【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第78回:喉に負担をかけない「声の出し方」お教えます!

喉は「何もしない」状態に!

 私が行なっているレッスンでは、レッスン開始時に生徒さんに問題点や悩みをお聞きするのですが、「歌うと数曲で喉が痛くなる」という悩みを持つ方が少なくありません。

 「歌は好きなのに、すぐに喉が痛くなるので、歌うのが怖くなった。やっぱり発声が間違っているのでしょうか?」
 ……とても深刻な悩みを打ち明ける方が多いのです。

 私は「歌は教えるものでも教わるものではない」と言い続けている変わったボイストレーナーなのですが、それは犬が他の犬に吠え方を聞かないように、人間も「楽しく」歌えればそれで良いと思うからです。

 しかしながら……

・プロと同じ実力を持ちたい
・喉を痛めたくない


 ……という目的を遂げようとして、自分自身では解決できない場合は、プロのボイストレーナーの力が必要かもしれない、と説明しています。

 ちなみに上記は「プロ」としては不可欠な条件、プロは正しい発声をしているので、喉は傷めないのです。

 なので、「歌うと数曲で喉が痛くなる」ということ、それはプロとは違う発声をしているということになり、ポジティブな考え方をすれば「喉が痛くならない発声ができるようになる」と、プロの力に近づけるということになるのです。
 別な言い方をすると、「歌うと数曲で喉が痛くなる」感覚がある人は、成長できるチャンスがある人とも言えます。
 長年誤った発声で歌っていると「喉を痛めている」ことに気づかなくなっていく、少なからず「麻痺」してしまっている人もいるからなのです。

 あまりに神経質になる必要はありませんが、喉に限らず「痛み」は身体が出している「危険シグナル」、早急に改善しなければいけないのです。

レッスンで「オーイ」と言ってもらうと苦しそうになるのはなぜ?

 ということで、今回は【喉に負担をかけない「声の出し方」】をお教えしたいと思います。

 ところで、なぜ【喉に負担をかけない「歌い方」】とせずに【喉に負担をかけない「声の出し方」】にしたか?

 ……実はこのことが重要なのです。

 私が行なっているレッスンで生徒さんに、“「オーイ」と言ってみましょう”と言うと、とても苦しそうに「オーイ」と声を出されたり、声が割れてしまうケースが少なくないです。
 そして自分のその声の弱々しさや痛々しさに驚き「どうしてこんな声になってしまうんだろう?」と悩んだりします。
 どうしたら気持ちよく「オーイ」を出せるのか……難しく考えるようになっていきます。
 このまま続けると喉を痛めかねない状態です。

 はたして「オーイ」という発声はそんなに難しいものでしょうか?

 そうではないはずです。
 音楽も歌も関係ないとき、例えば外で誰かを呼ぶ場合、「オーイ」は当たり前に簡単に出すことができているはずです。
 そのとき「オーイ」で声がひっくり返ってしまったり、声が割れたりして喉を痛めてしまう人はあまりいないと思います。
 でもレッスンではそのありえないことが起こってしまうのです。

 なぜ、そのような結果になってしまうのでしょう?

 それは「歌う」からです。
 「歌ってしまう」からです。


 レッスン室でレッスンを行なっているから、その中で出す声はつい「歌ってしまう」のです。

 「歌」を教える立場で歌を「歌うな!」と指導する指導者はあまりいないかも知れませんが、
私はレッスンの中では「歌うな!」と指導することがあります。

肺からの息でスムーズに声帯が震えるようにするには?

 どういうことか説明していきましょう。
 水が流れることよって水車は回転、風が吹くことによって風車は回転するように、肺からの息が流れることによって声帯が震え、声が作られます。

 水車や風車の軸がスムーズに回転できるように、水車や風車の軸に潤滑油を注ぐことはするかもしれませんが、水車や風車は自らを回転させることはありません。
 つまり水車や風車は「何もやっていない」のです。

 声帯も同じことが言えます。
 大切なことは肺からの息でスムーズに声帯が震えるようにすること、つまり「何もしない」ことが重要なのです。

 歌おうとすると、喉が仕事をしたくなります。
 その結果、声帯がスムーズに震えなくなり、喉を痛める危険性も出てきます。

 一方、例えば外で誰かを呼ぶ場合の「オーイ」では、喉は「何もしない」。すなわち肺からの息によって「震わせられている」状態、喉を痛める危険性が少ないと言えます。

 今回、【喉に負担をかけない「歌い方」】とせずに、【喉に負担をかけない「声の出し方」お教えます】にした理由は、「歌おう」とすると、「発声練習」を意識してしまい、スムーズに声帯が震えなり、喉を痛める危険性が増すからです。

 まずは、発声練習を意識することなく、本当に人を呼ぶときと同じように「オーイ」を言えるように練習してください。

 「オーイ」ができるようになったら「アーイ」など、他の音でもできるようにトライしてください。


撮影:ヨシダホヅミ

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2023年9月15日(金)、20日(水)、21日(木)、29日(金)にレッスン枠あります!
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本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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