【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第23回:着火剤メソッド第3弾「ボッー編」、恐ろしいほど簡単に歌いやすくなる!

2022.08.15

 前々回は「着火剤メソッド・基本編」、前回は「着火剤メソッド・歌唱編」として、ガスコンロで種火に着火するときに出る音「」をイメージ。肺からの息に、種火の「」を着火、炎ならぬ声に変えていきました。

【ガスコンロ】ガス→種火で着火→炎

①ガス放出→ノブを回してガスを出す
②着火→ノブを回し切ると「カチッ」と「種火」に火がつく
③点火→炎になる

【発声】息→種火「」で着火→声

①息放出 
②着火→唇・舌・歯で「破裂」
③点火→声になる

 この「着火剤メソッド」をやったあと、元の文章を読んだり、元の歌詞を歌うと格段に声が出やすくなる!と、私の指導している生徒さんの中でも評判のこのメソッド。
 「なぜ声が出やすくなるのか?」……。 おさらいも兼ねて説明していきたいと思います。

 「種火」がないと、ガスは漏れるだけで「着火」せず炎にならないように、肺からの息に「種火」で「着火」できないと「ガス漏れ」ならぬ「息漏れ」、「不完全燃焼」とも言える状態になり、いわゆる「息が漏れているような声」になってしまうのです。
 「エネルギーをいかにロスせずに力に変えていくか」……。 他の物理的な現象と同じ価値観で「発声」も成り立っているのです。

●ガスコンロの場合、ガスを「いかに効率よく」火に変換できるか?
●発声においては、肺からの息を「いかに効率よく」声に変換できるか?

 「効率の良いエネルギー変換」を行なうためには、ガスを炎に変えてくれる「種火」が不可欠なように、発声においても「種火」が重要です。

「発声においても『種火』が重要」

 どういうことか実験してみましょう。

「はひふへほ」
「ばびぶべぼ」

を声に出してみてください。

 「はひふへほ」を発音するときには、唇はいっさい使わなかったはずですが、「ばびぶべぼ」を発音するときには、上下の唇で破裂させていたはずです。そして「ばびぶべぼ」のほうが「はひふへほ」より「格段に声が出やすかった」はずです。

 それは、「ばびぶべぼ」には、「種火」が存在していたので、肺からの息に「着火」でき、声が出やすかった。それに対して、「はひふへほ」は「種火」が存在せず、肺からの息に「着火」することが難しく、声が出にくかった……ということになります。

「はひふへほ」
肺からの息→種火なし→声が出にくい

「はひふへほ」
肺からの息→種火あり(上下の唇で破裂)→ 声が出やすい

 どうですか? 「種火」の有無が「声が出やすさ」に大きく関係すること、ご理解いただけたら、次はさらに声が出やすくなる「着火剤メソッド  ボッー編」をご紹介していきたいと思います。

「初級編」、「歌唱編」に続き「 ボッー編」

 「 ボッー編」って何?……という疑問の声が聞こえてきそうですが、歌を全部「 ボッー」で歌ってみよう……。たったこれだけのメソッドです。今までで一番簡単な「着火剤メソッド」だと言えるかもしれません。
 前回でも取り上げた、日本の沁みる名曲「蛍の光」と「赤とんぼ」で挑戦してみましょう。

「蛍の光」(作詞:稲垣 千穎 作曲:不詳/スコットランド民謡)
ほたるのひかり
ボッーオーオーオーオーオーオーボッー

まどのゆき
ボッーオーオーオーオーボッー

ふみよむつきひ
ボッーオーオーオーオーオーオーボッー

かさねつつ
ボッーオーオーオーオーボッー

「赤とんぼ」(作詞:三木露風 作曲:山田耕筰)
ゆうやけこやけの
ボッーオーオーオーオーオーオーオーボッー 

あかとんぼ
ボッーオーオーオーボッー 

おわれてみたのは
ボッーオーオーオーオーオーオーオーオーボッー

いつのひいか
ボッーオーオーオーオーオーボッー

 簡単なのに、効果絶大なメソッドではありますが、下記の注意点は必ず守ってください。

①最初と最後の「ボッー」の「ッ」が大事→必ず種火に着火するときに出る「ボッ」という音のように素早く発声する

②絶対に音を切らない→「レガート=音をなめらかに」繋いでください。

 最初の「ボッー」も大事なのですが、最後の「ボッー」こそが普段の皆さんの悪いクセを取ってくれる頼もしい味方。必ずしっかりと「ボッー」と発声するようにしてください。
 どういうことかと言うと……笛を吹くときなら、フレーズ最後の音までしっかり音を出そうとするのに、歌の場合、フレーズの最後の音は極端に弱くなってしまっていることが多いです。
 最後の「ボッー」をしっかり発声することにより、語尾まで声を安定させることができ、その結果「自然なビブラート」も生まれやすくなります。

 今練習している曲などでも「着火剤メソッド  ボッー編」試してみてください。このメソッド、歌詞がわからなくてもできるので、お風呂タイムでも実行可能。「鼻歌まじりに」楽しくトライしてみてください。

 「着火剤メソッド  ボッー編」では、「ぼ」という「濁音」を種火として活用しています。総じて「濁音」は、唇や舌や歯などの「破裂」や「打撃」によって発音することが多く「種火」になりやすいですが、それ以外の音の場合は、発声に唇や舌や歯などは使わないので「種火」にはなりにくいと言えます。
 次号以降、「濁音」以外の音でも、工夫次第で「種火」になり得る方法を説明していきたいと思います。お楽しみに。

本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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