【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第35回:子供の時やってたアレで「歌が平坦」を解決できる!?

 前回は「普段通りの日本語」すなわち歌詞に「子音」だけではなく「母音」を入れて歌うことで、「歌が平坦」だと指摘される問題の解決を図りました。


 今回も「歌が平坦」、「感情がこもっていない」という指摘への解決を図っていきたいと思います。

 皆さんはこんな経験をされたことはないでしょうか……。
 例えばオフィスでパソコンの仕事に没頭していて、しばらくの時間、人と話していなかったとします。そんなとき、人に声を掛けられ、その返事をするために声を出そうとしたら、喉に引っかかって声が出にくくなったことはないでしょうか?

 「あーその件ですか?」と言いたいところ、
 「ゔぁあーその件ですか?」と、最初の部分が、「うめき声」のような声になってしまうのです。

 また、子供の頃に「ゔぁああああ」と「うめき声」を喉の奥で鳴らして遊んだ経験のある方もいらっしゃると思います。
 この「うめき声」、言葉だけでは説明しにくいので、下記の動画を参考にしてください。

<声帯ウォームアップ「うめき声」>

 この「うめき声」を鳴らしてくれているのが「声帯」です。意外に声帯の位置を正確に理解されている人は少ないのですが、「ゔぁああああ」という音が鳴っているところが声帯なのです。

 まずは「ウォーミングアップ」として、この「うめき声」は有効なのでぜひモノにしていただきたいと思います。

 なぜ有効かと言うと……
●声帯そのものを震わせることができるので、精度の高い発声練習と言える
●声を出さなくてもできる「発声練習」なので、ライブ前や公演前、本番前の控室でも準備ができる

……だからです。

 それでは、この「うめき声」はウォーミングアップだけに有効なのでしょうか?

 ご安心ください。もちろん、それだけではありません。
 それでは今回の本題に入っていきましょう。

 歌を歌っていて、気持ち良い声が出て歌えることはとても楽しいことですし、原点だと思います。
 ただ声が出るからと言って、最初から最後まで同じ声量、同じ声質で歌っていると、それはどこか人間らしくない印象を与えてしまうかもしれません。

 例えば先ほどのオフィスでのパソコン仕事の場合、声を掛けられて「あーその件ですか?」とスッキリと声が出てしまうことのほうが違和感があるように思えます。
 しばらく話していなかったわけなので、いきなりは声が出にくい……。それこそ人間っぽいのだと思います。

 人間性を出せる「うめき声」、歌やセリフの中に活かさない手はないですよね。積極的に取り入れていきましょう。
 歌やセリフの中で効果的に「うめき声」を取り入れたのが「うめき声メソッド」、まずは下記の動画をご覧ください。

<うめき声メソッド>

 動画でも説明していますが、「大袈裟にやる」ことがコツです。でもその前に、普通の「うめき声」ができるようになることが必須です。
 声は声帯が震えて作られますが、うめき声は限りなく左右の声帯が閉じている状態、まだ声が出る前の状態で肺から息が声帯を震わせて出ている声ということになります。

【うめき声】
●声帯がしっかりと閉じている
●肺からの息が弱い

【声】
●声帯が少し開いている
●肺からの息が強い

 息の強さの変化に従って「うめき声」から「声」に変化するということです。

「うめき声」→「声」

「うめき声メソッド」注意点としては、
「うめき声」と「声」を切らずに繋げることです。

 この「うめき声メソッド」ができるようになると、「歌が平坦」を克服できるだけでなく、自由自在に声を操れている感覚も持つことができるようになれ、芝居でも歌でも楽しさが倍増します。
 ぜひモノにしてください。

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本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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