【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第66回:「鼻声」は放置すると危険! 簡単な治し方教えます

2023.06.19

鼻声に気づくこと、一刻も早く治すことが大切です

 いよいよ梅雨に入り、エアコンをつける機会が増えてきたと思います。エアコンが効くようになると、部屋は乾燥してきます。その結果、鼻声になったり鼻の通りが悪くなったりといろいろトラブルが起こりやすくなります。

 長年ボイストレーニングの指導してきていますが、レッスンをしていて感じるのは、意外にも鼻声になっていても「自覚がない」人が多いということです。
 でも実は鼻声は身体からの大事な危険信号、「放置」していては危険です。

 鼻声になるということは、鼻腔や副鼻腔が炎症を起こしていて、気道が狭くなっているということ。つまりそのまま放置していると、ますます体内に酸素を取り込めなくなるということです。

 そして体内で炎症を起こしているということは、少なからず健康体ではなく一刻も早く元の健康体に戻さなければいけないのですが、通常より体内に入れる酸素量が減ると、さらに不健康な状態になり体調回復にも時間がかかってしまうのです。

 鼻声に気づくことが第一。次に一刻も早く「鼻声を治す」ことが大切です。

 それでは「鼻声を治せる処方箋」をご紹介したいと思います。

鼻声を治せる処方箋1:顔編

 突然ですが「ひょっとこの顔」をしてください。「ひょっとこのお面」のように口を尖らすのです。そして「ひょっとこの顔」をしながら鼻から息を吸ってみてください。
 やっている時間と正比例して、鼻の通りが良くなるのがわかると思います。

 「ひょっとこの顔」をすると口角が上がります。口角が上がると、鼻呼吸しやすくなるということです。
 実は「ひょっとこの顔」は「鼻声を治す」だけでなく「通る声」、「抜ける声」にするためにも有効です。「通る声」「抜ける声」にするためには、声帯を息でよく震わさなければならないのですが、「ひょっとこの顔」で鼻の通りが良くなると、体外から取り込む酸素の量が増えて声帯をよく震わせてくれるようになります。

 「ひょっとこの口」をする際に注意していただきたいこととしては、

・できるだけ前に口を突き出す
・口先を上に向ける
・しっかりと口先を閉じる

 この3点です。

 できれば1分間やっていただきたいのですが、慣れない間は1分間「ひょっとこの口」をキープすることはキツイはずです。最初は15秒、次は30秒というように少しずつ時間を伸ばしてください。

 この「ひょっとこの顔」は表情筋を鍛えることにも効果が高いので「美顔」に役立ちます。ぜひ毎日のルーティンとして取り入れて頂きたいと思います。

鼻声を治せる処方箋2:筋膜リリース編

 アゴの付け根から鎖骨に向かって、首筋を親指と人差指で優しくつまんでみて、「ここ痛いな」と感じるところを優しく揺らしてみてください。

 筋肉と筋肉の間にある筋膜を剥がしていくイメージです。決して強い力で行なわないでください。揉んだり押したりせず、優しく震わせてください。

 どうですか? しばらくすると、鼻の通りが良くなってくるはずです。

 首筋の筋肉は、顔の筋肉に繋がっているので、首筋の筋肉をスムーズにすると鼻の周囲の筋肉の動きもスムーズになり鼻腔が広がるからです。そして鼻腔が広がると、息が通りやすくなるので、「鼻の通りが良くなる」のです。

 また、首筋の筋肉は声帯の周囲の筋肉にも繋がっているので、首筋の筋肉の動きをスムーズにすると、声帯の周囲の筋肉の動きもスムーズになり、声も出やすくなります。

 今回は「鼻声を治す」ための処方箋をふたつご紹介しました。

 「1:顔編 」は少し厳しいトレーニングと感じるかもしれませんが、「筋肉はウソはつかない」です。あなたが歌うときや話すときに必要な筋肉が、自然に働いてくれるようになります。
 あなたの「歌う顔」、「話す顔」の機能美にも大きく貢献してくれます。効果を出すための、いわば「ムチ」です。

 「2:筋膜リリース編」は、キツさは一切なく「楽」です。効果を出すための、いわば「アメ」です。   

 「アメとムチ」をうまく使い分けて「鼻声」から抜け出してください。


撮影:ヨシダホヅミ

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本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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