【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第18回:「ブーーーー!」……ブーイングで声はさらに出やすくなる!

声楽やボイトレの「謎のアドバイス」トップランクに位置する

「頭のてっぺんから声を出して」

この「???(ハテナ)」解決のために、バースデーケーキのロウソクの火を消すための「フーの息」を前回(第17回:頭のてっぺんから声を出したければ、バースデーケーキのロウソクを消そう!)は処方しました。

今回は、「フーの息」の精度をさらに上げるための処方箋をお出ししたいと思います。

その処方箋とはブーイング
アメリカの野球、メジャーリーグで、観客が相手チームや選手にダメ出しする時に声を出しているアレです。

「ブーーーーーーーーーー」と、けっこう長く声を出しています。
でも「ブーイング」で喉を痛めている人は少ない……実は理に適った発声をしている可能性があります。

では早速「ブーイング」してみましょう。
野球の本場、ニューヨークのヤンキースタジアムや、ボストンのフェンウェイパークにいるつもりで、「ブーーーーーーーーーー」と、できるだけ長く声を出してみてください。

どうですか? うまく「ブーイング」できましたか?
意外に難しかったのではないでしょうか?

うまくできた人もできなかった人も、下記の実験をしてみましょう。

①唇を「プゥー」とブルブル震わせてみましょう。いわゆる「リップトリル」です。

②次は「リップトリル」有音編。①に「ブー」と音を付けてブルブル震わせてみましょう。

どうですか? うまくできましたか?

①の際の無音のときはうまくできたのに、②の「ブー」はうまくできなかったという人は多いのではないでしょうか?

②がうまくできなかった理由としては下記が考えられます。

①の場合は息を出しているだけなので、声帯は息を通すことだけに専念していましたが、②の場合は「ブー」という音を出すので、声帯は「自分の仕事だ!」と力み、唇に送る息が弱くなり、唇を震わすことができなかった。

うまくできなかった人は….….

唇を無音でブルブル震わせながら、そのまま途切れずに「ブー」と音を付けてみましょう。
要は、無音のときに限りなく近い状態で、唇に息を送り続ける必要があるのです。

具体的には、
[A]:リップトリル 無音()→有音()で「ブー」を交互 にやってみる(最低2回)。
例「プー()→ブー()→プー()ブー(

[A]がうまくできるようになったら、先ほどトライした「ブーイング」です。

[B]:[A]の要領で 無音()リップトリルし始め、途中から「ブーーーーーーーー」とブーイングを言ってみましょう。

どうですか? 先ほどよりも、うまく、長く「ブーーーーーーーー」とブーイングできるようになっていませんか?

「ブーーーーーーーー」と長く発声できている間、顔から頭にかけて「響き」を感じることができた人、また途中から「勝手に声が出ている」ような感覚を持った人もいると思います。

その「響きのある声」、「勝手に声が出ている声」こそが「頭のてっぺんから出ているような声」なのです。

ブーイングがうまくできるようになったら、ブーイングの「ブー」を使って下記の応用もやってみましょう。日常の挨拶や会話の中でも「頭のてっぺんから出ているような声」が出せるようになると、歌の中でも「頭のてっぺんから出ているような声」を出しやすくなります。

ブーイングがうまくできるようになったら……

[C]:ブーで「おはようございます」と言ってみましょう。
例「ブはようございます」

[D]:ブーで「おはようございます」のあと、地声で「おはようございます」と言ってみましょう。
例「ブはようございます」→「おはようございます」

●注意点
• 1音節で言う(英語のように)
• ブーのあと、すぐに地声で「おはようございます」を言う

声を出す上での支点は2箇所あります。

①声帯(声の始点)
②口(声の終点)

多くの人は声のスタート地点である「声帯」を意識することはあると思いますが、声が最終的に出て行く場所である「口」に関して意識する人は意外にも少ないのです。

実は、この「声の出口」である「口」を意識することにより、「声の始点」である声帯の負担は減るので、口まで強い息、すなわち「フーの息」が作られ、その結果「頭のてっぺんから出ているような声」になります。

まずは、今回の「リップトリル無音編」と「有音編」が自由自在にできるように、ゲーム感覚で楽しんで取り組んでいただければと思います。

本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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