【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック
小泉 誠司
ニューベリーサウンド
睡眠時は無意識に腹式呼吸を行なっている
前回では、腹式呼吸をマスターするには、「無意識が大事」と、腹式呼吸のコツをご説明しました。
今回は具体的に「無意識に腹式呼吸ができるようになる」ための練習方法をご説明したいと思います。
犬を始め多くの動物は腹式呼吸を行なっています。それに対して人間は腹式呼吸を行なうことが難しい動物と言えます。
しかしながら、四つん這いで歩いていた我々の先祖の類人猿や原人は、腹式呼吸を行なっていた可能性が高いと考えられます。
<理由1>
四つん這いで歩いていると肺から気管、気管から口への導線が水平に近い状態なので、肺からの息の排出、肺への息の吸入が容易になることにより、必然的に肺の奥にまで息が入る腹式呼吸になる。
<理由2>
現在の人類に比べて、より野生的、他の動物に近い存在であり、意識して呼吸や発声を行なっていなかったと言えます。
前回でも説明しましたが、現在の人間においても、唯一と言える腹式呼吸を簡単に行なっている「赤ちゃん」という存在も、やはり「意識せずに」呼吸や発声を行なっているので、類人猿や原人も「意識していない」ことが腹式呼吸を行なっている要因になっていると考えられるのです。
可能なことなら赤ちゃんに戻って、腹式呼吸をマスターしたいところではありますが、それは無理なので、別の方法を。
それは「睡眠時」です。
大人であっても腹式呼吸ができている可能性が高いのです。このときは動物に戻り、赤ちゃんに戻り、腹式呼吸を行なっているのです。
先の類人猿や原人の説明でもあるように、体勢が「水平」であることが、腹式呼吸をするには適していると言えるので、仰向けで寝るときの体勢は理想的と言えます。
毎晩寝る前に「腹式呼吸」をチェックしよう
ベッドの上で仰向けになって普通に呼吸してみてください。
呼吸するたびにお腹が上下するはずです。もっとわかりやすくするためには、自分のお腹の上にスマホや単行本など、あまり重くないものを乗せてチェックするのも良い方法です。
お腹の上の物が上下に移動していれば、あなたは腹式呼吸をしていることになります。この感覚を「頭」ではなく「身体」で覚えてください。
自然に息が出ていき、自然に息が入ってくる感覚が身についてきたら、今度は息を吐く代わりに「フー」と声を出してみましょう。
息を吐くことと近い声である「フー」で息を吐くときと同じ感覚で発声できるようになったら、「アー」と発声してみましょう。
大切なことは「息を吐くように声を出す」ことです。「声を出す」意識が強過ぎると、いつもの腹式呼吸ではない発声に戻ってしまいます。
NG : 声を出す > 息を吐く
OK : 声を出す = 息を吐く
でなければいけないのです。
この段階で「NG : 声を出す > 息を吐く 」になる可能性は強いので、わからなくなったら、最初の「息を吸って息を吐く」練習に戻って、「自然に息が出ていき、自然に息が入ってくる感覚」を思い出してください。
感覚を取り戻せれば、先ほど行なった、
「フー」や「アー」の発声に挑戦してみてください。
「フー」や「アー」の発声も自然に行なえるようになったら「フー」や「アー」の代わりに、
「おはようございます」
「お疲れ様です」
「こんにちは」
……など、挨拶を言ってみてください。
このとき注意していただきたいのは「一息で一気に言う」ことです。
肺からの息を無駄なく使うことを意識してください。このことが腹式呼吸を行なう上でも、また滑らかに話すことにおいても重要な意味を持つからです。
歌いたい曲で挑戦してみましょう
挨拶を自然に発声できるようになったら、お待ちかね、歌への挑戦です。歌いたい曲を歌ってみましょう。
ここでの注意も「一息で一気に歌う」ことです。できるだけ息継ぎを少なくし、ひとつのフレーズを「切らずに滑らかに繋いで」歌ってください。
これができるようになると……あなたの歌はとてもニュアンス深く、表現豊かな歌になるはずです。滑らかに歌う、すなわちレガートで歌えていることになるからです。
人は無条件に「滑らかなもの憧れる」と言われています。音楽もそうです。モーツァルトの音楽が愛される理由のひとつに「滑らかさ」つまりレガートの美しさが挙げられるます。
腹式呼吸をマスターするなら、どうせなら表現力も身につけましょう。
仰向けの体勢で腹式呼吸で呼吸や発声ができるようになったら、ぜひ直立の体勢でも同じ感覚で呼吸や発声ができるようにトライしてみてください。
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※レッスン予約が入ると空き枠は予告なく終了となりますので、ご了承ください。
本コラムの執筆者
小泉 誠司
ニューベリーサウンド
小泉 誠司(コイズミ セイジ)
ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。
伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。
著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。
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