【連載】「うたってなんだっけ」

関取 花

第16回『すきってなんだっけ』

2023.02.1

なんだかずいぶん寒くなってきましたね。暖房に加湿器に足元のヒーターにと、電気代にビクビクしながら毎日を過ごしている今日この頃です。私は毎年1月のスケジュールは割とゆったりしていることが多く、この時期は本を読んだり、散歩をしたり、映画を見たりしながら、のんびりしていることが多いです。

何年か前までは、余裕がある今のタイミングにできるだけいろんなことをインプットして、すぐに曲としてアウトプットしなければと、常に何かに追われているというか、焦っているような感じもありましたが、最近はそういうのも落ち着いてきました。ただ情報を入れ込むのではなく、そこから何を感じるか、自分の中に何を見つけるか、そういうことにもっとじっくり時間を割く方が、結果的にいい曲ができるんじゃないかと、そう思います。まあ要するに自分と向き合うってことですね。

予定が合う時には、友人にも会っています。いつもは公園でコーヒーでも飲みながら話すのが定番なのですが、何せ寒いし、かといってお店の中も暖をとりに来ているお客さんで結構混んでいたりするので、もっぱら私の家でダラダラしています。結局家が一番。

そんな中で、私たちは最近新しい遊びを覚えました。そう、お互いの好きな音楽を聴かせ合うのです。付き合いたてのカップルかよ! って感じですが、これがめちゃくちゃ楽しい。もうその子とは付き合いも長く、大抵のことはお互い話してきたつもりでしたが、意外とそういう話ってしてこなかったんですよね。もちろん好きなアーティストとかは知っていましたが、高校生の頃は何を聴いていたとか、はじめて見たライブは何だったかとか、そしてあの時のあのバンドは今どうしているのかとか、一緒に聴いたり調べたりしながらキャッキャと盛り上がるのは、はじめてのことでした。

私の家は、ダイニングテーブルのすぐ横にオーディオがあります。パッと音楽を聴くのに最適な配置です。その子とも、ひょんな話の流れからとある曲の話になり、私の知らない曲だったので聴いてみたいということになり、Bluetoothを繋いですぐに流しました。そこからはもう止まりませんでした。

何かのスイッチが入ったように、「この曲ってあれっぽいよね」「あとその時期はこれとかもよく聴いてた」といった感じで、何時間もずっと音楽を流しながらおしゃべりしていました。この仕事をするようになってから、集中して聴くということが良くも悪くも増えた私にとって、そうやって肩肘張らずに音楽を楽しむ時間というのは、なんだか懐かしく、とても愛しいものでした。

それからというもの、私はその子におすすめしてもらった曲ばかり聴いています。一度も聴いたことがなかったのに、今では気づけば口ずさんでいるくらいになりました。そしてその度に思うのです。こうやって曲が広がっていくのは、とても美しいなと。誰かの胸にたしかに根を張った音楽は、ひょんなことがきっかけで思い出したようにまた咲いて、綿毛を飛ばして誰かの元に届いて、再び歌われる日が来るのでしょう。私もそういう曲をたくさん作っていきたいです。何年後か、何十年後か、あるいは今日この地球のどこかで、誰かが「好き」を語る時、関取花の曲を思い浮かべてくれていたら、こんなに嬉しいことはありません。

本コラムの執筆者

関取 花

関取 花(せきとり・はな)
1990年生まれ 神奈川県横浜市出身 愛嬌たっぷりの人柄と伸びやかな声、そして心に響く楽曲を武器に歌い続けるソロアーティスト。2019年ユニバーサルシグマよりメジャーデビュー。2023年9月6日、久々の新曲「メモリーちゃん」を配信リリース。2023年11月からは盟友、谷口 雄と二人で巡る「関取 花 2023 ツアー“関取二人三脚”」を東京、京都、名古屋にて開催。

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