【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第67回:「通る声になりたい!」……マスクも使い方次第で味方になる!

「通る声」、「抜ける声」ならマスクをしていても聞こえます

 ここ最近はマスクをしない人も増えてきましたが、コロナ禍以降マスク着用での会話が基本でしたよね。でも正直、何を話しているのかわからない人も多いと感じています。

 マスクをしているから、わかりにくいのはあたり前と思われるかもしれませんが 、「通る声」「抜ける声」だったらマスクをしていても問題なく聞こえます。

 自分の声がいい声なのか? 「通る声」なのか? それとも「こもる声」なのか……自分自身ではなかなかわかりにくいものです。
 でもマスクというフィルターがあることで、 「通る声」か「こもる声」なのかを判断しやすくなります。マスクをしていても、はっきりと聞こえる人は「通る声」の持ち主と言えるでしょう。

 「大きい声」と「通る声」

 その違いがわかりにくいかもしれませんが、単なる大声の場合は、マスク越しでは声がつぶれてしまい、何を言っているのかますますわからなくなります。
 それに対して「通る声」は音量は小さくてもはっきり聞こえます。

「通る声」か「こもる声」かチェックしてみましょう

 それでは、あなたが「通る声」なのか、それとも「こもる声」なのか、チェックしてみましょう。

●マスクをして 「おはようございます」 と言ってみてください。
●次はマスクを外して「おはようございます」 と言ってみてください。

 マスクありとマスクなしで、その声の違いを比べてみてください。自分では判断できない人はスマホなどで録音して聞いてみましょう。

マスクありでもマスクなしと同じように聞こえる人は「通る声」の持ち主と言えます。
マスクありだとマスクなしと同じようには聞こえない人は「こもる声」の持ち主と言えます。

 どうでしたか? あなたは「通る声」の持ち主でしたか?

 残念ながら「こもる声」だった場合、 どうすれば「通る声」になるのでしょうか? その答えを知るためには、発声の仕組みを理解することが大切です。

声の「出口」を意識すると「通る声」を作りやすい

発声における支点と役割
始点 → 入口 → 声帯
終点 → 出口 → 口

 「声は声帯で作られる」という意識が強すぎて、声がこもってしまう人を数多く見てきました。発声の始点である声帯を意識することは大事なのですが、声の出口である「口」を意識したほうが「通る声」を作りやすいことを長年の指導の中で実感しています。
 まずは 終点(出口)である口にポイントを持っていくやり方をマスターしていただきたいと思います。

 簡単に言えば、「声は最終的には口から出て行く」ので、口先、それも上の前歯から声が出て行くことを強く意識するのです。
 それを可能にしてくれるのが、写真を撮ってもらうときにする「チーズの口」です。

 マスクの中で「チーズの口」をして、上の前歯に声を当てるように意識して「おはようございます」 と言ってみてください。
 次にマスクの中で口をあまり開けずに「おはようございます」と言ってみてください。

 先ほどの「チーズの口」のときのほうが 「通る声」だったはずです。

 最初は「チーズの口」を維持したまま、発音するのを難しく感じることでしょう。でも、プロのアナウンサーの口元を確認していただくと「チーズの口」を基本に発音されているはずです。

 やはり正確な情報を正確な日本語で伝えるための機能美と言えます。プロに近づくためには正しい機能を備えた口のフォームをモノにしてください。
 まずは鏡の前で「チーズの口」を維持したまま発音できるようにして、それからマスクをつけても同じことができるか挑戦してみましょう。

「蛍の光」と「赤とんぼ」でチェック!

 次は「歌編」です。
 例えば、「蛍の光」、「赤とんぼ」をマスクありとマスクなしで歌って比べてみてください。

「蛍の光」
ほたるのひかり まどのゆき
ふみよむつきひ かさねつつ

「赤とんぼ」
ゆうやけこやけの あかとんぼ
おわれてみたのは いつのひいか

 マスク着用での会話は不自由さを感じると思いますが「怪我の功名」にもなり得る、今回の練習法をぜひ実践してみてください。
 そして、マスクの有無にかかわらず「チーズの口」は、「通る声」というメリットと同等かそれ以上の「笑顔」という副産物も生んでくれます。
 話しているとき、歌っているときのあなたの顔が美しいということです。


撮影:ヨシダホヅミ

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本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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