【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第1回:ボイストレーナーがいなくなればよい!

2022.03.14

多くのテレビ出演や著書を執筆しているボイストレーナー、小泉誠司による新連載がスタート!

正式タイトルは『初診・再診受付中! ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック』ですが、とても長いので、ひとまず『声と歌の小泉クリニック』と覚えてください!

この連載では、ボイストレーニングを受けたことのない方(初診)はもちろん、以前に受けていた方(再診)が「先生は○○しましょう!と言ってたけど、理解できず身につかなかった」といった悩みや疑問に、小泉先生がズバリ「お答え」して期待に「お応え」するコラムです。

それではクリニックを開始します。「○○さん、どうぞお入りください」。

ボイストレーナーがいなくなればよい!」

……と、およそボイストレーナーらしくないことを言い続けているボイストレーナー、それが私、小泉誠司です。

犬や鳥が、ほかの犬や鳥に「どうやって鳴くんでしたっけ?」、「私の鳴き方、合っていますか?」
なんて聞くわけはない。当たり前です。

でも人間が「どうやって声を出せばいいでしょうか?」、「私の発声、合っていますか?」
などと別の人間に教えを乞う場。それが「ボイストレーニング」。

えっ? これはおかしいぞ。これは変だぞ。
そうなんです。おかしいことなんです。

赤ちゃんが生まれてきて最初に行なう行為、それは「おぎゃー」と泣くこと。まさに「生まれたきたよー」という命のメッセージ。それも人生で一番小さいときに一番大きな声量……。声を出すことは本能であり、そこには悩みや、良し悪しは存在しないのです。

ちなみに、あなたは赤ちゃんと同じように泣けますか?
また赤ちゃんと同じ声量で泣けますか?

えっ。できない? なぜ? 人間としては成長しているじゃないですか?
体も大きくなったし、知能も発達しているし。でも、できない?

おかしいですね。
この「おかしい」という感覚が大事なのです。
「声を出すことは難しい」という先入観から逃がれるには、「あれ、おかしいぞ、赤ちゃんや犬ができていることができないはずがない。きっと難しく考え過ぎてるのでは?」と気づくこと。

「おかしい」に気づけると、もっと簡単に声も出るようになりますし、もっとラクに歌えるようになります。このコラムでは、そのサポートをさせていただきます。

ところが皮肉にもボイストレーニングを受けていると、専門用語なども出てきて逆に難しく思えてしまうこともあるかもしれません。

「ボイストレーニングを行なわなくでもいいように」
「ボイストレーナーの力を借りなくてもいいように」

そんな願いを込めて「ボイストレーナーがいなくなればよい!」と私は言い続けているのです。


私は毎日ひとりひとり個別に指導しているのですが、気がつけば20年、「渋谷の駆け込み寺」と呼ばれるようにもなりました。

以前にボイトレを習われていて、「自分の声や歌がわからなくなってしまった」といった悩みを持たれて、私のレッスンに来られる方もおられます。

そんな方々の中には、以前のボイストレーナーの先生のことを悪く言われる方も少なくないのですが、私は、他のボイストレーナーを否定しません。「その先生は恐らくこういうことを伝えたかったのだと思う」とフォロー、補足や通訳をしていきます。

なぜなら、その先生や先生の指導法を否定することは、そのレッスンを受講されていた生徒さんの時間や労力を否定することになるからです。

「なんて意味のない時間を過ごしてしまったのだろうか……」という思いを生徒さんが持ったまま、レッスンをスタートしても素晴らしい成果を生むことは難しいです。

「何のために、その練習をしていたのかわからなかったけど、そういう意味だったんだ!」
「そういう注意点が必要だったのか!」
「それができれば、歌の中でこんなことができるようになるんだ!」


……と、今まで培ったものを、真の「財産」として、成果に活かしていってほしいのです。

そして、そんな生徒さんの悩みを改善するために「処方箋」として、私が役立てているのが、医学的な見地に基づくメソッド。

私は今までに医師の方へも多数指導し、医師や言語聴覚士とも勉強会を行なってきました。医療的見地をボイストレーニングに取り入れると、難しそうなボイトレの専門用語を使わなくても驚くほど簡単に解決してしまいます。

医学というと難しく思うかもしれませんが、身体の本来の機能や動きを正確に知れば、無理やり声を出そうとしなくても自然に声が出るようになります。そう、赤ちゃんや他の動物が行なっているようにね。

「治すのではなく戻す」

生まれ持った本来の力を取り戻せば、声や歌のほとんどの問題は解決します。今までにボイストレーニングを受けてみたけれど、なんだか難しかったので「やり直したいと思っている人」も、これからボイストレーニングを受ける予定の「やり直す必要がない人」も騙されたと思って読んでいただきたいです。


私がボイストレーニングの指導をしてきた人の中には、モテ声ランキングで常に上位にランクされる俳優さんもいらっしゃいます。現在の美声からは考えられないことですが、もともとは声にコンプレックスを持たれていました。

数年前の嵐の番組『嵐にしやがれ!』に、その俳優さんが出演された際、嵐のメンバーに「いい声ですね」と褒められていましたが、彼が言ったことは、「もともと僕は声がこもっていて自分の声にコンプレックスを持っていましたが、ボイストレーニングの先生にメンタル面をサポートしてもらってから、こんな声が出るようになった」というものでした。

もちろんテクニカル面もご指導させていただきましたが、「コンプレックスを取り除く」ことに集中して取り組んだことの成果だったと思います。私にとっての嬉しい成功事例です。

このコラムでは、みなさんの持たれている不安や悩みを、
メンタル面とテクニカル面
2つの「処方箋」でサポートしていきます。
次回からはより具体的な内容でサポートしていきたいと思います。お楽しみに。

本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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