【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第51回:花粉症に負けない発声法、教えます

花粉のシーズンを乗り越える発声とは?

 残念ながら、今年も花粉症シーズンが来てしまいましたね。 今年は花粉の量が多く辛い日々を送られている人も多いと思います。
 私も数年前から花粉症になり、このシーズンは本当に辛い状況になります。

 頭がボーッとしたり鼻水が出たり、花粉症特有の症状は出るのですが、でも毎日長時間にもおよぶボイトレレッスンでは、私自身も花粉症に悩む生徒さんも通常時と変わらず声は出せています。

 もちろん花粉症の影響がゼロ、ということではありませんが、いつもに増して
・正しい呼吸心がける
・正しい姿勢を心がける
・正しい顔&口のフォームを心がける

 ……を行なっていくと、花粉症の影響を最小限に留めて声を出せるようになります。

「鼻声にならない」ための処方箋=あくび(疑似あくび)

 とは言え、鼻声は何とかしたいですよね。 ここで「鼻声にならない」ための処方箋をご紹介したいとも思います。

 まず「あくび」をしてください。
 とは言っても、いきなりのあくびは難しいと思います。そんな場合は「擬似あくび」、 あくびのフリでも良いので行なってください。

 要するに、あくびのときは下顎の空間が広がるので擬似あくびのときも、下顎の空間が広がることを意識してください。

 あくび、もしくは擬似あくびを10回行なったのち、顎の先端部分に人差し指をおいて、その部分を響かせるように意識して 「おはようございます」と言ってみてください。
 下の歯茎の根元を響かせるイメージでも良いです。最初は「低音」、「低域」をイメージしたほうが声が出しやすいと思います。

 どうですか? 下顎全体に響きを感じられたのではないでしょうか? そのとき、声は鼻声の成分は減ってきていると思います。

 鼻声は息が鼻腔のほうに流れて作られるので、鼻腔のほうに息が流れなければ「鼻声にはならない」ということです。
 息が鼻腔のほうに行かないように、下顎を意識することで鼻声を回避できるのです。鼻腔には息を送り込まない、その代わりに下顎の空間を作り、そこに息を送り込むということです。

 もちろん、完全に鼻腔のほうに息を行かないようにすることは難しいので、鼻声がゼロにすることは難しいですが、モロに鼻声とは悟られない声にすることは可能です。

 チャートで説明すると…

「鼻声にならない」

それには「鼻腔に息を通さない」

そのために「別の息の流れを作る」

具体的には「下顎を下げる」

そうすると「下顎に空間が生まれる」

そこに「息が通る」と

「下顎の共鳴」が生まれ

「低音豊かな響きのある声」になる

あくび(疑似あくび)の状態で声を出すと、低音を含む響きのある声に!

 なぜ低音豊かな声質になるかというと、普段は通り道でしかない下顎の空間が、下顎が下がると「広い空間」になり響きを増すからです。

 管楽器を思い浮かべるとわかると思いますが……

「太い管」の管楽器 = 低音を生み出す
「細い管」の管楽器 = 高音を生み出す

 同じことが、口の中の構造にも言えます。

「広い」口の中= 低音を生み出す
「狭い」の管楽器 = 高音を生み出す

 ……のです。

 このように、あくびや擬似あくびの状態で声を出すことにより、鼻声を回避するだけでなく、低音を含む響きのある声を出せるようになるのです。

 でも実はまだまだメリットがあります。
 それは「頭のてっぺんから声を出す」が可能になることです。

 なぜなら、「鼻腔に息を通さないコツ」を覚えると「鼻腔に息を通すコツ」も覚えることができるようになるからです。

 声楽の先生やボイトレの先生がアドバイスとして言う「頭のてっぺんから声を出す」の秘密は「鼻腔の共鳴」、「鼻腔に息を通すコツ」をモノにできると鼻腔の共鳴を生み出せる、ということなのです。

<参照>
第16回:「頭のてっぺんから声を出して」ってどういうこと?

 肺から出てきた息が声帯を震わせて声が生まれるのですが、その後、息がどこを通るかで声質が変わってきます。

 今回の「鼻声にしない」ための処方箋は、
「鼻腔の共鳴」
「下顎の共鳴」

 というありがたい「副産物」も生み出してくれるので、ぜひチャレンジしてみてください。


撮影:ヨシダホヅミ

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本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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