【連載】「唄いろは」

鈴華ゆう子

第3回 「ピアニストからヴォーカリストへ転身した私が思う歌詞の強み~言ノ葉を唄う~」

詩吟をうまく取り入れ、熟語の流れを止めずに歌う

詩吟は、母音になってからコブシ(節調)を入れますが、そのときに一度作った口の形は、節調をフリ終えるまで変えずに保ちます。歌いやすいように口の形を変えてしまわないよう、注意するのです。
「あ」ならフリ終わるまで「あ」の口。
「え」ならフリ終わるまで「え」の口。
といったように。
また、熟語の流れを止めずに、子音を立てて熟語を読み切ってから節調、また読み切ってから節調。この流れがリズム良く美しくあるように練習をします。

このように、詩吟で行なっていることをうまくり取り入れ、子音を立てて発音し、熟語が流れよく聴き取れるように旋律を作曲し、歌うときも流れを止めないよう熟語の途中でブレスなどをしないように意識し、特に聴かせたい部分は口の形をしっかり保って歌うようにしました。

そして時には歌も器楽的であり、そこがプラスαとしてパワフルになると思っています。
歌詞の有無に関わらず、ノンフレットの楽器のように器楽的に表現できるのもヴォーカルの強みのひとつでもあると思います。その技法が幅広いほど、表現力に繋がると思っているので、私も日々勉強です。
苦手な歌唱法も常に検索して聴いて真似してを繰り返しています。情報がすぐに手に入る今の時代は素晴らしいですね!

子音を立たせ、母音を美しく処理して生まれるサウンド

ここで私の体験について少し話をさせてください。
アメリカでの初めての公演のとき、英語で歌うべきか悩んで、取材の記者に逆質問をしてみました。「私はやはりこの地では英語で歌うべきかな?」と。すると、こう返ってきたのです。

「絶対に日本語で歌うべきです。日本語のサウンドが美しい。日本語を聴きたい。日本語に合った歌い方が魅力的であり真似をしたくなる」

その答えが背中を押し、まずは母国語を貫くこととしました。そしてMCではゆっくりでもいいから英語で話したり、時々英語を混ぜて歌うというバランスがベストだという結論に至りました。

私たちが洋楽を、言語がわからなくても真似して歌って、意味を検索して楽しむように、その逆輸入もまたできるようになれたら素晴らしいなという思いがありました。そのためにはまず日本語をきちんと聴こえるように日本語の美しさを日本人として伝えたい、と思いました。

子音を立たせ、母音を美しく処理して生まれるサウンド。
抑揚と共に「言ノ葉を唄う」ということをやってみてはいかがでしょうか?

そして最後に。

ヴォーカリストはMCをすることも多いと思うのですが、MCもステージングにおいては歌詞と同等、大切に届けることを意識しています。箱の大きさによる余韻を感じながら話すスピードや子音の立たせ方をも考えるようになりました。
何を話すのかも、最低限整理しておき、それを話すのは何分くらいかと、ライブ全体の流れを良くするスパイスとしてMCの置き場所や内容も考えるようにするといいですね!

次回は、「音を把握して歌うことの重要性」について触れたいと思います。

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本コラムの執筆者

鈴華ゆう子

6月7日生まれ 茨城出身。3歳よりピアノ、5歳より詩吟と剣詩舞を学び、2011年12月、『日本コロムビア全国吟詠コンクール全国大会』優勝の経験もある、東京音楽大学ピアノ科卒業の音楽才女。

「伝統芸能を世界へ広げたい」という思いから和楽器バンドを結成。また一方で地元愛も強く持ち、いばらき大使・水戸大使を務める一面も。ロックに詩吟を融合させ、唯一無二の歌声で圧倒的な存在感を放つ、和楽器バンドの音楽を華やかに彩るスーパー・ヴォーカリスト。

現在、「和楽器バンド」のヴォーカル、和風ユニット「華風月」のヴォーカル&ピアノを担当。
ソロ活動としては、アニメの声優に挑戦するなど才能の幅を広げている。

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