【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第83回:歩きながら腹式呼吸できる練習教えます

忙しいあなたに最適な、歩きながら腹式呼吸を習得するメソッド

 「毎日忙しくてなかなか練習時間を確保できない」……多くの方が同じ悩みを持たれていると思います。

 今回は忙しい方にピッタリ、しかも腹式呼吸習得に効果絶大なメソッドをご紹介したいと思います。どんなに忙しい人でも、歩く時間はあるはず、せっかくだから、この時間を有効に使いましょう。

 方法は至って簡単。

・鼻から息を吸って3歩
・息を止めた状態で3歩
・鼻から息を吐いて6歩

 これを繰り返すだけです。「方法は簡単」と言いましたが「労力は別」、実際やってみるとけっこうキツイはずです。

 何がキツイかと言うと、息を吸うこと吐くこと。
 特に息を6歩の間、吐き続けることがキツイのではないでしょうか?

 普段、呼吸がキツくなることはハードなスポーツや、本当に体調が悪いとき以外にはあまりないはずなのに、「歩きながら息を吸って吐く」がこんなにキツイかと驚かれる人も多いでしょう。

 普段「本気で吸う」、「本気で吐く」ことをしていない、ということに気づくはずです。

 「本気」とは「めいっぱい」、「めいっぱい息を吸い、めいっぱい息を吐く」ということです。めいっぱい吸うと肺の下部のほうにも息が入ります。この状態を「腹式呼吸」といいます。

 息が入る場所は肺にもかかわらず、「腹式呼吸」という言葉には「腹」という文字が入るのは、肺の下部まで息が入るとお腹が膨らむからなのです。

 しかしながら、多くの人は「お腹に空気が入る」、「お腹に力を入れる」など誤った意識をしてしまいがちです。

<下記参照>

歩くという行為の中で腹式呼吸の質を高めましょう

 話を元に戻すと……今回のメソッドは「腹式呼吸で発声をしながら歩いている」ことになります。

 「歌う」という行為の中で腹式呼吸をマスターすることは意外に難しいです。「お腹に力を入れて発声するクセ」が身についてしまっている危険性があるからです。

 それに比べ「歩く」という行為は、普段当たり前のようにやっている行為。この当たり前と言える行為の中で腹式呼吸という呼吸の質を高めたほうが、実は効果が高いと言えます。

 最初は息を吸うこと、また吐くことに違和感や苦痛を覚えることもあると思いますが、続けていくと自然にできるようになっていきます。

 でも無理は禁物。最初は、

・鼻から息を吸って2歩
・息を止めた状態で2歩
・鼻から息を吐いて4歩

 から慣れていくのも良いかもしれません。

 または落ち着いて椅子に座って、

・鼻から息を吸って「1、2、3」
・息を止めた状態で「1、2、3」
・鼻から息を吐いて「1、2、3、4、5、6」

 ……とカウントしながら行なってみるのも良いと思います。最初は難しく思われるかもしれませんが、そのうちに無意識でできるようになってきます。

 そうすれば、あなたがいざ「本番」を迎えても、普段通りの「腹式呼吸」ができる人になれている可能性が高まります。

うまくなるコツは吸うのも吐くのも、めいっぱい!

 私が指導している生徒さんの中には、プロの歌手の方もいらっしゃいますが、ライブ前、レコー ディング前には、特にこの練習時間を増やす方が多いです。この練習をすると「勝手に声が出てくる感覚が身につく」と言われます。

 鼻から吸うと一気に吸えてしまうので、最初のうちは3歩の間、息を吸い続けることは難しいかもしれません。また6歩の間、息を吐き続けるのも難しいかもしれません。

 うまくできるようになるコツは、吸うのも吐くのも「めいっぱい」ということです。めいっぱい吸って、めいっぱい吐くのです。できるだけ多くの息が肺に入って出ていく、というイメージを持って取り組んでください。

 継続は力なりです。
 必ず成果が出るので頑張ってください。

 ただし、この練習は睡眠不足や体調不良のときではなく、体調が整っているときに行なうようにしてください。


撮影:ヨシダホヅミ

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2023年10月20日(金)、26日(木)、11月10日(金)にレッスン空き枠あります!
※レッスン予約が入ると空き枠は予告なく終了となりますので、ご了承ください。

本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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