【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第64回:ボイトレなのに発声練習をしない!?

良い声が出るための土台を作ろう

「発声練習がボイトレだと思ってたのにイメージが違う」

 先日、参加するコンテストの準備のために受講された女性の言葉です。ボイトレはボイストレーニングの略。ボイスは声なので、当然発声練習を行なうのがボイトレだと思いますよね。

 でも、私のボイトレレッスンでは、発声練習とは結果を出すところではなく、自分の声の状態を知るための「検査」のようなものだと捉えています。

 「検査」なので……体温測定で無理やり体温を下げようとしても意味がないように、発声練習で無理やり良い声を出そうとしても意味がないのです。

 そして何回も体温測定をしていても意味がないように、何回も発声練習のみを行なっても意味がないのです。それよりも、良い結果を得るための前準備に時間と労力をかけるべきです。

健康体=良い声の土台

 つまり発声練習をする前に「良い声が出るための土台」を作っておくのです。
 良い声が出るための土台? そのヒントは「声は健康のバロメーター」。

声が良い = 健康
声が良くない = 不健康

 健康体を目指せば、声も良くなるということです。すなわち「健康体」が「良い声が出るための土台」なのです。

 例えば、呼吸

 鼻が詰まっていると鼻呼吸がしにくくなるので、肺にも息が入りにくくなります。決して健康体とは言えない状態です。
 その結果、声帯を震わせてくれる息も弱くなるので、良い声は出なくなります。

【鼻が詰まっている場合】

 鼻が詰まっていると声にどのような影響をもたらすかというと……。

鼻が詰まっている

鼻呼吸がしにくい

肺に息が入りにくい

声帯を震わせる息も弱くなる

良い声が出ない

 ということになります。これを解決するために「口角を上げる」トレーニングをします。不思議に思われるかもしれませんが、これだけで鼻の通りは良くなり、呼吸が改善されるのです。

口角を上げる

鼻に息が通りやすくなる

肺に息が入りやすくなる

十分な量の息が声帯を震わせる

良い声を出せる

 といった流れで、顔のトレーニングは声の改善に役立つのです。
 このことからもわかるように、「良い声が出るための土台」の第一歩は「顔トレーニング」。発声練習を行なわなくても効果が出るボイトレメソッドと言えるのです。

【一石二鳥の「顔トレーニング」】

 先述の、コンテストの準備のために来られた生徒さんのレッスンですが….…声だけではなく容姿も審査基準になるとのことでしたので、まるで「美顔レッスン」かのように、「顔トレーニング」に時間を費やしました。

 顔トレーニングを行なうことで、顔も声も良くなる……本当に魔法のようなトレーニングです。

 見事、声は改善され、コンテストではグランプリを受賞され、成果を喜ばれたときの言葉が、「コンテスト当日までたくさん発声練習をしなければいけない……」と思っていたところ「顔トレーニング」と出会い、

・声を出さなくてもできる練習であること
・「顔」という普段から鏡を見てチェックしている価値観で声も良くなること

 というポイントが、

・声を出す時間がない
・声を出す場所がない

 と心配されていた生徒さんにとっての安心材料となり、「これなら毎日できそう!」と喜ばれていました。
 「声を出す時間がない」、「声を出す場所がない」はすべての人の悩みと言っても良いはず。実際に声を出さなくても効果が出る「顔トレーニング」は、問題解決の具体例と言えます。

 ところで「健康体」が「良い声が出るための土台」ということが理解できても、自分が健康体であるか、今どんなコンディションなのかは自分自身ではわからないものです。
 自分のコンディションがわかる方法として「鼻の通り」をお薦めします。

 つまり

【鼻の通りが良い = 健康体

鼻の通りが良い

鼻呼吸がしやすい

肺に息が入りやすい

【鼻の通りが悪い = 不健康】

鼻が詰まっている

鼻呼吸がしにくい

肺に息が入りにくい

 と言えます。
 また、その後、声帯に送り込む息の強さにより、

声帯の振動が変わり

声が出やすい、出にくい

 も決定していきます。

声の素振り練習に時間を費やすべきです

 野球やテニスの練習では、実際にボールを打つ練習の時間より「素振り」の練習の時間のほうが多いはず。声に関しても同じこと、「素振り」に練習時間を費やすべきなのです。

 今回ご紹介した「顔トレーニング」も「声の素振り練習」のひとつ、「声を出す時間がない」、「声を出す場所がない」という悩みの解決法になります。

 まずは「鼻の通りが良くなる」まで、口角を上げる練習を行なってみてください。


撮影:ヨシダホヅミ

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本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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