【連載】ボイトレの???(ハテナ)にこたえる 声と歌の小泉クリニック

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

第9回:今夜もお風呂に入ろう! さらに腹式呼吸が楽しくなります!

前回に引き続き「風呂トレ」シリーズです。

子供の頃から、お風呂って楽しい「場」でしたよね。浴室では声がよく響くので、ついつい楽しんで歌ってしまったこと、そんな思い出がある人も多いと思います。

今回もさらに楽しいお風呂タイムになる遊びをご紹介します。平たく言えば、子供のときにやっていた「お風呂で歌ってみよう!」です。

それでは「遊び方」をご説明します。

①お湯を張ったバスタブでできる限り仰向けになり息を吸います。
②その体勢のまま、「フー」と口から息を吐きます。
③その体勢のまま、息を吸います。
④その体勢のまま、「フー」と口から息を吐き始め、途中で「アー」という声に変えます。

<注意点>
「フー」から「アー」に変えるときに、息を止めない。
X 「フー」「アー」
○ 「フーアー」
「フー」は「息のフー」であって「声のフー」ではない。

この「遊び」の主旨は、肺の中に入った息が水圧で勢いよく出る。その勢いよく出る息を途中で声に変えることで、自然な発声を行なうことができる、です。

声を出そうとすると、無意識のうちに躊躇して発声が遅くなることがあります。
上記③、④では、水圧も手伝って勢いよく出る息の「フー」を、途中で「アー」という声に「変換」することで、普段躊躇して遅れがちな発声を、自然な発声のタイミングで掴むことができます。

⑤その体勢のまま、息を吸います。
⑥「フー」という息の代わりに「アー」を声を出します。

「フー」と同じタイミングで「アー」が発声できな場合は、もう一度③、④に戻って、正しいタイミングを掴んでください。

⑤、⑥がうまくできるようになると……、

⑦ ①と同じ体勢で今度は、①のときより目一杯息を吸います。
⑧「アー」と声を出します。

⑥のときより、声が大きく、そして長く発声できているはずです。

前回でのおさらいも含めて……
バスタブの中では、水圧が手伝ってくれるので、
「息を吐く」というより「息が漏れる」という感覚
「声を出す」というより「声が漏れる」という感覚
そして「気持ち良い」という感覚を感じることができます。

多くの人は、無意識のうちに「声を出すこと」、「息を吐くこと」を「セーブ」してしまっています。前回、そして今回の「遊び」で、「息が漏れる」、「声が漏れる」という感覚を身につけることで、自然な呼吸、発声をマスターしていただきたいと思います。

さあ、これで準備完了、次は好きな歌を歌ってみましょう! 普段より楽に気持ちよく歌えるはずです。
上記の「遊び」を行なう前に歌ってもらって、「Before」、「After」の歌の違いを実感してもらっても楽しいと思います。

お風呂はあなたの楽しい「ステージ」。楽しんで歌ってみてください。
ただ、声はどんどん出るようになるので、くれぐれも家族やご近所の迷惑にならないように気をつけてくださいね。

本コラムの執筆者

小泉 誠司

ニューベリーサウンド

小泉 誠司(コイズミ セイジ)

ボイストレーナー/作編曲家。米バークリー音楽大学卒。帰国後数々のアーティストの作編曲&プロデュースする一方、ボイストレーニング等新人育成にも力を注ぎ、数多くのアーティストをデビューさせた実績を持つ。

伝説のTVオーディション『ASAYAN』はじめ、数々のオーディションでレッスンや審査を行なうほか、機動戦士ガンダムの主題歌作曲も手がけるなど、多様なメディアで活躍。医療機関でのセミナーも多数、医学的見地に基づいた指導には著名アーティストや人気俳優&声優はじめ、セミナー講師、医師、弁護士など各方面からの信頼も厚い。テレビ東京『〇〇式って効くの?歌下手が3時間で…激変!?』など、TV出演や監修も多数。

著書に『ボイトレの“当たり前”は間違いだらけ!? すぐに歌がうまくなる「新常識」』(リットーミュージック)、『人生を変える「勝ち声」「負け声」 あなたを救う「声の法則」教えます ! 』(リットーミュージック)、『1分でいい声になる! 』(自由国民社 )などがある。

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