【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第28回:日本語の濁音( ” )が、腹式呼吸に悩むあなたを救う!

 早速ですが、次の文章を読んでみてください。

「どなりのぎゃぐば よぐがぎぐうぎゃぐだ」

 ……意味不明ですよね。

 前号「濁音まみれメソッド」をやれば腹式呼吸は完璧になる!を読んでいただいた方には、早口言葉「隣の客は、よく柿食う客だ」(となりのきゃくは よくかきくうきゃくだ)を【濁音まみれメソッド】にしたやつでしょう、前回のおさらいね……と理解していただけると思います。

 【濁音まみれメソッド】で( ” )を付けられる音はすべて( ” )を付けて濁音にしてしまうと、最初は「言いにくい」かもしれませんが、それは本当に行なわなければいけない仕事を行なうからであって、その仕事に慣れてしまうと「声が出やすく」なります。

 「腹式呼吸」というと、肺活量を増やす……など、おもに「息の量を増やす」ことをイメージする人は多いと思いますが、それだけではダメです。
 なぜなら、ガスコンロで火をつけるときに「種火」が必要なように、肺から上がってくる「息」に「種火」で着火してあげないと「声」にはなりにくいからです。
 日本語の( ” )……すなわち「濁音」こそが「種火」の役割を果たし、気持ち良い「声」が出るようにしてくれます。そしてそのとき、初めて「腹式呼吸の完成」と言えるのです。

 私の行なっているレッスンでも 【濁音まみれメソッド】は画期的な成果を上げていて、ウォーミングアップを行なう生徒さんは、必ず【濁音まみれメソッド】で歌ってから【元の歌詞】で歌われます。

【濁音まみれメソッド(歌編)】

 お待ちかね、画期的成果を生んでくれている【濁音まみれメソッド「歌編」】を説明していきましょう! まずは卒業式でお馴染みの「蛍の光」で挑戦してみます。

「蛍の光」(作詞:稲垣 千穎 作曲:不詳/スコットランド民謡)

蛍の光 窓の雪
ふみ読む月日 重ねつつ
いつしか年も すぎの戸を
あけてぞ今朝は 別れゆく

(かなよみ)
ほたるのひかり まどのゆき
ふみよむつきひ かさねつつ
いつしかとしも すぎのとを
あけてぞけさは わかれゆく

【濁音まみれメソッド】
ぼだるのびがり まどのゆぎ
ぶみよむづぎび がざねづづ
いづじがどじも ずぎのどを
あげでぞげざば わがれゆぐ

 次は「赤とんぼ」に挑戦してみましょう。

「赤とんぼ」(作詞:三木露風 作曲:山田耕筰)

夕やけ小やけの 赤とんぼ
負われて見たのは いつの日か

(かなよみ)
ゆうやけ こやけの あかとんぼ
おわれて みたのは いつのひか

【濁音まみれメソッド】
ゆうやげ ごやげの あがどんぼ
おわれで みだのば いづのびが

山の畑の 桑の実を
小篭に摘んだは まぼろしか

やまのはたけの くわのみを
こかごにつんだは まぼろしか

【濁音まみれメソッド】
やまのばだげの ぐわのみを
ごがごにづんだば まぼろじが

十五で姐やは 嫁に行き
お里のたよりも 絶えはてた

(かなよみ)
じゅうごでねえやは よめにいき
おさとのたよりも たえはてた

【濁音まみれメソッド】
じゅうごでねえやば よめにいぎ
おざどのだよりも だえばでだ


夕やけ小やけの 赤とんぼ
とまっているよ 竿の先

(かなよみ)
ゆうやけこやけの あかとんぼ
とまっているよ さおのさき

【濁音まみれメソッド】
ゆうやげごやげの あがどんぼ
どまっているよ ざおのざぎ

注意点です。
●ゆっくりとしたテンポで歌う
●間違っても止まらない、言い直さない
●可能なかぎりメトロノームを使う

【濁音まみれメソッド】【元の歌詞】から
【濁音まみれメソッド】【元の歌詞】へ!

 最初は慣れないかもしれませんが、慣れてくるにしたがい、声も出やすくなってきます。そして【濁音まみれメソッド】でスムーズに歌えるようになったら【元の歌詞】で歌ってみてください。【濁音まみれメソッド】を行なう前より格段に声は出やすくなっているはずです。

 ただし、最初は【濁音まみれメソッド】で歌ったほうが、声も出やすく声量も出ているはず。
 これを【元の歌詞】での歌唱でも【濁音まみれメソッド】のときと同じように、声が出やすく声量も出るように工夫してみてください。

 「蛍の光」、「赤とんぼ」で慣れてきたら、あなたが歌いたい曲でも【濁音まみれメソッド】を取り入れて練習してみましょう。
 必ず、成果が出ますので頑張ってください。

本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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