【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第60回:あなたの声、通っていますか?

2023.05.8

プロとアマの違い=「声量」の差を詰めていく

 歌において「声量」という価値観は重要な要素になります。
 事実、プロとアマでは声量には大きな違いがあるので、その差を詰めていくことが、プロのレベルに近づいていくヒントにもなります。

 しかしながら、コンサートやライブでプロの声に接することはあっても、マイクを通していないプロの「生声」を聴く機会はほとんどなく、プロとアマの声量を明確に実感できる人は多くないはずです。

 なので、私が行なっているレッスンでは開始時に、まずは私の声量をプロの声量のひとつの目安にして練習に励んでいただくのですが、なかなかプロの生声に接する機会を持てない方も多いと思いますので、プロの実力に近づける別の価値観を提示したいと思います。

プロの実力に近づける価値観「声の質」

 その価値観とは「声の質」、わかりやすく言うと「あなたの声は通っているか」どうかです。

 歌に限らず、日常会話や仕事中での声の質でもあります。

 例えば飲食店で注文したくて「すみません」と、店員の人に声を掛けるが、なかなか気づいてもらえない……。こんな経験のある人は多いのではないでしょうか?

 私のレッスンには、プレゼンや講演、日常会話においての声の改善を求めて来られる方も多いのですが、「声が通らない」という具体的な悩みを持つ方が少なくありません。実生活において、歌以上に深刻な問題と捉えている方が多いのです。

 そんなに大きな悩みにはならない、と思われるかもしれませんが、これが大事なデートの場面ではどうでしょうか?
 飲食店でオーダーしようと「すみません」と言うが伝わらない。声だけの問題ではなく、人として男として「弱々しい」と相手に思われてしまう……。

 また、プレゼンで上司やクライアントから何度も聞き返される……。これでは大事なチャンスを逃してしまいます。

 これらの例ははっきり言って「マイナス」です。

 聴いたことがないプロの声量をイメージして練習するより、「通る声」は、より現実的で実践的な価値観だと言えます。

 要は「通る声」になれば良いのです。

魔法のメソッド「人差し指発声法」

 ところで、私はテレビのオーディション番組で、ボイストレーナーとして数多くのレッスンを行なってきました。

 オーディションに自ら応募してくる歌自慢の人たち……。さすがに歌はうまい人が多いのですが、声に関しては「抜けていない」、「通っていない」、「こもっている」……という問題点を持っている人は少なくありません。

 オーディションでは、短期間に短時間で成果を出さなければいけません。
 そんなギリギリの現場で画期的な成果をあげている、私が編み出した魔法のメソッド「人差し指発声法」をお教えしたいと思います。

 方法はいたって簡単!

「上の前歯に人差し指を当てて声を出してみる」

 たったそれだけです。

 例えば「おはようございます」と、上の前歯に人差し指を当て、その人差し指に「声を当てるように」声を出してみましょう(消毒用アルコールで手指を消毒してから行なってください)。

 どうですか? 声が出やすく、声が通るようになってはいないでしょうか?

 このとき、注意していただきたいのは、できるだけ「速く」発声することです。ゆっくりでは効果は出ません。そして、イメージだけでは効果は出ません。
 必ず自分の人差し指を上の前歯に当ててください。

 効果がわかりにくい場合は、スマホでもOKなので、

・前歯に人差し指を置いて発声したとき
・前歯に人差し指を置かずに発声したとき

 それぞれの声を録音して聴き比べてください。

声帯で発声する意識が強過ぎて「声が抜けていない」

 発声する上で重要なふたつのポイントがあります。

「始点」→ 声帯
「終点」→ 口

 声帯で発声するイメーシが強過ぎると、逆に声帯に負担がかかり過ぎて、声帯がうまく震えず声が出にくくなります。

 そんなときは、もうひとつのポイントである「終点」→口を意識して声を出すことで、声帯が本来の働きをしてくれるようになります。

 ところが皮肉なことに、歌を歌う人に限って、声帯で発声する意識が強過ぎて「声が抜けていない」場合が少なくないです。

 声帯に負担を掛け過ぎると、声帯本来の仕事をしてくれなるばかりか、声帯を傷める危険性も出てきます。
 人間と同じです。プレッシャーを掛けられ過ぎると、そのプレッシャーに潰されてしまって本来の仕事ができなくなるのと同じなのです。

 「人差し指発声法」は短時間で、「声が抜ける」、「声が通る」ようになり、声帯を傷めるリスクも減るので、絶対にお薦めします。

 私の著書『人生を変える 勝ち声 負け声』の149ページで詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてください。

『人生を変える「勝ち声」「負け声」』あなたを救う「声の法則」教えます!

小泉 誠司(著)
定価1,650円 (本体1,500円+税10%)

詳細はこちら
https://www.rittor-music.co.jp/product/detail/3119317103/


撮影:ヨシダホヅミ

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 リットーミュージックが運営するオンライン・ヴォーカル・レッスン『歌スク』に小泉誠司が参加中。無料体験レッスン(1回のみ25分)も行なっていますので、まずは『歌スク』のサイトにアクセスしてください。

小泉誠司のプロフィールページ、レッスン詳細などはこちら!
https://uta-school.jp/teacher/detail/8

本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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