【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第80回:「喉を大きく開けて歌おう」はやめて歌おう!

皆さんの商売道具=「声帯」にこだわりを持ちましょう!

 「声は声帯で作られる」……このことは何となくイメージとしてはわかっていても、ホントのところどうやって声が作られているのかを理解できている人は少ないように思います。

 声帯はイメージ上のものではなく、人体に実際に存在する器官のひとつです。

 画家、書道家、調理人……手を使う職業の人は自身の商売道具である手の構造や機能に関して「こだわり」を持つはずです。

 ではあなたはどうでしょうか?
 もし歌手や声優、アナウンサーなど声の職業を目指しているとしたら……声を出すことにおいての「声帯」という商売道具に関してホントに「こだわり」を持っていると言えるでしょうか?

 まずは声においての「商売道具」である声帯のことを「もっと知りたい!」と思っていただきたいと思います。

発声をするとき、声帯は閉じている

 それでは皆さんの商売道具、声帯のことを説明していきましょう。声帯の主な仕事はふたつ。それぞれで声帯の状態は変わります。

●呼吸 → 声帯は開いている
●発声 → 声帯は閉じている

 そう、発声をするときには声帯は閉じているのです。

 声帯は喉の中で左右両側に分かれており、肺からの息が左右の声帯を震わせることで声が作られます。昆虫が左右の羽をこすり合わせて音を出すのと似ています。

 肺からの息が声帯を通過するとき、左右の声帯が離れてしまっていては、息が漏れるだけで声にはならないのです。

 しかしながら、歌唱や発声に関して「もっと喉を開けて」とアドバイスされた経験がある方も多いはず。

 もうおわかりですね。
 実際にはこのアドバイス通りに、声帯を開けてしまうと声にはなりません。

 つまり、発声を行なうときの声帯の状態は、
 「開ける」という言葉とは真逆の状態、
 「閉じている」状態なのです。

 「喉を開けて」という表現は、「声を閉じ込めないで開放しよう」というようなメンタル面でのアドバイスだと思います。

 しかし実際にはまったく逆の動きをイメージして話したり歌ったりするのは危険です。発声における問題だけではなく、もっと重篤な問題を引き起こしてしまう危険性があるからです。

 それは誤嚥性肺炎。
 食べ物や飲み物が誤って気管を通って肺に入ってしまう、実は日本人の死因の上位に挙げられるほど危険な病状です。

 加齢に伴い、他の筋肉と同様に、声帯の筋肉も衰えてきます。

 足腰が弱ってくると危機感を持ち、歩く距離を増やしたり階段を登るようにしたりと努力をしようするはずですが、声に関しては「昔はハリのある声だった」と、現状を諦めている人を多く見かけます。

 実は声帯も鍛えないと生命の危機にも繋がってしまうのです。

 今回は誤嚥性肺炎予防にもなり、声も出しやくなる「声帯ぴったりメソッド」を紹介したいと思います。

「声帯ぴったりメソッド」をやってみよう!

 「声帯ぴったりメソッド」のやり方の説明です。
 「左右の指」イコール「左右の声帯」ということを意識してください。

①首の前あたりで、左右の人差し指をぴったりと合わせて「おはようございます」と声を出してみましょう。

「声帯が閉じた状態」→「通る声」になります。

②先ほどの左右の人差し指をぴったり合わせた状態から、第3関節を支点にし、指先が2cmくらい開いた状態にして「おはようございます」と声を出してみましょう。

「声帯が開いた状態」→「息が漏れた感じの声」になります。

 ①の「声帯が閉じた状態」と、②の「声帯が開いた状態」での声の違いを実感してください。目指すのは「声帯が閉じた状態」→「通る声」です。

 下記「声帯ぴったりメソッド」手本動画です。参考にしてください。

声帯ピッタリメソッド

 指を引っ付けたり離したりするだけの違いなのですが、私が行なっているレッスンでは、このメソッドを行なってから、「通る声」になった人も多いです。

 ぜひ試してみていただきたいと思います。


撮影:ヨシダホヅミ

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※レッスン予約が入ると空き枠は予告なく終了となりますので、ご了承ください。

本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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