
【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック
小泉 誠司
ニューベリーサウンド
「自然に肺に空気が入りやすくなる」
「自然に肺から空気が漏れていく」
……これが、腹式呼吸マスター「処方箋」。
前回ご紹介した「ストロー呼吸法」では、
「呼吸機能の改善」→「肺活量アップ」→「肺を大きくする」→「ゆっくり吸う」→「口呼吸が有効」→「ストロー呼吸法が効果的」……という処方を行ないました。
前回は「肺活量アップ」することで、呼吸機能改善を促しましたが、今回は「呼吸のスピードアップ」をすることで、呼吸機能改善を促したいと思います。
長年、プロの人とアマの人とのボイストレーニングを行なってきていますが、プロとアマではさまざまな違いがあると感じています。
そのひとつに「発声のスピード」があります。
プロ=発声が速い
アマ=発声が遅い
プロはいわゆる「音(声)の立ち上がり」が速いのです。
アマの発声が遅れる原因のひとつは「息が遅い」ことです。
要は「息を吸う」、「息を吐く」のが遅いということです。
「息を吸う」、「息を吐く」が速くなれば「発声も速く」なります。
なぜなら、声は肺からの息が声帯を震わせて作られるので、原動力である「息」を速くすれば、「発声も速く」なるからです。
前回、「肺活量アップ」のために用いた「ストロー呼吸法」は「息を吸う」、「息を吐く」すなわち「呼吸のスピードアップ」にも有効です。
「呼吸のスピードアップ」のための「ストロー呼吸法」の具体的な練習法をご紹介していきたいと思いますが、まずは「ストロー呼吸法」(肺活量アップ編)をおさらいしましょう。

ストロー呼吸法(肺活量アップ編)
①脇腹に片手を置き、ストローを口にくわえます。
②ゆっくりと息を吸います(横隔膜が広がっていくのを感じながら)。
③5秒間そのままキープ。
④口から一気に息を吐きます(ストローは外す)。
【ヒント】
●できるだけ限界まで吸いましょう。
●息を吐くときに均等に吐くのでなく、漏れるように一気に吐きましょう。
●必ず水分補給はこまめに行なってください(喉の乾燥を防ぐ)。
●長時間の練習は避ける。
次に、こちらをやりましょう。
ストロー呼吸法(息スピードアップ編)
①脇腹に片手を置き、ストローを口にくわえます
②ゆっくりと息を吸います(横隔膜が広がっていくのを感じながら)。
③5秒間そのままキープ。
④ストローを口にくわえたまま、口から一気に息を吐きます。
【ヒント】
●シェイクをストローで吸い込むには「速く強く」吸わなければいけないように、「速く強く」肺が大きくなるまで吸いましょう。
●ストローの中に爪楊枝を入れて「吹き矢」で飛ばすイメージで「速く強く」、肺に息がなくなるまで息を吐きましょう。
●必ず水分補給はこまめに行なってください(喉の乾燥を防ぐ)。
●長時間の練習は避ける。
ストロー呼吸法(息スピードアップ編)を行なう前と行なったあとで「話す声」、「歌い声」の違いを比べてみてください。
声量・声質・発声のスピード……すべて、ストロー呼吸法(息スピードアップ編)後が優っているはずです。ぜひ、試してみてください。
ただ、この練習では最大量の36度の温風を喉に当てていることになるので、喉を乾燥させ、傷めやすくもなります。くれぐれも長時間の練習は避け、水分補給はこまめに行なってください。
ストロー呼吸法(肺活量アップ編 & 肺活量アップ編)を行なうと、声量は必然的にアップしますが、あくまでも目的は呼吸の質が上がることによる発声のスピードアップです。
声量が増していても、声が割れたりかすれたりしていると、呼吸の質が高まっていることになりませんし、喉を傷める原因にもなりかねないので注意して練習してください。
本コラムの執筆者

小泉 誠司
ニューベリーサウンド
小泉 誠司(コイズミ セイジ)
ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。
伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。
著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。
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