【連載】「うたってなんだっけ」
関取 花
関取 花 第1回「うたってなんだっけ」
2021.11.8
どうも、関取 花です。はじめましての方も多いと思うので、まずは軽く自己紹介をさせてください。1990年生まれの神奈川県出身、身長は149cmでお酒はビール派、人生最後の晩餐で食べたいものは母が作ったカボチャの煮物、好きな芸能人は極楽とんぼの加藤浩次さんです。ちなみに普段はアコースティック・ギターを抱えて、自分で作った曲を歌っております。周りのミュージシャンのとんでもない才能に日々怯え、幾度となく絶望しながらも、それでもと自分を信じて、たくさんの出会いと気づきに恵まれながら、いつの間にか昨年デビュー10周年を迎えていました。いやあ、時が過ぎるのって本当に早い。
そんな私ですが、まあどんな私って感じですが、ありがたいことに、このたびヴォーカル・マガジン・ウェブさんからコラムの連載をやってみないかとお声がけいただきました。実は他の媒体でもちょこちょこと書き物のお仕事はさせていただいているのですが、ミュージシャンでありながら音楽に特化した内容の連載というのはこれが初めてになります。
だけど正直、今回の連載のお話をいただいた時は、嬉しいのが7割、不安が3割といった感じでした。何しろ私、こと音楽の話となると、まあ何を話していいやらわからなくなってしまうのです。ミュージシャン同士で飲んでいると、大体飲み始めて2時間くらい経ったあたりで熱い音楽談義になったりするんですけど、その瞬間私の表情はハシビロコウのごとく固まってしまいます。こんなところで言うのもなんですけど、いや、ここだからあえて言います。めちゃめちゃ苦手なんです、あの空気。
誰々の盤だとどれが一番好きだとか、違うあれは駄作だとか、いやそんなことはない、あの曲のあそこのフレーズがとにかくいいんだよとかなんとか言いながらどんどん白熱して、気づけば誰かがどこからともなくギターを引っ張り出してきて、なんか知らんけど酔っ払っている割に案外本気で歌い始めて、かと思ったらさっきまで議論していたあれこれは忘れて、「いやていうかやっぱ〇〇、お前最高だよ」、「そうそう、つまり音楽最高って話」とか言って意味もなく乾杯して、最後はみんなで「Hey Jude」歌ってる、みたいな。なんだそれ。
いやべつにいいんですよ、全然いいんですよ。みんなが楽しんでいるのなら。でもそういう時って、必ずそこの輪に入れていない誰かが一人はいるんです。それは新人のスタッフさんかもしれないし、単純にお酒が苦手な人かもしれないし、どこぞの誰かが連れてきた、彼女なのかなんなのかよくわからない女の子かもしれない。どうでもいいけど、連れてきた方もなんでああいう時きちんと紹介してあげないんですかね。それじゃあいろいろ勘繰っちゃうじゃないの。
ちょっと話がそれてしまいましたが、とにかく音楽の話で熱くなると、なぜか誰かが置いてきぼりになってしまう印象があるのです。しかもどちらかというと、今から音楽をもっと知りたいと思っている人たちがそうなってしまっている。たしかに音楽というのは深い歴史やロマン、美学、そしてそれぞれの好みやこだわりというものが如実に存在する世界ですから、致し方ないとも思います。だけど、これは完全に個人の考え、私の性格上の問題ですが、だからと言って内々だけで盛り上がるのはあんまり美しくないというか、好きじゃないんですよね。無意識に間口を狭めてしまっているような、悪気なく排他的になってしまっているような、そんな気がして、もったいないなあと思うのです。
もちろん私にだって、憧れのミュージシャンはいるし、好きな盤もあるし、忘れられない歌声もあります。たとえばニール・ヤングのマッセイ・ホールでのライブでの「Down By the River」には何度聴いても泣かされるし、2008年のap bank fesでのASKAさんが歌うMr.Childrenさんの「名もなき詩」なんて、世が世ならその歌声だけで国を治められるんじゃないかと思うくらい、映像を見ただけでも鳥肌が立ちました。語れと言われたらいくらでも語れます。でも、独りよがりだったり押しつけがましい感じにはしたくない。なるべくわかりやすく、まだそれらの音楽を聴いたことのない人や、これから楽器や歌を始める人、なんなら子供でも理解できるように、まずはなんか面白そうだな、自分もその輪に飛び込んでみようかな、と思ってもらえるような伝え方をしていきたい。
そんなようなことを編集部の方々に伝えたところ、まさにこれからという方々により興味を持っていただけるような内容にできたらということで、「関取さんらしく書いていただいて大丈夫です」とのお言葉をいただきました。何たる光栄。本当にありがとうございます。
ということでこの連載では、ギミックの部分や専門的な話というより、もう少しゆるっとした視点から音楽と、そしてヴォーカル・マガジンなので特にうたと、向き合っていけたらと思います。そもそも「うたってなんだっけ」くらいの気持ちで。脱線多めの回も多々あるかもしれませんが、温かい目で見守っていただけたら嬉しいです。よろしくお願いいたします!
リリース情報
本コラムの執筆者
関取 花
関取 花(せきとり・はな)
1990年生まれ 神奈川県横浜市出身 愛嬌たっぷりの人柄と伸びやかな声、そして心に響く楽曲を武器に歌い続けるソロアーティスト。2019年ユニバーサルシグマよりメジャーデビュー。2023年9月6日、久々の新曲「メモリーちゃん」を配信リリース。2023年11月からは盟友、谷口 雄と二人で巡る「関取 花 2023 ツアー“関取二人三脚”」を東京、京都、名古屋にて開催。
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