頭のてっぺんから声を出して」ってどういうこと?

音大で声楽を習っていて、先生から「頭のてっぺんから声を出して」と言われるのですが、それがどういうことかがわからず、ずっと悩んでいました。

など、この「???(ハテナ)」で悩んでいる生徒さんを多く見ていました。

それでは、診断していきましょう。

【どういうこと?】

「頭のてっぺんが響く声」とは「鼻腔の中に息が入って響く声」のこと。鼻腔の中に息が入って声が響くと頭蓋骨全体が共鳴し、その結果「頭のてっぺんが響く声」になるということです。

【できると、なぜいいの?】

広い部屋のほうが狭い部屋より音がよく響くように、口の中だけでなく鼻腔も響かせ、頭蓋骨全体を響かせたほうが声がよく響くので、

●小さい声でも声が響くので繊細なニュアンスをつけられる
●高音域が出しやすくなる
●裏声やミックスボイスが出しやすくなる
●明るい声質になる

【できているかどうかわかるには?】

小鼻に指を当てて響いていればOK

【なぜ難しく思えたのか?】

頭のてっぺんには口がなく、頭からは声は出ないので、その抽象的な説明やイメージに混乱してしまったから。

【その先生が伝えたかったこと】

声帯を震わせてできた声は、口からと鼻腔を経由して鼻から出ていくが、喉から鼻腔に通じる気管は垂直に伸びているので、「真上に息を送る」意識が必要で、そのため「頭のてっぺんから」という説明になった。

【人に説明するにはこう伝えよう】

声は口からと鼻からと出て行くが、鼻から出て行く声の量を増やすと頭蓋骨全体が共鳴して「頭のてっぺんから声が出る」という表現される豊かな響きを持つ声になります。
でもこれはあくまでもイメージで、実際にやらなければいけないのは鼻腔に息を送り込むことで、それには鼻腔に続く気管に「真上に息を送る」意識が必要になります。

【どんな練習をすればいいの?】

●鼻腔を広げる練習
●鼻腔への通り道をスムーズにする練習
●鼻腔まで届く自然で強い息を作る練習

上記の主旨の練習が必要となります。

次回以降、具体的な練習方法を処方箋としてお出ししていきます。
お楽しみに。

本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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