【連載】「うたってなんだっけ」

関取 花

第49回:「本ってなんだっけ」

こちらの連載「うたってなんだっけ」の書籍化を前々回発表しましたが、今はまさにその制作期間真っ只中です。諸々の都合上ここからはかなりスピードを上げて進行していかなければならないということもあり、毎日本のことばかり考えております。しかし言わずもがな全然苦ではなくて、本当に楽しくて、やればやるほど絵が浮かんできて、こうしたい、あれもやってみたいというのが出てくるので、すごく幸せな時間です。

私は今回で本を出すのは人生で二回目です。一冊目は2020年に出した「どすこいな日々」というエッセイ本です。今回新たに作るにあたってあらためて読み返してみたのですが、いやあ、自分で言うのもあれですが……めちゃくちゃ面白かったです。いい本だなあと思いました。そして本気で愛情を込めて作ったあの日々を、あの時間を、思い出しました。

前作と今作は出版社さんも違うので、当然進行の仕方も変わります。何より内容が全然違います。ですから二回目とはいえ初めてのことの連続です。この感じ、何かに似ているなと思ったら、CDを作る時と同じだ! ということに気付きました。

ありがたいことにこれまで数え切れないくらい、というかパッと何枚と言えないくらいにはCDを出してきましたが、本当に何回やっても絶対に初めてのことっていうのが起こるんですよね。それはトラブルだったり発見だったり感動だったり色々ですが、とにかく何かしらある。ない時なんてない! と個人的な経験上は断言できるくらいには何かしらあります。いくら同じ人間が作った曲が毎回入っていると言っても、新しく作品を出すということはその中身は当然まったく違うものになります。

じゃあそんな中でもうっすらとずっと顔を出し続けてくれている統一感みたいなものって一体どこから生まれるんだろう? と自分でも不思議に思う時もあるのですが、今回本の制作を進めながら「どすこいな日々」も並行して読み返す中で分かったのは、「文章そのもの」がその役割を果たしてくれているということでした。

人の文章には皆テンポというのがあります。それは句読点の位置だったり改行の位置だったり漢字とひらがなの使い分け比率だったり色々ですが、とにかくそういうある種の手癖みたいなものが、その人独自のテンポ感を生み出しているんだなということに気付きました。

「どすこいな日々」はもう5年も前の作品になりますし、正直当時とは考えていることも言うことも変わっていると思います。それでも文章を読むと、「ああ、私の文章だ」という安心感がたしかにあるのは、やはりそのテンポ感の変わらなさゆえなのかなと思いました。

「どすこいな日々」はである調」で書いているのに対し、この連載では「ですます調」で書いているという大きな違いがあります。これは連載内容的にそうした方がより歌というものを難しく捉えずに入ってきてもらえるだろう、と思い連載当初に自分で勝手に決めてそうしました。「である」か「ですます」かによって文章から受ける印象というのは正直結構変わります。だから書籍化した時に読み比べたら違う人の書いた本みたいに仕上がるんじゃないか……という心配も最初はあったのですが、杞憂でした。

「である」だろうが「ですます」だろうが、どちらもまるで私が喋っているようなリズムで書かれていることには変わりありませんでした。これはごく個人的な感覚と感想にはなってしまうのですが、音読してみた時に違和感がありませんでした。ちゃんとどちらもしっかりと私の人格で恥ずかしくなく読むことができました。実はこれって結構重要なことだと思っていて、私は歌詞を書き上げた時も必ず音読するようにしています。口に出した瞬間に、「あ、こいつやってんなあ!」と思ったら、その時はアウトです(笑)。

要するに自分の呼吸できちんと文章を操れているかということですね。

……あれ、なんだかそんなようなことをこの連載でも前に書いたような気がするぞ。ああそうか、文章も歌なのかもしれない。この連載でずっと書いてきたことと、また一つ繋がったような気がしました。「うたってなんだっけ」の答えは案外いろんなところにあるのかもしれません。本の中にもあるかもしれないし、ないかもしれないし、はたまた……それは読んでからのお楽しみ。

そんな感じで鋭意製作中の書籍「うたってなんだっけ」。先日は本に向けての撮影や対談もしてきましたよ! 内容についてもSNSなどを通して少しずつ公開していくと思いますので、引き続きどうぞお楽しみに。


リリース情報

「わたしのねがい」関取 花

2025年10月1日(水)配信リリース
配信リンク:https://pcim.lnk.to/watashinonegai

わたしのねがい

ライブ情報

関取 花  バンドセットワンマンライブ 2025

日時:2025年12月27日(土)
時間:開場 16:00 /  開演 17:00
会場:大手町三井ホール
チケット:指定席 6,000円(税込)ドリンク代別
詳細:https://www.sekitorihana.com/live/2161

書籍情報

ノウハウ本ではないけれど、歌う人にも贈りたい本。
デビュー15周年の関取 花が「歌」について綴った『Vocal Magazine Web』の人気コラムが書籍化!


新刊書籍『うたってなんだっけ』関取 花

2025年12月19日(金)発売
定価:2,420円(本体2,200円+税10%)
仕様:四六判 / 256ページ予定
ISBN:9784845643592

商品詳細と予約はこちら
https://www.rittor-music.co.jp/product/detail/3125351004/

2010年にデビューし、2025年は15周年イヤーを送っているシンガーソングライターの関取 花による、自身2冊目の書籍。2021年より『Vocal Magazine Web』にて連載中のコラムをまとめたもので、『うたってなんだっけ』のタイトルが示すように、自身が考える「歌」についてシンガーとしての経験や活動を通した言葉が軽妙な語り口で綴られている。本書はいわゆる「歌のノウハウ本」ではないが、現在歌手や歌の活動をしている人や、これから歌を大事に生きていきたい人、歌そのものが好きな人にも届く内容となっている。

書籍化にあたって、新たに特別対談(対談相手は後日発表!)と、関取 花が自らの35年の人生を振り返る「セルフ年表」を収録予定。自らを描いた「どすこいちゃん」のイラストも描き下ろして書籍内に散りばめられるので、そちらもお楽しみに!

目次 (※内容には多少の変更がある場合がございます)
・うたってなんだっけ
・うまいってなんだっけ
・懐かしいってなんだっけ
・作るってなんだっけ
・いい感じってなんだっけ
・変わらないってなんだっけ
・大きいってなんだっけ
・声ってなんだっけ
・声ってなんだっけ part.2
・通るってなんだっけ
・変わるってなんだっけ
・わたしたちってなんだっけ
・歌いやすいってなんだっけ
・音楽ってなんだっけ
・いつものってなんだっけ
・好きってなんだっけ
・幸せってなんだっけ
・ダンスってなんだっけ
・強さってなんだっけ
・決まりってなんだっけ
・眠りってなんだっけ
・っぽいってなんだっけ
・テーマソングってなんだっけ
・思いっきりってなんだっけ
・痛いってなんだっけ
・ゆるいってなんだっけ
・やるってなんだっけ
・やらないってなんだっけ
・完璧ってなんだっけ
・同志ってなんだっけ
・喋るってなんだっけ
・歌いたくなるってなんだっけ
・コンプレックスってなんだっけ
・間(ま)ってなんだっけ
・舌ってなんだっけ
・ボーカルってなんだっけ
・カラオケってなんだっけ
・日用品ってなんだっけ
・今ってなんだっけ
・ちゃんとってなんだっけ
・うたってなんだっけ2025
・(特別編)それでもなぜ歌うのか
・ナチュラルってなんだっけ
・近道ってなんだっけ
・続けるってなんだっけ
・無自覚ってなんだっけ
・で、うたってなんだっけ

特別対談
対談相手は後日発表します。

特別付録
関取 花によるセルフ年表

本コラムの執筆者

関取 花

関取 花(せきとり・はな)
1990年生まれ 神奈川県横浜市出身 愛嬌たっぷりの人柄と伸びやかな声、そして心に響く楽曲を武器に歌い続けるソロアーティスト。2019年ユニバーサルシグマよりメジャーデビュー。2025年、デビュー15周年という節目を迎え自主レーベル「NOKOTTA RECORDS」(ノコッタレコーズ)を設立。2025年5月7日に最新アルバム『わるくない』をリリース。

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