【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第81回:早口をやめるとオーディションにも合格、成功できる!

「ゆっくりやる」は発声に関わらず、すべての行為において有効

 人は緊張すると早口になります。

 私は今まで数多くのオーディションに審査員として携わってきました。
 通常オーディションでは、「歌手なら歌唱審査」、「俳優/声優なら演技審査」、そして「自己PRの時間」が設けられることが多いですが、「自己PRの時間」においても早口になってしまう人を数多く見てきました。

 早口になると……

①せっかくの自分をアピールできる時間が減る
②滑舌が悪くなる
③審査員にとっても聞きづらくなる

 ….…など、良いことは起こりません。

 ゆっくり話すと……

①自然に声量が上がる
②滑舌が良くなる
③相手にとっても聞きやすくなる

 ……など、良いことが起こります。

 「ゆっくりやる」は発声に関わらず、すべての行為において有効です。
 また、自律神経を安定させる効果があると医学的な学説もあるので「緊張に勝つ」ことも可能です。

 私は『歌スク』講師でもある声優の千葉千恵巳さん演出の朗読劇を定期的に開催してきています。
 その都度、オーディションを開催しますが、「自己PRの時間」において「ゆっくり」、「ゆったり」話をされた人は、数人しかいなかったと記憶しています。

 皆さん緊張しているのです。
 当然です。もしかしたら人生を左右するかもしれないオーディションという「本番」、緊張するに決まっています。
 緊張すると「自己PRの時間」において早口になるだけでなく、歌唱や演技においても「焦ってる」、「力んでいる」など、緊張している人の特徴が多く見られます。

 オーディションでは、歌唱審査や演技審査の前に「自己PRの時間」が設けられることが多いと思いますが、「自己PRの時間」において早口になってしまっている人は、歌唱や演技においても精神的には「早口」になっている、
 すなわち「普段はできていることが緊張するとできなくなる人」になってしまっているのです。

 審査員としては、目の前で明らかに緊張してガチガチになっている人を見ると、「いいよ、いいよ、落ち着いてやってくれていいよ。」という気持ちになります。
 でも一方、「本番では緊張するに決まっているのに、なぜその対応を考えてこなかったのか」とも思います。
 人生を左右しかねない重要なときに、「緊張して実力が発揮できなかった」でチャンスを逃してしまうことをとても残念に思うからです。

「実力を発揮できる人」になろう

 では、「本番では緊張するに決まっているのに、なぜその対応を考えてこなかったのか」という問いへの「答え」のひとつを提示したいと思います。

 それは「ゆっくり話す」です。

 「自己PRの時間」で早口にならず「ゆっくり話す」ことができれば、先に述べた

①自然に声量が上がる
②滑舌が良くなる
③相手にとっても聞きやすくなる

 といった具体的なメリットが生まれるばかりか、それ以上に「落ち着いている自分」を作ることが可能になるからです。
 そうなると、歌唱審査や演技審査においても「普段はできていることが緊張するとできなくなる人」とは決別できます。
 ズバリ「実力を発揮できる人」になれるのです。

 ちなみに実力者とは、緊張下においても「実力を発揮できる人」だと思います。
 オーディションで合格してチャンスを掴める人は、そういう人なのです。ぜひ「ゆっくり話す」をマスターしていただきたいと思います。

 では、「“ゆっくり話す”をマスター」するのは具体的にどのような練習をしたら良いか、私の著書『人生を変える 勝ち声 負け声』にも掲載されている「超スロー発声法」をご紹介したいと思います。

「超スロー発声法」のやり方

 アナウンサーや役者のバイブルとも言われる「外郎売」の冒頭部分を「これ以上ゆっくり読めない」
というスピードで読んでみましょう。

拙者親方と申すは
お立ち会いの中に
ご存知の方もござ りましょうが……

(読み方)
せっしゃおやかたともうすは
おたちあいのうちに
ごぞ んじのおかたもござりましょうが……

(練習法)
「15秒かけて読む」を4回 =1分

 イメージは「能」や「狂言」。
 「おちょぼ口」から「チーズの口」になるように、唇が真ん中から左右に広がるように動かすことで、ゆっ くりと読めるようになります。

 超スロー発声法を行なうと、次のメリットがあります。

①腹式呼吸になり、呼吸も安定し声も出やすくなる。
②顔や口の筋肉を動かすことができるので、 ニュアンスアップ。
③顔や口の筋肉を動かすことで舌の動きも活発になり、 滑舌が良くなる。
④顔や口の筋肉を動かすことで顔の表情が良くなり、 印象アップ。

 「超スロー発声法」手本動画をアップしていますので参考にしてください。

「超スロー発声法」

 「超スロー発声法」をマスターして、「普段はできていることが緊張するとできなくなる人」とは決別、本当の実力をモノにしてください。


撮影:ヨシダホヅミ

小泉誠司のレッスンを受けてみよう!

 リットーミュージックが運営するオンライン・ヴォーカル・レッスン『歌スク』に小泉誠司が参加中。無料体験レッスン(1回のみ25分)も行なっていますので、まずは『歌スク』のサイトにアクセスしてください。

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2023年10月6日(金)、10日(火)、20日(金)、26日(木)にレッスン枠あります!
※レッスン予約が入ると空き枠は予告なく終了となりますので、ご了承ください。

本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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