【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

文:小泉誠司(ニューベリーサウンド)

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

【ボイトレ】「声が抜けない」と悩んでいる人、絶対読んでください!/連載「ボイトレの???(ハテナ)にこたえる声と歌の小泉クリニック:第91回」

2023.12.11

「声が抜けない」ことと「滑舌が良くない」ことの共通性

「声が抜けない」

 ……こんな悩みを持つ方は少なくないと思いますが、「滑舌」も原因のひとつになるのをご存知でしょうか?

 きっと多くの方は「えっ!? 声と滑舌とどういう関係?」と疑問に思われることでしょう。しかしながら、そもそも、

なぜ「声が抜けないといけないのか?」
なぜ「滑舌が良くなければいけないのか?」

 を考えると、その「共通性」に気がつくはずです。

 「共通性」とは「相手に伝わりにくいという」共通の問題です。この「共通の問題」を解決できると、同じ目的を遂げることができるということになります。

「声が抜けないと」相手に伝わりにくい
「滑舌が悪いと」相手に伝わりにくい

 のです。

 実は「声が抜けない人」は「滑舌が悪い」可能性があります。
 また「滑舌が悪い人」は「声が抜けない」可能性もあります。

 そして、どちらかひとつの問題を解決すると「相手に伝わりやすくなる」のは間違いないのですが、「滑舌を良くする」ことから解決を図ることをお薦めします。

 なぜなら「声が抜ける」という目安より「滑舌が良くなった」という目安のほうが目標としてわかりやすいからです。

滑舌のテストをしてみましょう

 そこで……突然ですがテストです。

「タ チ ツ テ ト」と言ってみてください。うまく言えましたか?

 次に、

「タ チ ツ テ ト」「タ チ ツ テ ト」「タ チ ツ テ ト」….…と5回言ってみてください。

 どうですか? 意外に難しいでしょう。特に「声が抜けない」、「声がこもる」と悩まれている人には難しく感じるはずです。

 では次に

「タァ ティ トゥ テェ トォ」

 そして先ほどと同じように「タァ ティ トゥ テェ トォ」、「タァ ティ トゥ テェ トォ」….…と5回言ってみてください。

 ここでの注意点ですが……英語の「Touch」を発音するのを意識して

① 舌を上の前歯の裏側に舌を当てて発音する。
② 必ず語尾の母音を発音する(小文字になっている音)。
③ 特に「ティ」が「チ」に「トゥ」が「ツ」にそれぞれならないようにする。

 「パーティー」を「パーチー」という人はあまりいないと思いますが……何回かやっている間に「チ」、「ツ」になりそうになるので注意してください。

 どうですか? 上記の[注意点]を守ると、「タ チ ツ テ ト」のときも、よりうまくできたのではないでしょうか?

 なぜ「タ チ ツ テ ト」より「タァ ティ トゥ テェ トォ」のほうが言いやすいか?
 ……その要因が「通る声」のヒントなのです。

口の中の「舌の位置」に注目してみよう

 「タ チ ツ テ ト」と「タァ ティ トゥ テェ トォ」を発音するときの、口の中の「舌の位置」に注目してみましょう。

「タ チ ツ テ ト」→舌の位置:うしろ
「タァ ティ トゥ テェ トォ」→舌の位置:前

「舌の位置がうしろ」であることが、「タ チ ツ テ ト」の発音を難しくさせている原因のひとつなのです。
 要するに「舌がもつれる」感じになるのです。

 つまり口の中での舌の位置がうしろだと「滑舌が悪くなる」ということです。

 では「通る声」か「こもる声」かという価値観においてはどうでしょうか?

 結論から言って、「舌の位置がうしろ」にあると「声」は「抜けない」、「こもる」ことになってしまいます。

 実験して確かめてみましょう。
 「アー」と声を出しながら、舌を口の中でうしろから前のほうに移動させてみてください。

舌の位置がうしろ → 声がこもる
舌の位置が前 → 声が抜ける

 「アー」が舌を前に移動させるにしたがって「抜ける」はずです。

滑舌を良くするための「舌の位置は前」
通る声を出すための「舌の位置は前」

 …ということが言えるのです。

 「声が抜けない」と悩んでいる人は上記の「タァ ティ トゥ テェ トォ」の練習を行なってください。確実に声が抜けるようになります。
 そして、もちろん「滑舌」も良くなります。声が抜けて、滑舌も良くなる!……素晴らしいことです。気分も良くなるので、ぜひトライしてください。


撮影:ヨシダホヅミ

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本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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