【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

【ボイトレ】「声は引っ込んでしまう」で悩んでいる人、こうすれば解決できますよ!/連載「ボイトレの???(ハテナ)にこたえる声と歌の小泉クリニック:第103回」

声はどこで作られ、どこから出ていくか?

 突然ですが、質問です。

「声はどこから出ますか?」

 多くの人は「口です」と答えられるはずです。
 そうです。そのとおりです。でも歌っているとき、本当にその意識を持って発声できているでしょうか?

 ではもうひとつ質問です。

「声はどこで作られますか?」

 この質問に関しては、少々悩む人も出てくると思います。

 答えは「声帯」です。
 肺からの息が声帯を震わせ声を作り、そのあと口の中で響きを増幅させてから、声は口から出ていきます。

声の「始点」と「終点」をサックスでイメージしよう

 サックス(サクソフォン)をイメージするとわかりやすいです。肺からの息でマウスピースにあるリードを震わせて、それをサックスの菅の中で増幅させて、菅の先端部分から出ていきます。

肺からの息

声帯=リード(始点)

菅の先端部分=口(終点)

 ということになります。

 サックスの場合は、自分の身体の一部ではないので、その構造や役割を客観的に判断できるのですが、自身の体内で行なわれていることは客観的に捉えることが難しくなってしまいます。
 この事実が「発声」という行為を難しくしてしまっているのです。

 それにもうひとつ、

サックスの「始点」→リード
発声の「始点」→声

 サックスの「リード」は見えるのに対して、「声帯」は見えない、これも客観的に発声を捉えることが難しい要因になっています。

 でも「終点」に関してはどうでしょうか?

サックスの「終点」→菅の先端部
発声の「終点」→口

 発声の始点である声帯は見えなかったのに対して、終点である口は見えるのです。なので、「始点である声帯」に比べて「終点である口」は、客観的に捉えやすいと言えます。

 「声帯を客観的捉える」ためには、どうしたら良いか? 
 それは「口の役割」を明確にするということです。

 「口の役割」とは「着火」です。

 ガスライターやガスコンロをイメージしていただくとわかりやすいと思います。
 ガスが放出されただけでは着火することはできなく、着火石が弾かれ「種火」がついてこそ着火できるのです。

 同じことが発声にも言えます。
 肺からの息だけでは発声は不完全、口で「種火」が作られてこそ、発声は完結されるのです。

口で「種火」を作るために「ぼ」と「ぽ」を使う

 では具体的に、口でどのようにすれば「種火」ができるのか、それは「ぼっ」という音の発声です。
正しく種火に着火する時の音と同じです。下記の記事を参照してください。

小泉クリニック 第21回:「着火剤メソッド」で声は力強く、そして心は熱くなる!

 まずは挨拶から。

・こんにちは
・おはようございます
・おつかれさまです。
・よろしくおねがいします

 これらの頭の音を「ぼ」に変えて発音してみましょう。

・ぼんにちは
・ぼはようございます
・ぼつかれさまです
・ぼろしくおねがいします

 「ぼ」に加えて、「ぼ」でも試してみてください。

・ぽんにちは
・ぽはようございます
・ぽつかれさまです
・ぽろしくおねがいします

 今まで、このメソッドを多くの人に指導してきていますが、「ぼ」より「ぽ」のほうが「種火」を作りやすいという人もいます。

 自分は「ぼ」か「ぽ」か、どちらのほうが「種火」を作りやすいか、把握しておくことも成果を上げるためには重要な要素になります。

 「得意」な方を練習すれば良いのです。わざわざ「不得意」な練習をする必要はないのです。

 ここで重要なことは「録音する」ということ。

 リアルタイムで、練習の成果を理解できれば良いのですが、客観的に捉えることを考えても最初は録音して聴いてみることをお薦めします。

「種火メソッド」を聴き比べてみよう

 挨拶でうまく「種火」が作れるようになったら、次は歌いたい曲でも挑戦してみてください。
 歌詞カードのそれぞれのフレーズの頭の音を「ぼ」もしくは「ぽ」に変えて歌うのです。これも録音することをお薦めします。

 普通の歌詞と「ぼ(ぽ)」から始めた歌詞で歌ってみたものを聴き比べてみてください。

 腹式呼吸で肺活量を大きくするだけでは、気持ち良い声を出すことは難しいです。肺活量が必ずしも大きくない人も、この「種火メソッド」でタイミングを良くすることで、発声の効率が上がり、気持ち良い声が出るようになります。

 下記、私と私の生徒さんが、実際に「種火メソッド」を実践していますので、ぜひ参考にしてみてください。

[謎解きボイトレ]「声が引っ込んでしまう」を解決!ヒントはガスコンロ&ガスライター

本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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