【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第24回:「ダマナバメソッド」であなたは「通る声」になれる!

2022.08.22

 突然ですが……「ダ マ ナ バ」を5回連続で言えますか?

 うまく言えましたか? 「ダ バ ナ バ」や「ダ マ ダ マ」、「ダ マ ナ マ」になったり、なかなかうまくは言えないのではないでしょうか? 事実、私の行なっているレッスンでも、最初はうまく言えない生徒さんが続出しています。
 でも、「あるメソッド」を教えると、簡単に言えるようになるだけでなく、別人のように「声が通る」ようになります。
 そして、一度このメソッドで「声が通る」ようになると、その後もずっと「声が通る人」になる。言ってみれば「通る声の試金石」とも言えるメソッド、それが今回ご紹介する「ダマナバ  メソッド」、着火剤メソッド第4弾なのです。

 なぜ「 ダマナバ  メソッド」が「通る声」に効果があるのか? それは「 ダマナバ メソッド」には「種火」が満載だからなのです。

種火って何?

 前回まで数回にわたり、飛躍的に声が出やすくなるメソッド、「着火剤メソッド」を説明してきました。ガスコンロで火をつけるとき、「種火」がないと、ガスは漏れるだけで「着火」せず炎にならないように、肺からの息に「種火」で「着火」できないと、いわゆる「息が漏れているような声」になってしまうのです。
 そのための「種火」には、ガスコンロで種火に火がつくときの音「ボッ」に代表される、いわゆる「濁音」が最適。唇や舌や歯などの「破裂」や「打撃」などが「種火」の役目を果たしてくれるからです。

 例えば……「はひふへほ」、「ばびぶべぼ」を声に出すと、

「はひふへほ」を発音するときには、唇はいっさい使わない→種火なし→声が出にくい

「ばびぶべぼ」を発音するときには、上下の唇で破裂させる→種火あり→声が出やすい

 つまり「種火」の有無で、声の出やすさに違いが出るということなのです。
 今回ご紹介する「 ダマナバ メソッド」には「種火」がたくさん仕込まれているので、その「種火」のつけ方さえ掴めば、声は格段に出やすく、そしてその声は「通る声」になるのです。
 それでは、「ダマナバ メソッド」を説明していきましょう。

 メソッド名にもなっていて、冒頭でトライしていただいた「ダマナバ」とは、上記の文字列の左端を縦に読んでもらったものです。
 普通に日本語として読むと、先ほどのように噛んだしまったり、読み間違ったりしてしまいます。なぜなら、「ルールなし」で発音してしまっているからです。

 では、下記ではどうでしょうか? 同じく文字列の左端を縦に「Da  Ma  Na  Va」……。なんとなく英語だと意識して発音してみてください。

「Da」→ 上の前歯の付け根を舌で叩いて発音 →「舌の仕事」

「Ma」→ 上下の唇を破裂させるように発音 →「唇の仕事」

「Na」→ 上の前歯の付け根を舌で叩いて発音 →「舌の仕事」

「Va」→ 下の唇で上の前歯を弾くように発音 →「唇の仕事」

 日本語として読んだときは、「ルールなし」、すなわち「唇」か「舌」か、誰がどう動いて良いかわからないまま発音している
→「唇」、「舌」が「種火」を引き起こすような動きをしていない。
→ スムーズには発音できず、声も通る声にはならない。

 英語として読んだときは、「ルールあり」、すなわち「唇」か「舌」が、それぞれが規則正しい動きを行ない発音している。
→「唇」、「舌」が「種火」を引き起こすような「打撃」か「破裂」の動きをしている。
→  スムーズに発音でき、声も通る声になる。

 最初はゆっくり確実に下記を意識して発音してみましょう。

「Da」→ 上の前歯の付け根を舌で叩いて発音 

「Ma」→ 上下の唇を破裂させるように発音

「Na」→ 上の前歯の付け根を舌で叩いて発音 

「Va」→ 下の唇で上の前歯を弾くように発音 

 要は、舌と唇が交互に仕事をしているということです。

Da → Ma → Na → Va 

舌  → 唇  → 舌  → 唇

 この練習は「必ず鏡の前で」行なってください。
 上記の練習がうまくできるようになったら、少しアレンジしてみましょう。「Ma」も「Va」と同じ動き、下の唇で上の前歯をはじくように発音してみてください。

「Da」→ 上の前歯の付け根を舌で叩いて発音 

「Ma」→ 舌の唇で上の前歯を弾くように発音

「Na」→ 上の前歯の付け根を舌で叩いて発音 

「Va」→ 下の唇で上の前歯を弾くように発音

 「Ma」を、上下の唇を破裂させるように発音することは英語としては正しいのですが、この動きだと「破裂」が不十分になる可能性があるので、より明確に「破裂」させるためには、「Va」と同じで下の唇で上の前歯を弾くように発音したほうが効果的だからです。

 「Da Ma Na Va」を5回連続でスムーズに言えるようになったら……縦に左側の列から読んでみましょう。

Da Ma Na Va

Di  Mi  Ni  Vi

Du Mu Nu Bu

De Me Ne Ve

Do Mo No Vo

 「舌  → 唇  → 舌  → 唇」の仕事は忘れずに。下記、私の手本動画です。参考にしてみてください。

ダマナバメソッド・基本

ダマナバメソッド・各行2回

ダマナバメソッド・各行2回連続

 「濁音」は「種火」に最適と言えるのですが……、実は「ダマナバメソッド」の「マ / Ma」「ナ / Na」は濁音ではないにもかかわらず、「種火」となり得て、その結果、声が出やすく、通る声にも繋がりました。
 英語の発音を日本語にもうまく取り入れることで、本来は「種火」ではない音も「種火」として働いてもらうことができたからです。次回はさらに具体的に説明していきたいと思います。
 お楽しみに。

本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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