【連載】「うたってなんだっけ」

関取 花

第28回『やらないってなんだっけ

2024.02.1

随分と寒い日も増えてきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。私は元気です。昨年買った足元ヒーターと数年前に友人にもらったウールのブランケットに毎日お世話になりながら、最近は比較的のんびりとした日々を送ってしています。

1月は主に曲作りをしていました。今年はフルアルバムを出したいと思っているので、そのためのデモ作りです。年末までの時点で結構な数のデモは完成していたのですが、いまいち決め手に欠けるなあなんて思う部分もあったりして、うんうん唸りながら、本当に今歌いたいことは一体なんなんだろう? とか考えながら過ごしていました。

日常の中からサラッと曲ができるようには年々なってきていて、それは自分でもとてもいいことだなと思っています。日記のような感覚で曲ができるって、音楽と自分がいよいよ一体化してきたんだなという感じで、なんかいいじゃないですか。一日最低10分は曲作りに挑戦してみるという目標を昨年の終わり頃から掲げて、最近はよりそのスピードにも拍車がかかってきました。聴き返すと、その時々の自分が胸を躍らせたことなんかが見てとれて、なかなか面白いです。

そういう曲も大好きだし、これからもっともっと作っていきたいと思うのですが、本当の腹の内というか、自分には見えている曲の奥行きみたいなものって、案外伝わらないことが多いのも事実です。そういう曲ができるまでに一体どれほどの過程があって、どんな葛藤を抱え乗り越えてきたのかとか、そういうストーリーみたいなものって、自分の中では当然の如く理解できていて消化できていて、だから曲になるわけですが、意外と人に聴いてもらうとそこらへんって思っているより薄味で伝わってしまうことも多く、ここが難しいところです。

年齢を重ね、自分という人間にもっと深みと説得力が出てきたら、きっと自然に伝わるものだと思うのですが、今はキャリア的にも年齢的にも精神的にもいい意味でまだ青さがあるので、そこの絶妙なバランスでいつもちょっと悩みます。でも、歌詞で伝わらない部分をアレンジで補うことだってできるし、もしかしたらMVやアートワークで補うこともできるかもしれない。そういう風に誰かにちゃんと頼ってみるということを覚えてから、少しずつ柔軟になってきてはいます。

とはいえ私はソロシンガーで弾き語りスタイルがメインなので、どうしても結局はなるべく一人で、歌詞とメロディーだけで200%伝わるものを作らねばならないと考えてしまうことも多いのですが、そこばかりに頭が行って変に固執し過ぎるタームに入っちゃうと、曲の世界観が私的なものになり過ぎちゃったり、説明くさい曲になっちゃったりもするので、もうちょっと肩の力を抜いてもいいのかもなと思ったりもします。やりきらないのも時には大事ってことですね。前回のタイトルが「やるってなんだっけ」で、内容もそこそこ熱いものだったくせに何言ってんだって感じですが(笑)。まあそんなもんです。学ぶってそういうことです。

とにかく、そんなことを頭の片隅にちょこんと置いときながら、散歩に出かけてみるんです。そして、景色を見ながらぼんやりと鼻歌を歌ってみます。そうするとあら不思議、肩肘張っていないのに、たしかな、自分でもドキッとするような本音みたいなものが、突然溢れてきたりするんですよね。今まで頭を抱えていたものはなんだったんだと思うくらい、スーッと言葉が降りてきて、踊り出すんです。でも、ただ手放しで外に出てもきっとこういうことにはならなかったでしょう。頭でっかちになるほど考えて考えて、ああでもないこうでもないと闘った時間があったからこそ、そういう瞬間に出会えるのだと思います。 スケジュール的にのんびりしている今だからできる曲作りのやり方でもあるので、そういう時間を大切にしながら、アルバム作りに向けて他にも着々と準備を進めている今日この頃です。レコーディングが始まったら、またたくさんの発見があるんだろうなあ。

本コラムの執筆者

関取 花

関取 花(せきとり・はな)
1990年生まれ 神奈川県横浜市出身 愛嬌たっぷりの人柄と伸びやかな声、そして心に響く楽曲を武器に歌い続けるソロアーティスト。2019年ユニバーサルシグマよりメジャーデビュー。2023年9月6日、久々の新曲「メモリーちゃん」を配信リリース。2023年11月からは盟友、谷口 雄と二人で巡る「関取 花 2023 ツアー“関取二人三脚”」を東京、京都、名古屋にて開催。

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