【連載】スージー鈴木 きゅんメロの秘密

スージー鈴木

第3回:「きゅんメロ進行」を今度はギターで体感する

さて、いよいよ第3回。前回は、Jポップで多用される「きゅんメロ・コード進行」=「F-G-Em-Am」を鍵盤で体感しました。私が図示した鍵盤を順ぐりに押していくだけで、胸がきゅんとするあの進行が体感できたかと思います。できましたよね?

では今回はギターです。前回は、図で示した鍵盤を押さえるだけだったので、ぶっちゃけて言えば、誰でもが参加できたと思うのですが、ギターのコードを押さえるのは、正直ややハードルが高いかもですので、今回は、ちょっとでもギターを弾いたことのある人向けになります。すいません。

この連載で使う、コードの押さえ方図(コード・ダイアグラム)の私製フォーマットを作りました。一番上が1弦(細い弦)で、一番下が6弦(太い弦。でも×になっているので弾かない)です。よく見てくださいよ。弦の太さまで表現しています。気が利いていますね。

で、フレットは左から順番に1フレット、2フレット、3フレット。つまりヘッドに一番近いあたりを指しています。

工夫したのは、それぞれのフレットを押さえる指です。人差し指を●、中指■、薬指▲、小指◆と、指によって図形を変えています。ああ、ほんまに気が利いてるわぁ、これ。

ちなみに、この図で示しているのは「B7」というコードです。4本の指を使う、やや面倒なコードですが、慣れるとそんなに苦でもないコードでもあります。

「Fのコードが押さえられなくってギターを挫折した」という話をよく聞きます。一部の方はご存じのように、Fは人差し指で6本の弦の1フレットをベタッと押さえる、いわゆる「バレーコード」というやっかいなものなのです。白状すれば、私も未だに押さえられません

なので、前回同様「F-G-Em-Am」を弾こうということになると、難関の「F」が出てきて、多くの方がつまずくことが必至。なので今回はキーを変えて、押さえやすくします。

今回のギター版「きゅんメロ進行」は、キーをGにして「C-D-B7-Em」です。キーがCの「F-G-Em-Am」を、そのままキーGにググッとずらすと本当は「C-D-Bm-Em」なのですが、今回は「C-D-B7-Em」にします。なぜなら、こっちのほうが押さえやすくって、かつ、センチメンタル度=きゅん度が高まるのです。今回はそれを体感します。

さて、今日のテーマソングは、「日本きゅんメロ史上最高きゅん度」のこの曲です。はい、みなさん大好きなスピッツ『ロビンソン』(95年)。

弾きたい・歌いたいのはやっぱりここ。

── ♪【C】だれもさ【D】われない【B7】ふたりだ【Em】けの国

(「ロビンソン」スピッツ 作詞・作曲:草野正宗)

図をよくご覧ください。「① C」のところで赤い弦(1弦)と赤い中指(4弦の2フレット)があります。歌い出し「だれも」の「だ」を、女性の方は赤い弦の音程、男性の方は赤い中指から歌い始めてください(なお、①~④すべて6弦が×です。今回6弦は弾かなくていいのです。いや弾いてはいけません)。

体感できますか? 「日本きゅんメロ史上最高きゅん度」が(『ロビンソン』の原曲は、キーも違っていて、もうちょっと複雑なコードを使っているのですが、今回は簡略化します)。

さて先ほど、本来なら「C-D-Bm-Em」となるところを「C-D-B7-Em」にすると言いましたが、この違い、具体的には3つ目を「B7」にしたことによる響きの違いを体感してほしいのです。

前回の「F-G-Em-Am」と今回の「C-D-B7-Em」と聴き比べてください。今回のほうが、ちょっと湿っているというか、悲しげというか、センチメンタルで「きゅん度」が高いと感じませんか?

この連載、理屈はまだまだ先に取っておきますが、ちょっとだけ先出しすれば、B7というコードは最後のEmと結び付きが強いというか、仲がいい。Emというマイナーコードがもたらす哀しさにストレートにつながる、というか、もう片足突っ込んでいる。だから切なくて、だから「きゅん度」が高くなるのです。

おわかりいただけたでしょうか。かなり微妙な話になっていますが、これこそが音楽なのです。では次回から、具体的に「きゅんメロ進行」を使った名曲を、ひとつひとつ分析していきたいと思います。


きゅんメロガールによる、キュンメロ・プロジェクト第2弾!

ヴォーカル・マガジン・ウェブのTikTokチャンネル(https://www.tiktok.com/@vmw_jp)とYouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/channel/UCWwtnxl-swzokRkJuUSp1Yw/featured)にて、「きゅんメロ・プロジェクト」がスタートしました!

今回も本連載で取り上げている「きゅんメロ」を題材に「きゅんメロ・ガール」の動画をお届けします。
投稿しているのは3本。

●きゅんメロ楽曲の実演:連載の例題曲から「きゅんメロ」部分を弾き語り!

●キュンメロを作ってみた!:例題曲のコード進行で、きゅんメロガールにオリジナルのメロディ作りにトライしてもらっています!

きゅんメロのコード進行:上記のコード進行のカラオケを弾いてもらいます。それを聴いて、あなたのきゅんメロを作り「#きゅんメロ」を入れて、TikTokに投稿してください!

編集部とスージー鈴木さんで優秀者を選び、本連載で紹介していけたらと思っています!
どしどしご応募待っています


今回の「きゅんメロガール」

武藤光璃(むとうひかり)ちゃん

人の心を動かせる歌を歌える人になりたい/ミュージカルは見るのも演じるのも大好き /アニー2018/ペパー役/アニークリスマスコンサート/JK1/a-nation2019青森オープニングアクト/FAKY/ハモリ大好き(Twitterプロフィールより)

Twitter:@mariemon_g

本コラムの執筆者

スージー鈴木

1966年、大阪府東大阪市生まれ。ラジオDJ、音楽評論家、野球文化評論家、小説家。

<著書>
2021年
『EPICソニーとその時代』(集英社新書)
『平成Jポップと令和歌謡』(彩流社)
2020年
『恋するラジオ』(ブックマン社)
『ザ・カセットテープ・ミュージックの本 〜つい誰かにしゃべりたくなる80年代名曲のコードとかメロディの話〜』(マキタスポーツとの共著、リットーミュージック)
2019年
『チェッカーズの音楽とその時代』(ブックマン社)
『80年代音楽解体新書』(彩流社)
『いとしのベースボール・ミュージック 野球×音楽の素晴らしき世界』(リットーミュージック)
2018年
『イントロの法則 80’s 沢田研二から大滝詠一まで』(文藝春秋)
『カセットテープ少年時代 80年代歌謡曲解放区』(マキタスポーツ×スージー鈴木、KADOKAWA)
2017年
『サザンオールスターズ 1978-1985 新潮新書』(新潮社)
『1984年の歌謡曲 イースト新書』(イースト・プレス)
2015年
『1979年の歌謡曲 フィギュール彩』(彩流社)
2014年
『【F】を3本の弦で弾く ギター超カンタン奏法 シンプルなコードフォームから始めるスージーメソッド』(彩流社)

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