【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第15回:「アゲアゲ・カタカタ」すれば、呼吸も声もよくなる!

前回までの処方箋……

「自然に肺に空気が入りやすくなる」
「自然に肺から空気が漏れていく」

今回も、これらに「効くお薬」として「アゲアゲ・カタカタ呼吸法」を処方させていただきます。
早速やり方から説明していきましょう。

アゲアゲ呼吸法

①:両手を水平に合わせて、肋骨の下のラインからあごの下ぐらいの高さまで、肩ごと持ち上げながら、鼻から息を吐きます。このとき、手のひらの上に本を置いて、その本がアゴに当たるまで上げてみることもオススメします。

②:①の状態から、手を合わせた状態をキープし、そのまま肋骨の下のラインまで同じペースで下げながら、鼻から息を吸い込みます。

【ヒント】
左右の腕が綺麗に水平に上がったらOKです!

カタカタ呼吸法

①:両手を伸ばした状態で肩をきゅっと上げる。この時に鼻から息を吐きます。

②:①の状態から脱力するように、そのまま両肩を下げる。この時に鼻から息を吸い込みます。

【ヒント】
始めはゆっくりと。 焦らずに。 力が入らないように。

ところで、なぜ「アゲアゲ・カタカタ呼吸法」をやると、声が出やすくなるのでしょうか?
前回 (第14回:「万歳三唱」で運気も歌もアップさせよう!」でご説明した「バンザイ呼吸法」と、同じ原理のもと、同じ効果を生むことができるからなのです。

バンザイは、肺を「上から」引っ張り上げることにより、肺を小さくして中の息を押し出す原理。「アゲアゲ・カタカタ呼吸法」も、胸郭を上げることにより、肺を小さくして中の息を押し出す原理なのです。

また特に「アゲアゲ呼吸法」では胸郭を広げ、肋骨が広がるので、肺も広がりやすくなり呼吸がラクになります。

アゲアゲ・カタカタをしながらの呼吸は、

肩を上げるときに息を吐く→肺が小さくなるので出しやすい
肩を下げるときに息を吸う→肺が大きくなるので入りやすい

したがって、バンザイ呼吸法と同じく理想的な呼吸、すなわち理想的な腹式呼吸になっていると言えるのです。

まずは上記のように「息を吐く、息を吸う」を、声を出さずに「アゲアゲ・カタカタ呼吸法」で行なってみてください。

次に「発声編」です。

「アゲアゲ」

①:両手を水平に合わせて、肋骨の下のラインからあごの下ぐらいの高さまで、肩ごと持ち上げながら、「フゥー」と声を出してみましょう。

②:①の状態から、手を合わせた状態をキープし、そのまま肋骨の下のラインまで同じペースで下げながら、鼻から息を吸い込みます。

「カタカタ」

①:両手を伸ばした状態で肩をきゅっと上げる。このときに「フゥー」と声を出してみましょう。

②:①の状態から脱力するように、そのまま両肩を下げる。このときに鼻から息を吸い込みます。

今度は、上記で「フゥー」の代わりに「アー」と声を出してみてください。
そして「フゥー」と「アー」の声の出方を比べてみてください。
「フゥー」に比べて「アー」は声が出にくい感覚があったはずです。

多くの人は発声時において「音を作る息を流す」ことになっています。この状態だと声は出にくい状態となります。

これを「音を作る息を流す」にすることによって、声は出やすくなります。
なぜなら、声の動力源は「息、発声時においても《息が流れている》こと」が重要だからです。

なので、

「アゲアゲ・カタカタ」において、「フゥー」と「アー」を交互に発声してみて、
「フゥー」「アー」 → 「フゥー」「アー」 → 「フゥー」「アー」
と、最終的には「アー」のほうが出やすい状態に持っていく必要があります。

発音によって、息の流れは変わります。
その違いを「楽しんでみる」のも、上達への秘訣です。
ぜひ、やってみてください。

本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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