【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第55回:「音痴」という言葉はやめよう!

私は「音痴」という言葉が大嫌いです

 歌や声に悩みを持つ方が、私が行なっているレッスンには来られますが、やはり「音程」にまつわる悩みを持つ方が多いです。

 「音痴」で悩みを待つタレントを、数時間のうちに音程を改善させカラオケの点数も20点近く上げた、私が出演したテレビ番組での成果に、「音痴は治らない」と諦めかけていた人も「ここなら」とレッスンに来られています。中には「このまま音痴のまま一生終えるのは嫌」と深刻に考えられている方もいらっしゃいました。

 ちなみに私は「音痴」という言葉が大嫌いです。この言葉を不用意に使ってしまうばかりに、トラウマになるほど悩まれる人もいるからです。

 人間である限り、少なからず音程は不安定なのもの、人のことを「音痴」と言っている人も実は「音痴」なのです。カラオケで満点取れる人がいないということが、音程が完璧な人はいないという証拠です。

「音程が悪い」=「フラットしている」という方程式は成立しない

 ところで音程が合っていない場合、「音程が低い」、「フラットしている」と言われた経験がある方は多いと思います。

 「フラットしている」は音程が低いこと 、「シャープしている」は音程が高いことを指す表現ですが「音程が悪い」=「フラットしている」だと思い込んでいる人が多いです。

 「音程が悪い」=「フラットしている(音程が低い)」という方程式は成立しませんし、音程がシャープの(高い)場合も多くあります。

 実はこれは歌っている人自身に限らず、音程が合っていないと指摘する人たちにこそ多い誤った指摘です。

 私のレッスンでスケール練習を行なうと、音程がフラットではなくシャープしている人も多くいます。音程に自信のない人は、頻繁に音程のことを指摘されてきていることが多く、その都度フラットしていると言われると、常に「音程を上げなきゃ」と意識してしまっているように思います。

 本当は下げなければいけないときでも、逆に上げようとしてしまい、ますます音程が合わなくなってしまうのです。

 音程が合わない、合いにくいと思った時ときや合っていないと指摘されたときは、高いのか? 低いのか?をまずは自分自身でよく聴くこと、そして自分でわからなかったら指摘した人に「音程、低いですか? 高いですか?」と聞いてみてください。

 適切なアドバイスを聞くようにしましょう。 一番怖いことは「音痴かもしれない」、「音痴だと思われたら困る」というようなネガティブなイメージを持ってしまうこと。

 少々音が外れても怖がらないことです。
 なぜなら人間である限り、完璧はないのです。プロでさえ外れることはあります。

 ここで必要なことは「事実」を冷静に受け止めること、そしてその原因を理解することです。 やり方が間違ってしまったら、結果(この場合は音程)はやはり正解にはならないのです。

 アドバイスする方も、フラットしているかシャープしているかを正確に伝えるべき、ぜひ正しい知識の上でアドバイスをするよう心がけていただきたいと思います。

 なぜならそのひと言が、言われた人にとってはトラウマになり、一生音程に不安を持ち続けるかもしれないからです。

音程を合わせていくヒント=低い音から近づける

 ここで、音程を合わせていくヒントをお教えしたいと思います。
 音程が合っていないと思ったり、そのように指摘されたら、出したい音程より低い音程から声を出してその音に近づけるようにしてください。

 ギターのチューニングをする際、合っているのかどうかわからなくなったら、一旦低い音程に落としてから徐々に音程を上げていくと音を合わせやすいことを経験される方も多いと思います。

 ギターのチューニングで言えることは歌の音程にも言えます。人は「高い音程」は「わかりにくくなる」傾向があります。低い音程のほうが「わかりやすい」のです。

 なので、歌っていて「なんか音程合っていないような気がする」と感じるとき、おそらくあなたが出している音程は元の音程より高い可能性があります。

 「なんか音程合っていないような気がする」と感じるときは、ぜひ低い音程から徐々に上げて音程を合わせていくように試してみてください。

 ここで、最初から完璧な音程を求めていくことにはこだわらないでください。最初は音が上がっているか下がっているか、感じることができることでも進歩です。
 焦らずあなたの耳を信じてあげてください。


撮影:ヨシダホヅミ

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本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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