【連載】「唄いろは」

鈴華ゆう子

第14回「私、曲はこうやって作ってます。〜思うがままに口ずさんで作曲〜」

曲はどのように作っていますか?と質問されることが多くあります。
やはりヴォーカリストは自身の詩、自身のメロディで歌いたいと誰しもが思うことでしょう。
今回は、私が曲を作るときのことを綴ってみたいと思います。

「ゆうこオリジナルソング」を口ずさんでいた

初めて曲を作ったのはいつなのだろう?
そんなことを考えました。

私は言葉を自由に発するようになった3歳くらいの頃から、よく聴いたことのない「ゆうこオリジナルソング」を口ずさんでいたようです。
その様子がホームビデオにもたくさん残っています。
そのとき感じていること、思っていることを、そのまま適当な旋律に乗せて口ずさんでいるだけなので、一度きりしか歌うことのできないとても刹那な作品の誕生です(笑)。

しかしながら私は、作詞作曲ってこの感覚がとても大切だと今も思っています。

今、曲を作るときはもちろん「作るぞ」とピアノとPCがあるデスクに向かうのですが、そのときに資料として開ける引き出しというのは、
曲のパーツが詰まっているスマホのボイスメモとメモ帳、それから音符を殴り書きで残したミニ五線譜です。

日常の中でふと思い浮かんだメロディは、ボイスメモに記録しています。
一つ一つがたった数秒程度のものです。
声が出せないタイミングのときは、持ち歩いているミニ五線譜やiPadに音符で書き残します。
ふと思い浮かんだ詞や、記憶しておきたい言葉などはスマホのメモに残しています。

それらのパーツを、「よし曲を作るぞ」というときに掘り返して聴き直したり、読み返したりします。

曲を作曲時の思い出とともにご紹介

その中から曲になり、この世に誕生した曲がいくつもあります。
少しご紹介させていただきます。

「IZANA」

京都旅行をしているとき、ふと思い浮かんだ旋律。観光客も多い中、電話しているふりをしながらスマホにその旋律をこっそり歌で残しました。
それは曲の冒頭部分でしたね。

「宛名のない手紙」

静かな人気のない公園で芝生の上に寝転がっているときに感じた、匂い、音などの感じたものが詞となりポロポロと溢れ出てきたので、スマホのメモ帳に残しました。
曲の冒頭の歌詞になりました。

▫️和楽器バンド▫️

「鳥のように」

朝目覚めた瞬間、見ていた夢が鮮明なうちに情景をスマホのメモに書き残しました。
大海原を鳥になって飛んでいる夢でした。

「雨のち感情論」

お風呂に入っているときに思い浮かんだ旋律。スマホにそのサビ部分をラララで歌った音声が今も残っています。

「華火」

今このバンドに書くならこんな曲がいい!と急に思いついたサビの旋律をピアノと弾き語りでスマホに録音しました。

「雪影ぼうし」

歌と三味線の掛け合いのイメージが思い浮かんで、Aメロをラララで三味線部分まで歌ったパーツがスマホに残っています。

▫️華風月▫️

「花鳥風月」

紫陽花が咲き誇る井の頭線の先頭車両に乗っているときに旋律が思い浮かび、急いで五線譜に書き残しました。

「月食」

実際に月食の夜でした。私にとってとても悲しいことがあった日でしたが空を見上げながらこぼれ落ちてくる旋律をスマホに録音していました。

▫️鈴華ゆう子ソロ▫️

「うたいびと」

コロナ禍で自粛中、川辺を散歩しながら生まれた曲。この曲はしばらく川辺にいるだけであっという間にフルコーラスアカペラでできあがった曲です。帰宅してピアノと合わせて、早く皆さんに届けたいと強く思った気持ちが今も鮮明です。

自分の詩で歌うヴォーカリストは説得力が増す

他にもこのように、パーツの一部から生まれた瞬間を記憶している曲は多々あるのですが、ふとした瞬間に思い浮かんだ詩や旋律の中には、時間を置いて改めて新鮮な気持ちで自身で確認したとき、自分でも想像していないくらいパワーを持ったものが存在していたりします。

自分の旋律で、自分の詩で歌うヴォーカリストは説得力が増します。
それが誰かたった1人でもいいから、ほんの僅かでも前向きになれるきっかけになり得るのだとしてたら、これほどヴォーカリストとしての生き甲斐はありません。
自身の感性にアンテナを張り、常にキャッチし、作品として世の中に発信することやってみてはいかがでしょうか?

それは必ず自分のためにもなる大きな素材、資料となります。
私も自身から生まれる材料と、これまでに培った音楽の知識を織り交ぜてできあがった曲を、これからもアップデートしながらこの世に残していきたいと思います。

本コラムの執筆者

鈴華ゆう子

6月7日生まれ 茨城出身。3歳よりピアノ、5歳より詩吟と剣詩舞を学び、2011年12月、『日本コロムビア全国吟詠コンクール全国大会』優勝の経験もある、東京音楽大学ピアノ科卒業の音楽才女。

「伝統芸能を世界へ広げたい」という思いから和楽器バンドを結成。また一方で地元愛も強く持ち、いばらき大使・水戸大使を務める一面も。ロックに詩吟を融合させ、唯一無二の歌声で圧倒的な存在感を放つ、和楽器バンドの音楽を華やかに彩るスーパー・ヴォーカリスト。

現在、「和楽器バンド」のヴォーカル、和風ユニット「華風月」のヴォーカル&ピアノを担当。
ソロ活動としては、アニメの声優に挑戦するなど才能の幅を広げている。

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