【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第69回:巷に溢れるウソの「腹式呼吸」をやめれば「力み」、「緊張」から解放される!

精神的な部分で解決しようとせず、フィジカル面からアプローチを!

 今まで、数多くのテレビのオーディション番組の審査員やボイストレーナーを務めてきましたが、
うまくいかなかった人の反省の弁として、

「力んでしまった」
「緊張してしまった」

 ….…が多かったです。

 なので問題解決の方法としては、次回のオーディションまでには「力まないように」、「緊張しないように」そして「メンタルが強くなるように」鍛えてきて……ということになるのですが、果たしてその方法で本当に目的を達成することはできるのでしょうか?

 私には、それはとても難しいことのように思えます。
 同じ人が次のオーディションで、同じように「力んでしまった」、「緊張してしまった」と反省の弁を述べているのを数多く見てきたからです。

 そう、精神的な部分での解決はなかなか難しいです。
 なぜなら、精神的な部分は「見えにくい」ので、敗因もわかりにくく具体的な解決策を講じることが難しいからです。

 一方、フィジカルは「見える」ことが多いので、敗因がわかりやすいと言えます。

 「力んでしまった」、「緊張してしまった」……というメンタル面と思える問題を「見えやすい」フィジカル面からのアプローチで解決できれば、救われる人も多いではないでしょうか?

呼吸は良くなれば、リラックスでき、緊張から解放される

 「練習は嘘はつかない」と優れたアスリートの方が言うのをよく聞きますが、これも「フィジカルでメンタルを克服」するひとつの成功例から来ていると思います。

 ところで「フィジカルでメンタルを克服」ってそんなことできるの?
 ……疑問に思えますよね。

 では、緊張時のことを考えてみてください。

・緊張する → 息苦しくなる
・息苦しくなる → 緊張する

 緊張している時、呼吸は不安定。また呼吸が不安定だから、さらに緊張していく……悪循環になっていくはずです。

 では逆にリラックスできているときでは、

・リラックスしている → 呼吸は安定している
・呼吸が安定している → リラックスしている

 ……という好循環になってるはずです。

 つまり「呼吸が良くなればリラックスでき、緊張から解放される」のです。

腹筋に力を入れるクセを改善する

 では具体的には、どんなことをやれば、呼吸も良くなりリラックスできるのかを説明しましょう。

 問題解決は意外にシンプル。

「腹筋に力を入れるな」です。

 つまり、「力んでしまった」、「緊張してしまった」の肉体的な原因は「腹筋に力が入ってしまった」なのです。

 えっ! ボイストレーニングと言えば、
 「腹筋を鍛えて」
 「腹筋を引っ込めて」
 だと思うし、ボイストレーナーの先生からもよく言われる……という人が多いと思います。でも、腹筋に力が入ると横隔膜が動かなくなり、自然な呼吸ができなくなってしまいます。
 そう、呼吸がしにくくなる、そのような「腹式呼吸」は「ウソの腹式呼吸」と言えるのです。

 本当にそうなのか、実験してみましょう。

①腹筋に力を入れて「深呼吸」してみてください。
②腹筋に力を入れずに「深呼吸」してみてください。

 どうですか? ①と②と、どちらが深呼吸しやすかったですか? 
 間違いなく②の腹筋に力を入れなかったほうだったはずです。

 前回、「深呼吸」の大切さを説明していますので参考にしてください。

 「深呼吸」こそが自然呼吸の基本であり、とても重要な呼吸であることは万人が認めるところであるはず。息苦しくなったとき、精神的にキツくなったときの救世主のような存在、それが「深呼吸」だからです。
 なので深呼吸ができなくなる「お腹に力を入れる」行為こそが、「力み」や「緊張」を生み出していると言えるのです。

 したがって、
 「お腹に力を入れる」
 「腹筋を引っ込める」
 ……という「クセ」を改善すれば、「力み」や「緊張」から解放されるということになります。

腹筋に力を入れないための処方箋を次回で!

 では、どうやったら、腹筋を引っ込めてしまう「クセ」を改善できるのか?
 次回以降、具体的な練習方法などの処方箋をお出ししていきたいと思います。

 まずは、好きな曲を、上記の①と②の練習のように、「腹筋に力を入れる」、「腹筋に力を入れない」で歌ってみて、「腹筋に力を入れない」ほうが歌いやすいことを実感、そしてその気持ち良さを楽しんでみてください。


撮影:ヨシダホヅミ

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本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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