【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

【ボイトレ】目を閉じて歌っているあなた、今すぐやめましょう!/連載「ボイトレの???(ハテナ)にこたえる声と歌の小泉クリニック:第98回」

目を開けて歌うほうがメリットは大きい!

 突然ですが、歌うときにあなたの目は開いていますか? それとも目は閉じていますか?

 目を閉じて歌っている人、今すぐ「目を開けて」ください。そのままでは気持ちよく歌えないからです。

 それにしても目を閉じて歌う人って多いような気がします。
 目を閉じると集中力が増す、歌詞の世界観が広がる……などと、その人なりのメリットを感じているのかもしれません。
 しかし、目を閉じた状態で歌うことはデメリットのほうが大きいと言えてしまうのです。
 なぜなら、目を閉じた状態は、目を開けた状態よりも空気を体内に取り込みにくい状態と言えるからです。

 詳しく説明していきましょう。

メリット1:目を開けると鼻呼吸がしやすい

 声の動力源は肺にある空気です。
 声帯を震わせるための空気が多ければ多いほど、力まずに通る声を出すことが可能になります。なので、多くの空気が肺にあったほうが良いのですが、もともと肺には空気がないので「息を吸って」体外から取り込まなければいけません。

 このときの呼吸法としては、喉の渇きを防ぐ、雑菌の体内への流入を防ぐ……などのメリットがある「鼻呼吸」をお勧めしています。

 つまり「鼻呼吸がしやすい=声が出やすくなる」ということが言えるのです。

 では、鼻呼吸と目を閉じることが、どんな関係が?と思われると思いますが、実は大きな関係があります。

 実験して確かめてみましょう

 「目を閉じた状態」と「目を大きく見開いた状態」で、どちらが鼻呼吸しやすいか比較してみてください。

 どうですか?

・目を閉じる → 鼻呼吸しにくい
・目を開ける → 鼻呼吸しやすい

 と思います。

 大きく目を見開いたほうが、鼻呼吸がしやすいので、肺に送られる空気の量も増え、声帯もよく震えるようになるので、声も出やすくなるのです。

・目を閉じて「アー」と発声
・目を大きく見開いて「アー」と発声

 と比較してみてみると違いがわかるはずです。スマホでも良いので録音して聴いてみてください。

メリット2:鼻腔が広がって共鳴を得られる

 目を開けて歌うことのメリットはまだあります。

 目を見開いた状態では鼻腔が広がるので、息が吸いやすくなる「体内への入口」としてのメリットが生まれますが、声が出るとき、すなわち「体外への出口」としても大きなメリットをもたらしてくれます。

 目を閉じたときより鼻腔が広がるため、鼻腔の中でより大きな響きを作り出してくれるのです。
 いわゆる「共鳴」を得られる、声楽などでよく言われる「頭のてっぺんから声が出る」という成果を生み出してくれるのです。

 しかしながら、やってみるとわかると思いますが、目を開け続けて歌うことは意外に難しいものです。歌う以前に、目を見開いた状態でキープすること自体が難しいはずです。

 なので、まずは歌わずに目を見開いた状態をキープできるようにトレーニングしてみてください。このとき、必ず鏡を見ながら、またはスマホのカメラで顔を見ながらやることをお勧めします。

 最初は1分、それから2分、3分と伸ばしてみてください。

 次に歌いたい曲を「声を出さずに」目を見開いた状態で歌ってみてください。

メリット3:歌うフォームが確立できる

 通常プロのアーティストがプロモーションビデオを撮影する際には、ヴォーカリストは実際には声を出さずに「リップシンク」といってレコーディングされた音源と同じ口の動きをしながら「歌い」ます。バンドが行なういわゆる「当て振り」を歌でも行なうのです。

 この「リップシンク」を行なうためには、「歌うフォーム」すなわち顔や口、そして目のフォームが決まっていないとできません。
 そしてプロモーションビデオを観ているとわかると思いますが、プロのヴォーカリストの場合、目を閉じて歌っている人は少ないはずです。
 ぜひこれを機に「リップシンク」、そして「歌うフォーム」を確立してみてください。

 「相手の目を見て話す」……日常のコミュニケーションにおいての価値観は歌の中でも同じなはずです。

 「伝えたい!」という気持ちを持って歌いたいなら、目は閉じるべきではありません。

 目を閉じて歌い続けると「自己陶酔」に見える危険性もあります。
 目は大きく開けて歌ってみましょう。そのほうが「伝わる」はずです。


撮影:ヨシダホヅミ

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本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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