【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第74回:「忙しくて練習時間がない」と言い訳をする前にコレをやってください!

2023.08.14

上達する人は時間がない中でも「できること」をやっている

「帰宅が夜遅くになってしまい声が出せない」
「忙しくて練習する時間がない」

 ……思うように成果が出ないとき、このような「言い訳」をされる方を見かけます。でも、上達できている人だけが、特別に時間が有り余っているのではないです。時間がない中でも、「できること」に集中して結果を出しているのです。

「できること」とは「よく聴く」ことです。

 「よく聴く」は通学や通勤の途中の電車やバスの中でもできます。夜遅くなっても、部屋でヘッドホンで聴くことができます。

 付け加えると、「よく聴く」ことは、「本当は声を出して練習したい」のに、それができないから「仕方なくやる練習」ではありません。

「よく聴く」ことこそが「本当の練習」なのです。

 例えば美味しい料理を作ろうとしたら、美味しい料理を味わうこと、舌でその味を覚えることが必須のように、歌においても同じことが言えます。

 音楽においても、たとえばギタリストが上達する上で必ず行なっていることは「コピー」。
 いきなり弾き出すのではなく、まずはプロのギタリストの演奏をよく聴いて、それを聴き取っていく……。その上で、やっとギターを手に取って弾き始めることができるのです。

 でも、歌においては多くの人が「いきなり歌う」ことをされているように思います。

 カラオケなどで、画面に歌詞の「字幕」が演奏に沿って流れていくのに慣れていて「曲を覚えている」と勘違いしてしまっていることも考えられます。

 事実、私が行なっているレッスンの生徒さんに同じ課題曲を出しても、オリジナル通りに曲を覚えられている人は、ほんの数パーセントの方しかいないです。

 美味しい料理を食べたことがない人が、美味しい料理を作るのは不可能なように、歌もうまい人の歌を「本気で」聴くことをしていない人が、本当にうまい歌を歌うことは難しいです。

 逆の言い方をすれば、うまくなるには「よく聴く」ことをすれば良いのです。

 「今週は忙しくて、全然声を出して練習できませんでした。その代わりに、移動中の電車の中で必死に曲を聴きました」

 ……そんな人が上達しているのです。

 「あっ、その曲は知っています。何度も歌っています」と思っている人、歌うことばかりをしている人……そんな人は危険です。

「知っているはず」のその曲をもう一度「よく聴く」ようにしてください。

よく聴くことで「歌詞カード」の欠陥に気づくことができる

 そして「よく聴く」ことに慣れると「歌詞カード」の欠陥に気づくことができるはずです。

 欠陥とは「母音の欠如」
 歌詞カードでは、母音は書かれていないのです。

 例えば実際の歌では、「ああ いい うう ええ おお」と歌われていても、歌詞カードには「あ い う え お」としか書かれていません。

 つまり歌詞カードは、いわば「暗号」のような簡略化された情報しか記載されていないということです。

 ちなみに「あ い う え お」のまま発音していると、音が切れ切れになってしまい、ロボットのような不自然な感じになってしまいます。

 「よく聴くこと」、そして「何をよく聴けば良いのか?」は下記を参考にしてみてください。

 「よく聴く」練習の大切さを理解できると、あなたの通勤や通学時間が楽しくなってくるはずです。「よく聴く」ことができる絶好の時間だからです。ぜひ「よく聴く」を実践してみてください。


撮影:ヨシダホヅミ

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8月23日、24日、31日にレッスン枠がありますので、ぜひ受講してみてください!

本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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