【連載】「唄いろは」

鈴華ゆう子

第4回「音を把握して歌う事の重要性」

前回のコラムの中で、ピアニストを経て歌手になったことで、歌を器楽的に捉える側面がプラスに働いている点に触れましたが、それについて噛み砕いていきたいと思います。

その中のひとつが「聴音力」です。

音大を受験するにも、指揮科、作曲科、ピアノ科は聴音レベルが難しく設定されていることがスタンダードです。有難いことに、私は幼い頃からソルフェージュを学ぶ機会に恵まれたので、その点は歌手になった今も大きな強みのひとつとなっています。

自分が今、何の調・何の音を歌っているかを把握しているヴォーカリストは、バンド内でも、メンバーに“どうして歌いづらいか”、“ここの音程が取りにくいからこうしたい”、というコミュニケーションを取りやすいです。そしてなにより、ピッチ感がハッキリしていると、聴いている側もとても気持ちよくなりますよね。

“音を把握して歌う”という意識のススメ

「音を把握するということ」を意識することについてお話していきます。

私が講師をしていた頃、体験レッスンへ来た方の例でお伝えします。
その方は、歌の技術がとても素晴らしく、フェイクなども使いこなして歌うのに、なんとなくピッチ感が終始不安定でした。“こんなにうまいのに、とにかくもったいない!“というのが第一印象でした。

質問をしてみると、せっかくピアノが少し弾けるのに、自分が何の音を歌っているのかまったく気にしたことがなかったそうです。センスで歌いこなす、その才能は輝かしいものでした。

試しにその日のレッスンは、歌の実践よりもピアノの時間が多いくらいの割合で音程について丁寧に把握するように触れてみました。すると1時間足らずで見違えるほどピッチ感が良くなり、さらに魅力的な歌になりました。「地図がないままに走っていたような感覚が、方角と距離を把握してとても進みやすくなった」と仰っていました。

音を知らずに歌うことは、自分の位置を把握せず航海図がないまま大海原に飛び出すことと似ている気がします。馴染みのある近所であれば地図がなくても問題ありませんが、まったく知らない土地へ行ったときに地図の読み方を知らないと迷子になってしまいますね。

初級の方向けのオススメとしては、鍵盤ハーモニカやピアノアプリで十分なので、サビだけでも鍵盤で音を探して、音と音の幅を目で見て把握してみてください。ひと味もふた味もうまく歌えるようになるかもしれません。音の階段の数がわかっていれば、自信を持って着地できます。助走の勢いもフォームも変わりますね!

子供のリトミックでは、鍵盤シートの上をジャンプしながら歌う遊びをしたりします。体感で音程の幅を把握することは、とても有効的なんですね!

中上級の方は、フェイクなども取り入れて歌われると思いますが、フェイクもなんとなく感覚でするのではなく、何の音を歌っているのかしっかりと把握して、最初はピッチを点で当てていくことが大切だと思います。そこから点と点を滑らかな形にしていく練習をします。そのほうが上達もするでしょうし、ゆくゆくは自分らしいバリエーションも増えると思います。

いろんな方の格好良いフェイクは、何の音で歌われているのかを確認しながら模倣してみるのはとてもいいですね! 私もフェイクの練習を頑張っていますので、一緒に楽しんでみましょう!

リズムの把握も重要なポイント

リズムフェイク(原型のリズムを崩して歌うこと)においても、元のリズムがどうあって、今どのように崩したか、というのを理解しているか否かでは完成度が変わってきます。その辺の楽典は知識として備わっていくと、さらなるヴォーカル力に繋がると思います。簡単なリズム本もあるので、ぜひ手に取ってみてください! 自分が歌っている曲のリズムを把握して歌っているか否かは、ヴォーカリストにとって重要なポイントだと思います。

余談として詩吟には五線譜はありませんが、私の場合、詩吟を歌うときも、頭の中では音とリズムのある譜面として捉えて歌っています。物心ついた頃には自然とそのように詩吟もしていたようです。それが正解かと言えば、譜面では表現しきれないことがあるので、すべてがそうとは言えません。しかし詩吟の評価のポイントに、「音程」や「伴奏との調和」は必ず含まれますので有効なのです。

次回は、ライブに焦点を当ててお届けしたいと思います。

本コラムの執筆者

鈴華ゆう子

6月7日生まれ 茨城出身。3歳よりピアノ、5歳より詩吟と剣詩舞を学び、2011年12月、『日本コロムビア全国吟詠コンクール全国大会』優勝の経験もある、東京音楽大学ピアノ科卒業の音楽才女。

「伝統芸能を世界へ広げたい」という思いから和楽器バンドを結成。また一方で地元愛も強く持ち、いばらき大使・水戸大使を務める一面も。ロックに詩吟を融合させ、唯一無二の歌声で圧倒的な存在感を放つ、和楽器バンドの音楽を華やかに彩るスーパー・ヴォーカリスト。

現在、「和楽器バンド」のヴォーカル、和風ユニット「華風月」のヴォーカル&ピアノを担当。
ソロ活動としては、アニメの声優に挑戦するなど才能の幅を広げている。

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