【連載】「唄いろは」

鈴華ゆう子

第10回「ミュージックビデオ撮影の裏側」

和楽器バンドのニューアルバム『ボカロ三昧2』がリリースされました。

先日、こちらのインタビュー記事も掲載されましたのでぜひ合わせてお読み下さい!

さて、リリースに伴いYouTubeへミュージックビデオも投稿されたばかりですし、
ヴォーカリストであれば、必ずMV(ミュージックビデオ)の撮影を経験することになると思いますので、今回はMV撮影についてお話したいと思います。

企画からMV撮影当日までの流れ

これまでいろんなMVを撮影してきましたが、監督さんによって世界観がまったく異なる作品ができあがります。

作り上げていくまでの流れとしては、まず事前に監督に曲を聴いてもらって、いくつか撮り方の提案をいただきます。
その中から、こちらが思い描いていたイメージに近いものや、はたまた意表をつかれて面白いと感じたものにチャレンジするといった形で、どのような方向で撮影していくかをすり合わせていきます。

そして、メイクさんや衣装さんと自分が作りたい世界観について共有し、撮影に向けて準備をします。
作品の中で舞やダンスなどを取り入れたい場合は、撮影に向けて練習を始めます。
新曲ができあがってすぐに撮影となることが多いので、リップシンクをしっかり撮るために歌詞を頭の中にいれて、表情豊かに歌う準備もします。

イメージシーンがある場合には、どのようなカットでどんな画を取りたいかという監督から要望を念入りに聞きます。また、こちらからの提案やこのように撮って欲しいなどのリクエストがあれば、それお伝えをし、撮影していきます。
カットごとに撮影した映像のプレイバックをしながら進めていきます。

長いときには最長27時間くらいかかったこともありました。
その間、常にメイクさんや衣装さんはそばにいて、スタートがかかる寸前まで良い状態になるよう直しをし、寄り添ってくれます。
カットがかかるたびに、メイクさん、衣装さん、水を持ったマネージャーが駆け寄ってきてくれるのですが、その瞬間が私はとても好きです。みんな本当にありがとうと、感謝が溢れます。

私の中で、見せ場というのを必ず考えるようにしています。
それを監督には伝えて撮影し、できあがったときにどのように反映されるかを楽しみに待つのも醍醐味のひとつです。

過去のMV作品をご紹介

過去作品について少し触れてみたいと思います。

「Strong Fate」
この作品は、メイクを2パターンでいきたい旨を伝え、メイクが薄いパターンのほうでは、顔にお経のようなものを描き、おどろおどろしく撮って欲しいと伝えました。

「Strong Fate」MV


「砂漠の子守唄」
こちらは、手の舞を考え、呪文を唱えているように表現したかったので、そのようなイメージで撮って欲しいと伝えました。

「砂漠の子守唄」MV


「暁の糸」
和傘の舞をスケール大きく撮って欲しいという旨と、みんなにも歌って欲しいので、リップシンクでは、表情をアップめで撮って欲しいと伝えました。

「暁の糸」MV


「日輪」
こちらは今までにあまり入れてこなかった剣舞シーンを撮りたいと伝えました。

「日輪」MV

「フォニイ」
今回の見せ場は振付なので、振付がわかりやすく入ってくるように撮影をお願いしました。
バンドシーンでは、ボカロを生演奏してるというのが痺れるポイントなので、そこはしっかり映像に入れて欲しいと要望しました。

「フォニイ」MV

「シンクロニシティ」
特に気に入ってる過去作品は「シンクロニシティ」です。
こんな世界観を作るのはすごく好きです。
役者さんを入れて作品作りをするというのに初めて挑戦した作品です。役者さんと、バンドメンバーの立ち位置がとても分かりやすくバランスよく仕上がったと思い、やりたい事が実現でき、とても満足しています。

「シンクロニシティ」MV


「永世のクレイドル」
ソロのほうでも「永世のクレイドル」は、爆破シーンまであり、まるで映画を撮影しているような、とても貴重な経験をさせていただました。撮影時間がとても楽しかった日でした。

「永世のクレイドル」MV


「カンパニュラ」
逆再生で墨がとれていくシーンは、逆再生で歌うのを練習しましたね。

「カンパニュラ」MV

これまで数多くの撮影をしてきましたが、やはり作品の中での目玉というのは意識して作るほうがいいかもしれないと思っています。
その曲の世界観をさらに広げていくものになるので、女優のような感覚にもなりますね。

ぜひ、自分の作品を映像に残し、より曲の世界観を広げたものをファンの方にお届けしてみてください!

本コラムの執筆者

鈴華ゆう子

6月7日生まれ 茨城出身。3歳よりピアノ、5歳より詩吟と剣詩舞を学び、2011年12月、『日本コロムビア全国吟詠コンクール全国大会』優勝の経験もある、東京音楽大学ピアノ科卒業の音楽才女。

「伝統芸能を世界へ広げたい」という思いから和楽器バンドを結成。また一方で地元愛も強く持ち、いばらき大使・水戸大使を務める一面も。ロックに詩吟を融合させ、唯一無二の歌声で圧倒的な存在感を放つ、和楽器バンドの音楽を華やかに彩るスーパー・ヴォーカリスト。

現在、「和楽器バンド」のヴォーカル、和風ユニット「華風月」のヴォーカル&ピアノを担当。
ソロ活動としては、アニメの声優に挑戦するなど才能の幅を広げている。

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