【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

【ボイトレ】努力性呼吸の実態を知ると、緊張が怖くなくなる!/連載「ボイトレの???(ハテナ)にこたえる声と歌の小泉クリニック:第96回」

多くの人を悩ませる「努力性呼吸」とは?

 「緊張すると、なぜ声が出にくくなったり、息苦しくなったりするのか?」……多くの人を悩ませているこの問題を前号では解明してきました。

 おさらいすると、

「引き笑い」→息を吐きながら笑うのではなく、息を吸いながら笑う
「口笛」→吹くことで音を鳴らせるが、吸うことでも音を鳴らすことが可能

 上記ふたつの事例から、
 「我々人類は『息を吸って音を作る』ことができてしまう」という特徴を確認できるのです。そして、この「特徴」こそが「努力性呼吸」、多くの人を悩ませている元凶と言えるのです。

カウントを取って実験してみよう

 ちなみに「ハーモニカ」も息を吸うことでも音を出すことができます。
 でも息を吐きながら音を鳴らしているときに比べて、息を吸って音を鳴らせているときは少なからず息苦しさを感じるはずです。

 今回はより実践的なアプローチをしていきます。
 まずは、努力性呼吸とは具体的にはどんな呼吸なのか? 簡単な実験で実感していただきたいと思います。

「1 2 3 4(ワン ツー スリー フォー)」とカウントを何回か繰り返して言って、スマホのアプリで、録音してみてください(iPhoneの方は「ボイスメモ」で)。

 録音された音を確認してみてください。

1と4は大きい
2と3は小さい

 もしくは

1は大きい
2と3と4は小さい

 結果になっているのではないでしょうか?

 iPhoneの「ボイスメモ」では、録音中は録音データの波形が表示されるので、その波形を見ながらカウントしてみるのも良いでしょう。

 録音されている音声の波形は、上記と同じく

1と4は大きい
2と3は小さい

 もしくは

1は大きい
2と3と4は小さい

 という結果になるはずです。

声や波形が大きい1もしくは、1と4は自然呼吸
声や波形が小さい2と3、もしくは2と3と4は努力性呼吸

 ということになります。

 私が指導しているレッスンで生徒さんの声をPCで録音して波形を見ているのですが、前述したような結果となっていることが多いです。

努力性呼吸の症状を体感

 では努力性呼吸の症状を体感してもらいたいと思います。

「2 3」と2と3だけをリピートしてカウントしてみてください。

 しばらく繰り返していると息苦しくなってきて、ブレス(息継ぎ)をしなくてはいけない状態になるはずです。

 それでは次に、

「1 4」と1と4だけをリピートとしてカウントしてみてください。

 どうですか? こちらは「2 3」に比べて、息苦しくはならず、ブレスをすることもなかったはずです。

 「2 3」のときに息苦しくなってしまった状態、これが人前で話したり歌ったりしたときに息苦しくなってしまう努力性呼吸の状態と言えます。

 これが、話していて苦しくなってしまう原因だったのです。

 事実、私のレッスンに来られる、セミナー中や授業中に息苦しくなって悩みを持たれた方々に、上記の実験をすると、「この状態、本番中に起きている状態と同じです」と、まだ問題解決の方法はお教えしていないのに、皆さん明るい顔をされます。

 問題解決の前に、まずは原因究明。原因がわかれば精神的にもとてもラクになります。まずは、上記の実験を行なってみて、努力性呼吸の実態を自身で理解してください。


撮影:ヨシダホヅミ

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本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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