【連載】「唄いろは」

鈴華ゆう子

第7回「目線でいざない、指先まで唄う」

今回はステージングのお話でもしてみようかと思います。
ヴォーカリストにとって、“歌っている姿”というのは世界観を作りあげるうえでとても重要だと思っています。
私も、自身のスタイルについては一番試行錯誤したポイントかもしれません。
デビュー前はいろんな方のステージパフォーマンスのライブ映像を観たりしました。

自分らしいパフォーマンスの追求

私が得意な所作は何かと考えたとき、私の場合、やはりそれは「和」でした。
幼い頃からやってきた剣詩舞のおかげで、その所作を取り入れつつもロックにパフォーマンスするというスタイルに辿り着きました。
ロックバンドの中に見え隠れする、「日本独特の品のある所作」という、掛け合わせのギャップですね。

和楽器バンドを組む前まで、ロックに観客を煽る、という行為に無縁でしたので、最初は自身が煽る姿を想像するだけで照れくささもあり、しかし照れているうちはお客様にもカッコよくは映らないだろうと思い、鏡を見ながらどのような立ち姿が最も自分らしくあり、先々無理のないパフォーマンスとなるかを考えました。

立ち姿、マイクの持ち方、自身にマッチする衣装の方向性、それから和楽器バンドにおいては得意の舞扇子を捌きながらするパフォーマンスなど……。
また、舞扇子を持たないときは、指先までも美しく見せるよう舞踊の要素を織り交ぜました。
そこで初めて、剣詩舞は自分の強みであると気づき、やっていて本当に良かったと感じたことをよく覚えています。

“私にはこれだ!”というスタイルが見つかると、そこから仕上がりまではとても早かったように思います。
和楽器バンドにおいては、ヴォーカリストとして歌のみに留まらず、剣舞や和傘でのパフォーマンスなども取り入れ、ロックバンドのライブというよりは老若男女が1曲も知らなくてもエンターテインメントとして楽しめる唯一無二のスタイルを目指しました。

ところで、剣詩舞で教わることとして、
「目で表現する」というものがあります。
私の流派の宗家は、
「審査の際にまず目を見る。」と言っていたのが幼い頃から印象的でした。
その人の目の先に何が映っているのか、見ている人の想像を掻き立てるように、視線だけでも表現できるよう意識しています。

本コラムの執筆者

鈴華ゆう子

6月7日生まれ 茨城出身。3歳よりピアノ、5歳より詩吟と剣詩舞を学び、2011年12月、『日本コロムビア全国吟詠コンクール全国大会』優勝の経験もある、東京音楽大学ピアノ科卒業の音楽才女。

「伝統芸能を世界へ広げたい」という思いから和楽器バンドを結成。また一方で地元愛も強く持ち、いばらき大使・水戸大使を務める一面も。ロックに詩吟を融合させ、唯一無二の歌声で圧倒的な存在感を放つ、和楽器バンドの音楽を華やかに彩るスーパー・ヴォーカリスト。

現在、「和楽器バンド」のヴォーカル、和風ユニット「華風月」のヴォーカル&ピアノを担当。
ソロ活動としては、アニメの声優に挑戦するなど才能の幅を広げている。

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