【連載】「うたってなんだっけ」

関取花

第44回：「ちかみちってなんだっけ」

2025.06.1

今年も弾き語りツアーが始まりました。「ひとりぼっちもわるくない」というタイトルのツアーです。5月7日に「わるくない」というアルバムを出しまして、引っ提げてのツアーになります。

アルバムについてはこのVocal Magazine Webでインタビューもしていただきました。そこでも話しているのですが、今回のアルバムは全体的に声を張りすぎない歌い方にしています。それは歌詞の内容的にあまり歌い上げすぎない方が自分のマインドにしっくりくるなと思ったからなのですが、そういう歌い方の作品を一枚作ってからまわるツアーは色々と発見があります。

まず、今回のアルバムのような割となだらかなトーンでの楽曲が増えたことで、セットリストの作り方が変わりました。今まではギュイーンと張り上げる声がどこかしらのパートに出てくる曲が多かったので、喉負担のバランスなども考えながらどうしてもセットリストを作らねばなりませんでしたが、全体的なバランスが良くなったことで自分の中で本当に歌いたい順番でセットリストを組めるようになった気がします（流れやストーリー性を重視できるようになったとでも言いましょうか）。

あとはその他の楽曲での高音パートも楽々出せるようになっている自分がいて驚いています。昨年までは-1キーで歌っていたものを今年からは通常通りに戻して歌っています。自分に対する怯えがなくなった感じがします。それは喉の調子云々というよりは正直に言うとメンタル的なところが絡んできていて、キーを上げると必然的に明るい雰囲気で曲が伝わるのですが、多分昨年まではまだ何曲か、自分のメンタル的に通常キーに戻して明るく歌うには表情などが追いついてこないというか、何か演技をしているような気がして、できていませんでした。

でも今回のツアーからは大丈夫そうです。なんだか何かから解き放たれたような気持ちで歌うことができています。不思議なものですね。

今回のツアーをまわる前に、あらためてこの「うたってなんだっけ」の連載を自分でも読み返してみました。たくさん葛藤しながら、ああでもこうでもないと言いながら、一つ一つを発見しては挑戦し、時に手放し、私なりに歌と真剣に向き合ってきたんだなと思えることができて、それも自信になりました。そして、「なんとなくできるようになった」と思っていたことが「なぜできるようになったのか」も、過去の文章を読むことで紐づいてわかってくる部分もあったりして、記録として残しておくというのはとても大事なことだなと思いました。

もしこれから歌を始めたい、ボイトレに行きたい、という方がいらっしゃったら、何らかの形で記録を残しておくのもいいかもしれません。技術的なところをメモしておくのもいいですが、微妙な自分の感情の揺れ動きみたいなこととか、「こう思ったんだけどどうなんだろう」という答えのない問いとか、そういうものもメモしておくとより良いんじゃないかなと思いました。15年間音楽をやってきて、めんどくさがり屋で自主的にはそういうことができずじまいだった私が言うのもなんですが（笑）。

結局、何より自分と向き合うというのが「自分の歌」を手に入れるためには必要不可欠で、遠回りに見えて長い目で見ると一番の近道なのかなと最近は思います。それでいうと、ライブ、特にツアー、しかも弾き語りツアーというのは私にとって一番それができるスタイルです。またこのツアーを通してもっとミュージシャンとして、人として、成長していきたいです。

リリース情報

ニューアルバム『わるくない』関取花
2025年５月７日（水）リリース

NKT-10001／2,500円（税込）
CD配信リンク：https://lnk.to/warukunai

＜収録曲＞
01. わるくない
02. VRぼく
03. いつかね
04. 空飛ぶリリー
05. 安心したい
06. 二十歳の君よ
07. 会いたくて

「VRぼく」関取花（アルバム先行配信曲）
2025年４月16日（水）リリース
先行シングル配信リンク：https://PCI.lnk.to/Vrboku

ライブ情報

弾き語りツアー「ひとりぼっちもわるくない」

５月24日（土）京都・京都someno kyoto
５月25日（日）愛知・名古屋TOKUZO
６月７日（土）香川・高松SUMUS café
６月８日（日）愛媛・松山MONK
６月14日（土）福島・福島フォーク酒場6575
６月15日（日）宮城・仙台カフェモーツァルトアトリエ
６月28日（土）石川・金沢もっきりや
７月５日（土）北海道・札幌musica hall café
７月19日（土）広島・広島Live Juke
７月20日（日）岡山・岡山城下公会堂 in KOTYAE
８月２日（土）兵庫・神戸グッゲンハイム邸
８月３日（日）大阪・大阪Soap opera classics
８月９日（土）福岡・福岡ROOMS
８月23日（土）東京・東京雷5656会館

【チケット一般販売中】
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プロフィール

関取花

1990年生まれ、神奈川県出身のシンガーソングライター。幼少期はドイツで過ごす。2017年にリリースした楽曲「もしも僕に」は、現在MV再生数850万回を超え、今なお伸び続けている。愛嬌たっぷりの人柄、独特の感性とおしゃべりからエッセイの執筆やラジオ、テレビ出演など活動は多岐に渡る。2025年、メジャーレーベルと事務所をはなれ、デビュー15周年という節目を迎え独立を発表。自主レーベル「NOKOTTA RECORDS」（ノコッタレコーズ）を設立。５月７日、最新アルバム『わるくない』リリース。ちなみに関取花は本名だが、先祖はお相撲さんではない。

本コラムの執筆者

関取花

関取花（せきとり・はな）
1990年生まれ神奈川県横浜市出身愛嬌たっぷりの人柄と伸びやかな声、そして心に響く楽曲を武器に歌い続けるソロアーティスト。2019年ユニバーサルシグマよりメジャーデビュー。2025年、デビュー15周年という節目を迎え自主レーベル「NOKOTTA RECORDS」（ノコッタレコーズ）を設立。2025年5月7日に最新アルバム『わるくない』をリリース。