【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第20回:「声を見る」ための工作の時間がやってきました!

2022.07.25

20回記念です!

 2022年3月から連載開始のこのコラム、今回は記念すべき20回目になります! パチパチパチ!
 でも実は週1のペースで公開しているこのコラム、けっこうハードな執筆活動とも言えるかもしれません。「やったー! 原稿を書き上げたぞ!」と思ったら、あっという間に1週間が経ち、次の原稿の恐怖が私を襲ってくる……ううう……なんてことはなく、むしろ喜び。
 私は「歌は教えるものでもなく、教わるものでもない」と言い続けているヴォイストレーナー、小泉誠司。巷に溢れるボイトレの「???(ハテナ)」を解決、ひとりでも多くの人に歌の楽しさを味わっていただくことを使命だと思っているからです。
 ボイトレの「???(ハテナ)」……?「えっそんなことはわかってる」、「歌は楽しいよ」……という人は、このコラムを読んでいただく必要はありません。その人が「歌は楽しい」と思えばそれで良いのですから。

 でも、

①プロの実力を身につける
②喉を痛めない

 この2点において自力では解決できないと思ったら、このコラムの力が必要かもしれません。ぜひ、このコラムで「へぇ〜、そうなんだ」、「今やっている練習と真逆かも」など「プロの常識」を身につけていただきたいと思います。なぜなら、プロとアマの「常識」が違うことは多々あり、アマの常識は、必ずしもプロの常識ではないこともあるからなのです。
 それにしても、ヴォイストレーニングには「???(ハテナ)」がいっぱい。このコラムでは、皆さんを困らせている「???(ハテナ)」の正体を突き止め、解決していきます。

 前回(第19回:声が見えればいいのに!)では、第16回:「頭のてっぺんから声を出して」ってどういうこと?の処方箋として「ティッシュペーパーを使っての練習」をご紹介しました。
 うまくいかないのは「声が見えないから」。声が見えれば、対処法も見えてくる。そこでティッシュペーパーの出番だったのです。

 声は口からと鼻からと出て行くが、鼻から出て行く声の量を増やすと頭蓋骨全体が共鳴し「頭のてっぺんから声が出る」と表現される豊かな響きを持つ声になりますが、それには「フーの息」を出せるようにしないといけません。
 なぜなら、声が鼻から出て行くには、鼻の中にある鼻腔に息が届かなければいけない。そのためには強い息である「フーの息」が必要。正しく「フーの息」が出ているかどうかは、ティッシュペーパーの揺れ方でわかります。詳しくは前回のコラムをご覧ください。

「遠くの人に声を届ける」

 今回はどこまで声が届いているのか? 「遠くの人に声を届ける」。それには「遠くに息を届ける」こと。ティッシュペーパーを使うと、遠くに息を届けられているか簡単にわかります。ティッシュペーパーが振れることができれば「息が遠くまで届いている」ことになるからです。
 前回やったように、目の前で両手でティッシュを持って、水平にティッシュペーパーが揺れるように吹いてみましょう。ここでのヒントは「風船」、「ため息」、「スイカの種飛ばし」です。

 今回のテーマは「遠くの人に声を届ける」なので「息が遠くまで届いている」かどうかをチェックする必要があります。自分から離れたところにティッシュペーパーを置いて、そのティッシュペーパーが揺れるかどうか試していきます。ただし、人間の腕はせいぜい50cmほどなので、それ以上になると別の方法を考えなければいけません。

 そこで工作の時間です。ハンガーにセロテープなどでティッシュペーパーを取り付けます。

 ハンガーにティッシュペーパーが取り付けられたら、天井からの照明器具などにヒモを垂らしてハンガーを取り付けます。

 これで準備万端。最初はティッシュペーパーの前、15cmくらいのところで「フー」と息を吐いてみましょう。ヒントは前回コラムを参照してください。
 うまく、ティッシュペーパーが水平になびくようになったら、次は30cm、50cm、1mと距離を伸ばしてください。ティッシュペーパーまでの距離が長くなればなるほど、「力み」が出やすくなり、うまくいかなくなることが多いです。距離に惑わされずに、短い距離でやっていた通りに息を吹くことがコツです。
 ホースで水を撒くときに、指で押さえてホースの先を細くして水を集め、遠くに水を届けるようにしますよね。息も同じです。大きな口を開けて息を吐くより、口をすぼめて息を吐いたほうが、遠くに息は届きます。

 これは完全に「勝敗」がハッキリした「ゲーム」です。「声」は見えないので「勝敗」を作ることは難しいかもしれませんが、「声の動力源の息」は見ることができるので「勝敗」がわかる「ゲーム」になるのです。

勝ち:ティッシュペーパーが水平になびく(90度)
負け:ティッシュペーパーが水平になびかない(45度〜90度未満)

 負け続けていると楽しくないはずなので、勝てるように「工夫」してください。おさらいですが、「工夫」とは……

「風船」、「ためいき」、「スイカの種飛ばし」のイメージ
●距離に惑わされずに、短い距離でやっていた通りに息を吹くこと
●口をすぼめて息を吐く

 このティッシュペーパーの練習で「勝てる」ようになると、声は格段に出やすくなっているはず。そしてそのときの声は「頭のてっぺんから出るような声」になっているはずです。集中してやっていると、喉の渇きに気づかないことが多いです。くれぐれも水分補給を忘れずに打ち込んでください。

本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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