【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

【ボイトレ】緊張に打ち勝てる簡単な方法、教えます!/連載「ボイトレの???(ハテナ)にこたえる声と歌の小泉クリニック:第94回」

「緊張に効く処方箋」とは?

 ライブ、オーディション、レコーディングなどの「本番」を迎えると緊張してしまい、「普段通りの力が出せなかった」……という経験を持つ人は少なくないと思います。

 「緊張して声が出なくなる」、さらに「声が出なくなる」を通り越して、「酸欠」になってしまった……という話も聞いたことがあります。人間だから仕方のないことかもしれません。
 でも、「本番になると緊張してしまうんだろうな」というトラウマを持ちながら練習しても、成果を上げることは難しいと思います。

 なんとか緊張に打ち勝ち、本番でも実力を発揮したいですよね。
 実は「逆転の発想」で、緊張に打ち勝てる方法があるのです。

 今回は「緊張に効く処方箋」です。

 「食べること」、「寝ること」……これらは生命維持において不可欠なものですが、実は生命維持において、これら以上に重要なものがあります。

 それは「息をする」、すなわち呼吸です。健康体では3日間くらい食べなくても寝なくても、生命は維持できると言われています。

 それに対して呼吸はどうでしょう?

 呼吸ができなくなると、数分もたたないうちに生命維持できなくなるはずです。そう、生命維持において呼吸は最も重要と言えるのです。

緊張したら「声を出す!」

 ライブ、オーディション、レコーディングなどの「本番」においても当然「呼吸」は大切。「本番」での緊張下では、平常時より呼吸が不安定になっている可能性が高いのです。

 なので、「呼吸を平常時に戻す」ことが「精神も平常時に戻す」ことに繋がるのです。

 緊張下の「緊張している」「呼吸が不安定になる」を逆転させて、
 平常時の「呼吸が安定する」「緊張しなくなる」にすれば良いということです。

 しかしながら、「呼吸が安定する」重要性がわかったとしても、具体的にはどうすれば良いのかがわからないと仕方ないですよね。

 そこで本日の処方箋の登場です。

 それは「声を出す」 です。

緊張下の「緊張している」「呼吸が不安定になる」「声が出にくくなる」を逆転させて、
平常時の「声を出す」「呼吸安定する」「緊張しなくなる」ということになるのです。

 他の動物と同じく人間は、酸素がなくては生きていけないので、酸素を体内に取り込む必要があります。
 緊張下においても酸素を体内に取り込むことは重要なので、緊張している人に対するアドバイスとして「大きく息を吸って」と深呼吸が薦められることがあると思います。

 確かに深呼吸は効果があると思います。ただ、それは歌う前の準備の段階の話です。いざ歌い始めたら深呼吸はできません。

 でも歌うことは「声を出すこと」、それを「できるだけ大きな声を出すこと」にするのです。「声を大きく出すこと」が「息を大きく吐き出すこと」に繋がるのです。

 呼吸において「息を吸うこと」は意識しやすく、酸素を体内に取り込むんでいる実感はあると思います。
 では「息を吐くこと」はどうでしょう?
 誕生日のケーキのロウソクの火を消すときくらいしか、息を吐く行為をすることはないのではと思います。

 「息を吐く」ということは「体内の二酸化炭素を排出している」ということ、すなわち、

「息を吸う」 = 「酸素を体内に取り入れる」
「息を吐く」 = 「二酸化炭素を体内から排出」

 ということが実際には行なわれているのです。

二酸化炭素を排出して、酸素を体内に取り込む

 「息を吸うこと」に比べると「息を吐くこと」の意識は低いと言えます。でも、実は我々が声を出しているときは、二酸化炭素の排出を行なっています。
 しっかりと大きな声で歌えると、二酸化炭素を大量に排出できているということになるのです。

 二酸化炭素を出せば、それと同等の酸素が体内に入ってきます。

 部屋の換気を考えてみましょう。
 例えば窓の下部に扇風機をセットして、外に向かって部屋の空気を排出すると、窓の上部から空気が部屋に入ってきます。

 呼吸もこの部屋の換気と同じです。
 体内の二酸化炭素を排出すると、代わりに酸素が体内に入ってくるのです。これが普段我々がブレスを意識しなくても呼吸ができているメカニズムです。

 それに対して人前で話す、歌うなどの本番においては、緊張で声が出しにくくなったりするので、普段より酸素が体内入りにくくなり、体内における酸素と二酸化炭素とのバランスが崩れます。
 その結果、脳に送られる酸素の量も減ってしまい、ますます緊張していきます。

 緊張時でも自然な呼吸を確保するためには、声をしっかり出すことを心がける必要があります。そうすれば二酸化炭素が体内から排出されるので、代わりに酸素が体内に入って自然呼吸が可能となります。体内の酸素が確保できるため、精神も落ち着きやすくなります。

緊張時こそ、しっかりと声を出すことを心がけてください。
歌の最初のフレーズをしっかりと声を出せれば、その後は落ち着いてきます。

  ぜひ、意識してみてください。


撮影:ヨシダホヅミ

小泉誠司のレッスンを受けてみよう!

 リットーミュージックが運営するオンライン・ヴォーカル・レッスン『歌スク』に小泉誠司が参加中。無料体験レッスン(1回のみ25分)も行なっていますので、まずは『歌スク』のサイトにアクセスしてください。

小泉誠司のプロフィールページ、レッスン詳細などはこちら!
https://uta-school.jp/teacher/detail/8

2024年1月12日(金)、16日(火)、23日(火)、26日(金)にレッスン空き枠あります!

本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

本コラムの記事一覧

その他のコラム

最新情報

ヴォーカルや機材、ライブに関する最新情報をほぼ毎日更新!